日当たりをシミュレーションする 建物編

今日は4月16日。緊急事態宣言が出てから約1週間がたちました。外出を少なくして他人との接触を80パーセントまで減らして爆発的な拡大を防ぐとの事。これが達成できれば爆発的な感染を避けることができるそうです。

業務打合せにはZOOMを主に使っていますが、お客様との打合せが目下の課題。PCを持っていないお客様とどのように打合せするのか多くて思案中です。

※緊急事態宣言が全国に広がりそうなニュースが入ってきましたね。。。

建物への日当たりをシミュレーションする

日当たりをシミュレーションするの続きになります。

前回はおもに敷地に対してのシミュレーション、建物を配置してみたら思いがけない無い方向から日影が飛んでくることが解ったというお話でした。

くりかえしますが、パッシブ設計のポイントの一つに日当たり条件があります。

大草原の中にポツンと建つような、隣地に何もなくて建物を南側に正対する配置ができれば日射については大きな問題は少ないと思います。ですがそういった条件の敷地はほとんどありません。

ですから敷地の日当たり条件を検討した後、建物形状や窓の配置を決める丁寧な設計が必要になってきます。

前回と同じようにシミュレーションをご紹介していきますね。

12:00の日当たり状況です。

建物の半分以上が北側建物からの日影の影響を受けています。

この後14:00には全体的に日射を受けることができますが15:00には別の日影の影響をうけます。

 

太陽から取得した日射熱を表すとこんな状態です。

1階の窓からはほとんど日射熱を得ることがほとんどできない事が解ります。

ですが屋根面からは日射熱を得ることがわかるでしょうか?

 

そこで一つの解決方法、屋根面に窓を付けて日射を受けることを考えます。

図のような窓を付けてみます。ハイサイドライトを呼ばれている窓です。

北側建物からの日影の影響も受けていないようです!

 

日射熱の取得状況です。

ハイサイドライトに日射を受けることができて日射熱も得ることができそうです。

どうにか解決できそうです。

 

建物内の温度分布状況はこのようになります。

左図がハイサイドライト設置。右図は特に対策していない状況です。

日射熱はハイサイドライト設置7,200wh。対策なしだと 4,600wh。約1.5倍になります。

 

室内の温度はこんな状況です。

ハイサイドライトからの日射熱で14:00に3℃ほどの温度差が出てきます。

最高室温が日射熱最大の12:00から2時間遅れの14:00になることも興味深いです。

 

一例ですがこのようにしてシミュレーションを重ねて設計を進めていきます。

今回のような敷地状況では厳しいかと思いますが、パッシブハウスもこのようなシミュレーションの延長にあります。

どうせシミュレーションでしょ?という声も聴きます。たかがシミュレーションなのですが、事前に検討するとしないでは大きな違いがあると思います。

 

パッシブ設計は「自然の力」を理解し活かした家づくりです。

これからも「自然の力」を取り込める、ていねいな設計をこころがげて生きたいと考えています。

 

相談、お問い合わせはお気軽にどうぞ。

オンラインでの打合せも可能です。

メールはこちらです。

 

 

 

 

 

 

暮らしをアップデートする設計

住宅や建築の設計をして常々感じることは、究極の一品製作品だということ。

家電製品や自動車は各メーカーさんが巨額の開発費を投入して開発する工業製品。

一方、住宅は一品製作のオーダーメイドです。

土地の形状が同じでも、敷地の場所が変わると全く違います。同じものはほとんどないと言ってもよいです。

暮らしをアップデートする

少し言い訳のようですが、建物が完成し暮らし始めてから手を入れるところが出てきてしまいます。

そういったところに手を入れて自分達の暮らしに近づけていくことを楽しんでもらえたらと考えています。

住宅や建築建物は完成した時はまだ完成途中、手を入れることで完成に近づいていくものかなと。

とくに住宅は家族の成長に合わせて変化させたり、家族の好みに合わせながら手を入れることが大切だと思います。

住まいに手を入れることで、暮らしをアップデートする感覚です。

とは言え、全くの未完製品をお渡ししているわけではありません。

設計前段階では、ヒアリング等でご要望等は詳しくお聞きし、設計に反映しています。残念ながら予算等の関係で全てが叶うわけではありませんが。。。

設計時には温熱シミュレーションは必ず行い、建物性能面では満足するようにしております。

建物性能を左右したり、後から手を加えることが難しい箇所 例えば、構造の耐震等級、壁の内側になる断熱材等、についてはしっりとした設計をしてお金をかける。

ですが、後から交換できる内装部分については、変化していく家族構成、趣味趣向にあわせて手を入れるような設計が好ましいと考えています。

アップデートが難しい部分はしっかりとした設計を心がけています

建物性能を満足するために、現在、シミュレーションソフトを活用した新しい設計方法を試行錯誤しております。簡単に説明したいと思います。

一番最初にすることは日陰のチェック

まずは周辺環境が敷地にどんな影響を与えるかチェックします。特に敷地に接する建物から発生する日陰などの影響をシミュレーションします。使用するソフトは主にホームズ君を使います。

