バタフライスツール 60周年 カタチの原点

バタフライスツールが発表され、2016年で60周年とのこと。企画展も巡回で開催されています。

私もバラフライスツールが好きなので建物の撮影時にインテリアとして持ち込む事があります。ひと目みればバタフライスツールとわかるそのデザイン。

私はバタフライスツールをみると、鳥居や「天」の形を連想します。その連想の為か、なんとなく神々しいものを感じ、空間がバタフライスツールに負けてしまいそうです。押しが強いデザインともいえますね。

 

構造はとてもシンプルだけど

構造はとてもシンプル。2枚の成形合板を金具一本でつないでいるだけなのです。

この構造が無ければバタフライスツールが存在しない、ユニークなデザインと表裏一体になっているところが魅力的です。

バタフライスツールをながめていると、“一体、どうすればこんなデザインを発想できるのだろう?”と本当に不思議に思います。一般的なスツールの形、座面と脚の関係なんてどこにもありません。

 

手遊びから生まれたデザイン

60周年企画展ではバタフライスツールのアイディアの原点となった模型が置いてありました。

柳宗理さんも「こんなイスを作ろう」と言う考えからではなく、紙を切ったり、折ったり、曲げたりしているうちにバタフライスツールの形を発想したそうです。

たしかに紙一枚に折り目を一ヶ所いれるだけで紙が立つのですが、これを応用してバタフライスツールになるなんて驚きの発想です。

 

手を動かす大切さ

こんな発想も普段の柳宗理さんの仕事に向き合う姿勢から生まれたようです。

柳宗理さんのスタジオでは常に原寸のモックアップを作ってデザインの検討をしていたのとのことです。

頭の中でデザインを思い描くのでは無く、手を動かしてデザインを積み上げていく作業だったのでしょう。

私は仕事ではパソコンを使った作業が多く、作業に埋もれて目標を見失うことがありがちです。そんな時にはパソコンから離れ手を動かし、目標を再設定します。すると時には新しいアイディアを思いついたりします。手を動かすことはやはり大切なことです。

あらためて柳宗理さんのバラフライスツールのような、デザインと構造が表裏一体となった発想に憧れます。

建物の設計ではデザインと構造、さらに温熱環境が加わります。

その三要素が表裏一体となった設計を心がけ、バラフライスツールのような無駄の無い建物を提案できるようにこころがけていきます。

鳥の目でみると

クリックするとコマ送りで動きます

さんむの家の撮影では建物外観を上から撮影することができました。

通常、建物を上方から撮影する機会はほとんどありません。ドローンや高所作業車を使用すれば撮影できますが、大変です。

またとないチャンスです。

カメラマンの花澤さんに相談してみると ”おもしろそうですね!” と良い感触です。色々相談し、ミニチュアジオラマ風に撮影をお願いしました。

結局、撮影日が一日増えてしまったりと色々と面倒な事をおかけしましたが仕上がりは予想通りです。記念写真のような、かしこまった雰囲気では無く、ちょっと不思議な写真を撮影することができました。

さらに、この画像を編集してみると、なんとコマ送りの動画が完成。コマ送りの効果もあってか、さらに現実感が希薄になって本物のミニチュアのようです。

設計するときは建物が街の中でどのように見えるのか色々と想像を膨らますのですが、鳥の目線まで想像を上げる事は少ないので貴重な写真です。

今回はカメラマンの花澤さんの協力があって、面白い写真を撮影することができました。改めてコミュケーションとコラボレーションの大切さを実感しています。良い撮影ができて感謝しています。

グリコのおまけのような、ちっちゃいけど楽しいご褒美でした!

 

 

 

 

 

 

科学的であること

クラウドファンディングのリターンに参加してきました。

マイクロピペットを使って試薬を試験管に移すと透明の液体が青色に変化します。遠い昔、学校での化学実験を思い出します。もちろん、それよりも遙かに本格的な機材ばかりです。

 

 

 

土壌診断のリターンを選んだ理由

私は父から畑を受け継ぎ自分たちが消費する程度の野菜をつくっています。家庭菜園レベルですから難しいことは出来ないので、消毒や除草剤は使わないのが唯一のポリシーです。トマトは完熟前に爆裂するし、ヘチマのようなキュウリなど笑える野菜ばかりです。でも収穫した野菜は愛おしく家族といただきます。

ですが唯一気になっていたことがあります。大切な畑の土壌の状態です。農業センターのような所に持ち込みをすれば土壌診断をしてくれるのですが、私のような家庭菜園のレベルでは気がひけるし、診断結果をみても解決策がわからないのです。農家をやっている人に質問しても当を得る返答はありません。書籍を読んでも様々な理論があり判断がつきません。

