はじめに:
性能の話から少し離れたところに、ほんとうの暮らしの改善がある
高断熱・高気密、パッシブデザイン、電磁波対策……
設計の世界では「住まいの性能」を語る場面が増えてきました。
一方で、この数年で気づいたことがあります。
性能がどれだけ整っていても、
住む人の「身体」や「生活リズム」が整っていなければ
本当の快適さは生まれない。
そしてその逆もまた然りで、
身体が乱れると、性能の整った家でも快適とは感じられない。
私は最近、睡眠・自律神経・生活のログを取りつつ、
自分自身の暮らしを「設計する」ように見つめ直しています。
すると、家づくりと身体の関係が思いのほか深いことに気づきました。
この記事は、
住まい × 身体 × 環境 の関係を、実体験と専門知識からまとめたものです。
1. 睡眠は“家”の性能をもっとも正直に映し出す
→ 睡眠の質は住まいの環境の影響をダイレクトに受けていて、家の「本当の快適さ」を教えてくれる鏡になる
最近、私は睡眠データを継続的に観察しています。
睡眠不足が続くと
・朝の気分
・判断力
・身体の温度調整
・ストレス耐性
のすべてが低下していくのをはっきりと感じます。
そして気づいたのは、
睡眠は、住まいの環境の影響をいちばん受けるという事実。
例えば:
- 寝室が乾燥するとHRV(自律神経)が下がる
- 早朝の冷え込みが強いと睡眠が浅くなる
- 寝る前の照明が明るいと入眠が遅れる
- 翌日の集中力に“昨夜の空気質”が効いてくる
性能の良い家は、この「睡眠条件」を整えやすい。
逆に言えば、睡眠の質が安定し始めた時、その家の“本当の力”を感じられるのです。
2. 自律神経と住まいの関係は、もっと語られるべき
→ 温度・湿度だけじゃなく、自律神経が整うかどうかが次の家づくりの鍵になる
家づくりの話では、快適性=温度・湿度
になりがちです。
しかし、実際にはもっと深い。
自律神経が整いやすい住まい という視点が、
今後とても重要になると感じています。
具体的には:
● ① 温湿度の揺らぎを最小にする
急激な温度差は、交感神経を刺激します。
高断熱高気密が求められる理由は、単に省エネではなく
身体へのストレスを減らすためでもある。
● ② 朝の光の入り方を整える
睡眠ホルモンの切り替えは日射が鍵。
パッシブデザインの思想と、自律神経のリズムは密接です。
● ③ 夜の照明を落とす仕組み
LEDの色温度、間接照明の配置は、
“副交感神経を邪魔しない空間”をつくります。
● ④ 寝室の電磁波環境を整える
EMF(電磁波)の影響は個人差がありますが、
敏感な人は寝つきやHRVに影響が出ることがある。
測定士としても、ここの調整は“住まいの最終仕上げ”と考えています。
この4つは、
家と身体を切り離さずに設計するための最低限の視点です。
3. “暮らし方の設計”ができると、家はもっと生き物になる
→ ちょっとした生活習慣を整えるだけで、性能の良い家が「生きているように」感じられるようになる
住まいを整えることは、実は身体を整えることと同時進行です。
たとえば私は最近、次の3つを小さな習慣として固定しました。
● ① 寝る1時間前に部屋の照明を落とす
● ② 朝のルーティンを一定に保つ
● ③ 夜はスマホ・PCをできるだけ遠ざける
これだけで、
- 睡眠
- 気分
- 朝の活力
- 判断の静けさ
が驚くほど変わりました。
この「生活の整い」が起きると、家そのものの魅力が変わって見えます。
住まいは“箱”ではなく、
暮らす人のリズムとともに呼吸する存在になる。
私はこれを“暮らし方の設計” と呼んでいます。
4. 家づくりの未来は「ホリスティック設計」へ
→ これからの家は「性能」ではなく「その人の身体と暮らしをどう支えるか」で設計される時代に変わっていく
建築の世界は、これまで性能や数値が中心でした。
しかしこれからは、身体・暮らし・住まい を一体で考える
“ホリスティックな設計” が求められると感じています。
その理由は明確です。
● 住む人の体質や生活リズムは千差万別
● 睡眠・自律神経が家の快適性を左右する
● 電磁波・空気質など「見えない性能」が重要
● 数字より“暮らしの手ざわり”が幸福を決める
建築と医学は少しずつ近づいています。
8weeks.aiのようなヘルスケア解析ツールは、設計の世界でも活きてくると感じています。
家は「性能」ではなく
そこに暮らす人の身体をどう支えるか
という視点で設計される時代に向かっています。
5. おわりに:
暮らしの変化が、次の設計をつくっていく
私は、性能を追求する設計の世界に長くいましたが、最近は“暮らしの静けさ”や“身体の声”を
丁寧に観察する時間が増えました。
すると、家という存在が以前よりずっと立体的に、人に寄り添うものとして見えてきました。
性能 × 身体 × 暮らし
この三つを同じラインで扱うことが、
これからの家づくりの本質になる。
そんな実感が、いまの私の中に静かに育ちつつあります。
暮らしを整えることは、家の未来を整えることでもあります。
これから、この領域について
少しずつBlogでお話していけたらと思っています。