南側の建物はもちろんですが東側、西側の建物からも大きな影響を受けることがあります。シミュレーション前、私も頭の中である程度の予想をしています。

”この方向に空きがあるからこちらから日射を取り込めるな”などと予想するのですが、その予想を見事に裏切られる事もあります。

ですからシミュレーションソフトの計算無しでは、正確な設計はできないと考えています。シミュレーション結果を参考にして建物の配置や窓の位置を決める参考にします。

パッシブ設計の基本は効率よく太陽からの日射を取り込んだり、遮蔽することが基本になります。ですから日影の影響を検討しながら設計することが大切になります。

次にホームズ君と新住協さんのQPexを使いながら建物の性能を決定する屋根・外壁・床、開口部などの外皮性能を設計です。

QPexは各部の断熱材の種類、厚さ、開口部の仕様を入力すると比較的簡単にUa値、暖冷房エネルギーを計算できるので、とても優れた計算プログラムです。

※細かい点ですがQPexはエクセルベースの暖冷房エネルギー計算プログラムなので正確にはシミュレーションソフトとは違います。

その後にホームズ君を使って室温シミュレーションを行います。

※ホームズ君は使い始めて間も無いので入力に手間取ることが多いのですが丁寧なサポートがあるので助かっています。やはり日本語で手軽にサポートしてくれるのは安心です。

ホームズ君とQpexを行ったり来たりを繰り返し、グルグルしながら仕様を決めていくようにしています。

パッシブハウスのジャパンの会員ですから、建物燃費ナビで計算もしています。

このように温熱環境についてはきちんとシミュレーションすることが大切です。正しい施工方法を知っていることもちろんです。

 

BIS認定試験に合格

BIS認定試験に合格しました。

何歳になっても試験は緊張するし、合格すると嬉しいものです。ちなみにBISは北海道でうまれた、断熱気密や暖房・換気に関する技術者です。寒冷地に特化したした資格です。温暖な千葉では氷点下になることはほとんどありませんが、断熱気密などの理屈は同じはず。

千葉では少し間違っていてもどうにかなる?けど、北海道の気候では命取りになる厳しさがあり、しっかりとした技術、基本を知ることは必要と考えた次第です。いや、間違った知識では温かい家にはなりません。UA値は必要ですがそれだけでは温かい家にはならないのです。

この試験を受けなかったら、暖房度日数、暖房設備容量、灯油消費量を手計算するなんて事は無かったでしょう。普段使っているシミュレーションソフトの理屈をほんの少しでも理解できたので良かったと思ってます。

テキストとして使われた “北の住まいの熱環境計画 2015年” もとてもよくまとまっていて、温熱の勉強を始めてからつぎはぎ状態の知識も整理できました。あちらこちらから聞いた知識がこの一冊に!です。以前の現場で悩んだ事についてもまとまっていて、あの時この一冊があれば。。。と思う点もあります。

BIS認定 あらためて北海道で知りたいこと

無事テストは合格しましたが、始まりの第一歩。どうやって実務で生かして生きましょうか。北海道の実務者の皆さんが、寒冷地での技術をオープンにしてくれたように広めていかないとね。技術はオープンソースでひろまる時代ですから。

特にパッシブ換気については是非取り入れたい技術。建物内の上下の自然温度差によって生じる換気動力が主動力になるので、動力が不必要なのは魅力的です。

以下は個人的の目標。テストでまだまだ理解できていないことも見つかり、まだまだ勉強することがたくさん。

BISの本拠地、北海道での極限の状況を体感したいと思っています。やはりテストの合格だけでなく実地での体感が大切。

岐阜の森こうすけさんが開催されている北海道断熱修行の旅 来年は参加したいと考えてます。

 

先人に学ぶ 断熱&耐震改修 寺子屋勉強会 in町田

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建物の断熱性能で弱点になりがちなのは窓。

アルミと樹脂の複合サッシでも十分だという声も聞こえますが、やはりそれより上の性能があるサッシを取り入れたいですね。

海外製サッシについては高性能だと知っていましたが、採用したことはもちろん、取付け施工も見たことがありませんでした。

ですから高本さんが主催する断熱&耐震改修寺子屋勉強会in町田に参加して勉強してきました。

今回勉強会で使用したのはロシア・サハリン州の窓枠メーカー「カールヴィ」です。

 

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参加してわかったことは、海外製サッシを施工するには一工夫、一手間が必要になるけれど、特殊な材料を使うことなく取付が可能なこと。

そのためには施工技術を正しく理解することが必要となるのですが、その技術が北海道にあるのです。

 

北海道では断熱気密工事についてBISという資格があり、知識が整理され、その全てが公開されていて誰でも自由に使うことができるのです。

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高本さんはBIS資格を取得していて、汎用性のある施工計画していました。今回の取付けに使用した資材はタイベック、気密シート、気密テープ、発泡ウレタンで特殊な資材を使用しませんでした。

 

施工については特殊な作業はありませんが丁寧な作業が必要になります。

ですが手練れてくるとスピードも上がりそうです。

 

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「カールヴィ」についてですが、フレーム下地にスチール材を利用してあるので耐久性があり、またバールでも壊れないほどの防犯性能があるそうです。

また輸送コスト分を工夫することができれば、コスト面でも国産サッシと勝負することができるそう。

 

断熱気密の技術をオープンにしている北海道。

その技術を正しく理解すれば、国産、海外を問わず臨機応変な断熱気密工事、施工計画が可能となるはず。

必要なことは正しい知識です。

先人の北海道で集められた知識が選択で迷ったときの「行き詰ったら原点に帰れ!」の原点となりそうです。