そう、なんとなく思考停止状態でした。作物は植えてしまえば、ひどい環境でも実をつけてくれます。でも、なんとなく気持ちが悪いのですよね。

そんな時に 山田農場さんのクラウドファンディングに出会ったのです。

そのリターンとして畑の土壌診断がありました。

  • 自分で土壌診断・施肥設計体験&科学的有機農業講座

もちろん、迷わずこのリターンを選びました。クラウドファンディングは無事成功。そして冒頭の講座への参加となりました。

山田農場の日々 https://goo.gl/GWSe68

科学が人の愛情を証明できるか

土壌診断の結果、私の畑の土壌は予想以上にミネラル分が多くて驚きました。生前、父が畑に手塩をかけていた事がデータによって証明されたのがとても嬉しかったです。大げさですが、科学が人の愛情を証明してくれたと思います。

 

科学的有機農業講座では科学的有機農法の入口の紹介でしたが、小松菜の葉がつやつやしている理由や、野菜の味が濃くなる理由等、納得できる科学的裏付けがありました。

私が今まで抱いていた有機農法の印象は化学肥料を使う農業の正反対で、科学的な裏付けが無いと考えていました。ですが科学的な裏付けがあって「日持ちがする野菜」「味が良い野菜」「ミネラル豊富な野菜」を生産することができます。

山田さんが「化学肥料を使っていても良い野菜を栽培している農家さんの言うことは理解できる」と話されていたのが印象的でした。正反対のやり方をしていても、お互いに「良い野菜」を届ける仲間なのでしょう。

建築の仕事は科学的か?

私の仕事の住宅設計に置き換えて考えてみました。

住宅の設計においても、お客様に「暖かい家ができますよ」と言うことはできます。でも「暖かい」ってどのくらいでしょうか?「暖かい」は感覚的で科学的ではありません。

私は室内環境について、科学的に説明できるように試行錯誤を重ねています。

設計の段階で科学的に予想し「冬に室温を20℃に保つにはエアコンを使って電気料金がこの程度ですよ」と説明したいのです。電気料金がわかれば、電気使用量を予想して家の燃費を説明することも可能です。

燃費の良い性能住宅を建てることにより、省エネルギーにも貢献し、化石エネルギーの使用を抑えることもできます。電気の使用量が減ってくれば、大半の電力を自然エネルギ-でまかなうことができる可能性もでてきます。

今回の”科学的”は科学的有機農業、住宅設計のどちらについても、全体の一部にしかすぎません。ですが一部でも科学的に解ることができれば、他の残った部分を検証すれば良いのです。

山田農場さんの畑を眺めながら、畑違いだけどやることは同じだな と気づいた一日でした。

山田農場の日々 https://goo.gl/GWSe68

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室内の環境を測定する

計測してわかること

ビジネスの有名なフレームワークの一つにPDCAサイクルがあります。計画→実行→評価→改善→計画→と業務を改善していく手法です。

PDCAサイクルを建物の建設に当てはめてみると、設計・施工はPD、暮らし始めた状況を計測することがC、それに基づいて改善することがAになります。建物性能を改善するためにも、PDCAサイクルを回して改善していくことが大切だと考えています。

建物の使い勝手については人それぞれの感覚に寄るところが多いので計測が難しいですが、建物内の環境、室温・湿度については計測することができます。

このような理由があり、御引渡し前の建物に室温・湿度を測定記録する装置を設置させていただきました。
本来ならば建物の数ヶ所に設置するのが良いのですが、理由もあり(結構なお値段がしますので)1ヶ所だけ設置させていただきました。
測定データは次の設計に生かす事ができる貴重なものなので、御協力は大変有難いです。

 

具体的に伝えたい

今回は無断熱住宅をリフォームしたので室内の室温・湿度環境は劇的に改善しています。そのことをお伝えする時、暖かい家になりましたよ!では無く、一歩すすんで実際の状況をしっかりと把握し数値化してお伝えしたいと考えています。

室温・湿度を計測するもう一つの理由は、設計者として設計時に目指した数値目標を体感として覚えておきたいからです。

建物設計時はソフトを使用しながら数値の改善を目指すのですが、完成後、暮らし始めた家の中で、その数値がどの程度の温熱環境なのか体感することが大切だと思います。そのためにも完成後に室温・湿度を計測しています。

温熱ソフトを使った設計では数値を追い求めてしまいがちなのですが、この辺でいいでしょう みたいな丁度良い体感温度を見付けたいと思っています。

現在は本格的な冬の前なので外気温の変化はほとんどありませんが、一冬のデータを記録させていただきたいと思います。

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