旧いものを未来につなぐ改修設計 — 丁寧な設計でさらに永く住み続ける
築40年超の住宅を、快適で持続可能な住まいへ
古いものを大切にしながら、新しい価値を加え、未来へと住まいをつなぐことを目指しました。歴史ある住まいに、現代の快適性と耐久性を融合させています。
設計のポイント
1. 既存の部材を活かし、住まいの記憶を継承
「あるべきものがあるべき場所に自然に収まる」設計を重視しました。
可能な限り、既存の木材や建具を再利用し、住まいの歴史を未来へつなげています。
2. 新旧の調和を大切にした素材選び
新たに使用する素材は、時間が経つごとに風合いが増し、
古い部材と調和するものを選びました。
3. 耐震・断熱性能の向上で快適性をアップ
外観の風合いはそのままに、構造の補強と高断熱化を実施し、
より長く、快適に住み続けられる家に生まれ変わりました。
この改修の詳細は、ブログで詳しく解説しています
現在は、さらに進化した設計技術を活用し、
高断熱・高気密なパッシブハウスレベルの設計にも取り組んでいます。
今だからこそ分かる「断熱の課題」と今後の可能性
この建物は、2017年当時の断熱基準を考慮し、可能な限り高い断熱性能を確保しました。
Q値 2.56W/m²K、Ua値 0.57W/m²K という性能は、当時としては十分な水準でしたが、近年の省エネ住宅基準と比較すると、さらなる向上の余地がある結果となっています。
より快適にするための改善策を考えてみました。
現在の技術を活用して、窓の性能向上、断熱構成の工夫により、さらにエネルギー効率を向上させることが可能です。
もし、さらに高い性能を実現したい場合は、外壁への付加断熱、屋根への吹込み断熱 などの方法が考えられます。
当時は考慮されていなかった 「気候変動」や「長期的な快適性」 の視点も取り入れるようになっています。
改修後の実測やヒアリングを行いながら今後の設計改善にも活かしています。
断熱・性能データ(2017年設計時の基準)
この建物は2017年当時の高断熱仕様を採用し、可能な限り快適な住環境を実現しました。
しかし、近年の省エネ基準と比較すると、さらなる断熱強化の余地があります。
当時より重ねた知識・技術を用いた改修により、より快適な室内環境を実現することも可能です。
断熱性能(当時の設計仕様)
- 屋根:フェノバボード 60mm
- 2017年当時としては高性能な断熱材を採用
- しかし、現在の高断熱住宅と比較すると厚みが不足
- 屋根面の熱損失を防ぐためには、追加の断熱施工が有効
- 外壁:アクリアネクスト 105mm
- 一般的な住宅の断熱仕様としては標準的な厚み
- 外壁の熱貫流を抑えるため、追加の外張り断熱も選択肢
- 床:アクリアUボード 80mm
- 当時の基準では、冬の底冷え対策として十分な仕様
- しかし、床下の断熱強化により、さらなる快適性向上が可能
- 窓:樹脂窓(APW330)
- 断熱性能の高い樹脂サッシを採用
- ただし、現在ではトリプルガラス仕様の窓(APW430等)が一般的になり、より高い断熱性が求められる傾向
- 玄関ドア:MIYAMA桧玄関引戸:ユダ木工(U値=1.94W/㎡K)
- 木製の引戸としては断熱気密性能を考慮した仕様
設備・換気システム
- 暖房・冷房:エアコン
- 設計時はエアコンをメインの空調設備として採用
- 換気:第3種換気
- 省エネを考慮し、第3種換気システムを採用
- 高断熱高気密住宅では熱交換換気(第1種換気)採用することで消費エネルギー削減可能です
性能データ
この建物のエネルギー性能は、当時は標準性能でしたが、新しい性能規住と比較すると改善の余地があります。この事例を活かして改善がはじまりました。
- 1次エネルギー消費量(年間):177.08 kWh/m²
- エネルギー消費量を抑えた設計だが、さらなる削減が可能
- 熱損失係数(Q値):2.56 W/m²K
- 断熱性能を示す指標で、当時の住宅では良好な数値
- ただし、現在の高断熱住宅では Q値1.0以下 を目指すことが多い
- 外皮平均熱貫流率(Ua値):0.57 W/m²K
- 一般的な省エネ住宅の基準を満たしている
- 近年の高断熱住宅では Ua値0.3以下 を目標とする場合も多い
- 相当隙間面積(C値:2.5 cm²/m²)
- 施工時の気密測定で確認された数値
- 気密性能をさらに向上させることで、省エネ性能が向上 する可能性あり
所在地:千葉県山武市
構造 :木造在来工法 2階建
延床面積: 100.19m2(30.25坪)
撮影:花澤一欽
竣工 :2017年
施工:(株)進和建築


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