はじめに:
最近、建築業界でも
「高断熱・高気密の家は健康にいい」
「睡眠が良くなる」
という言葉を耳にすることが増えてきました。
設計の現場に立ち、自分自身の身体データも観察している立場から見ると、
この言葉は半分は正しく、半分は少し足りないと感じています。
数値としての「性能」の裏側には、
もっと静かで、切実な身体の仕組みがあるからです。
この記事では、
睡眠科学・設計実務・8weeks.aiでの観察
この3つの視点から、その関係を整理してみたいと思います。
1. 睡眠を左右する「6つの環境因子」と身体の反応
家の性能以前に、身体は環境に反応している
医学的に見て、深い眠りを支えるためには、
家の性能以前に、次の6つの要素が整っている必要があります。
- 温度(深部体温の下降)
眠りにつく際、脳や内臓の温度がゆっくり下がることが重要です。
室温の乱高下は、この自然な下降を妨げ、眠りを浅くします。 - 湿度(40〜60%)
乾燥は粘膜を刺激して中途覚醒を招き、
過湿は体温調整を難しくします。 - 光(メラトニンの制御)
特に夜の強い白色光は、睡眠ホルモンの分泌を抑えてしまいます。 - 音(交感神経への刺激)
目が覚めるほどでなくても、
小さな音が「無意識の緊張」を生むことがあります。 - 空気質(CO₂濃度)
寝室のCO₂濃度が高くなると、
翌朝のだるさとして体感されやすいと言われています。 - 電磁波(EMF)
EMF(電磁波)の感受性は個人差がありますが、
敏感な人は寝つきやHRVに影響が出ることがあります。
2. 「家」という器ができること
高性能住宅は、環境を“安定させるための器”
建築の視点で言えば、
高性能住宅とは、これら6つの因子を
安定してコントロールするための「器」です。
高断熱・高気密であれば、
夜間の温度変化を1〜2℃以内に抑えやすくなり、
自律神経が休まりやすい「温度の静けさ」が生まれます。
また、気密が確保されていれば、
計画換気が意図通りに機能し、
寝室のCO₂濃度を抑えたり、外部の騒音を軽減することも可能になります。
3. 家だけでは、睡眠は完成しない
睡眠は「器 × 身体 × 習慣」の掛け算
ここが最も大切な点です。
たとえ高性能な家に住んでいても、
暮らし方が乱れていれば、睡眠は簡単に崩れます。
- 寝る直前までスマホを見る
- アルコールやカフェインの摂取タイミング
- 日中の活動量が極端に少ない
睡眠は、
家(器) × 身体(状態) × 生活(習慣)
この掛け算で成り立っています。
家はあくまで、
「眠りやすい土俵」を整える存在なのだと思います。
4. 私自身の「静かな気づき」
身体の内側と外側をつなげる視点
私は最近、8weeks.aiを使い、
血液データ(栄養・代謝)と、
日々のヘルスケアデータ(睡眠・心拍変動・歩数)を突き合わせて観察しています。
そこで見えてきたのは、次のようなことでした。
- 身体の状態が可視化されると、住まいの役割がはっきり見える
- 回復が必要なときほど、温度や空気の安定が効いてくる
- 内側(栄養)と外側(環境)が揃って、はじめて睡眠が深まる
これまで私は、UA値という数値を追ってきました。
今はそこに、
「この性能が、住む人の細胞のリズムをどう支えるか」
という視点が重なっています。
8weeks.aiでの観察は、
設計士としての専門性と、
一人の人間としての身体感覚をつなぐ“鏡”のような存在になっています。
