SketchUp+ DesignPHを試してみる

STAY HOME週間中、PHJメンバー有志が主催するDesignPHのZOOM勉強会に参加しました。

私はライセンスを持っていなかったのですが導入予定ということで見学させてもらいました。

SketchUp+ DesignPHについて

DesignPHSketchUpプラグイン上で使用するソフトです。SketchUp+ DesignPHを使うことでパッシブハウスの設計を3D上(SketchUp)でモデリングすることができます。

モデルを作成後、データをPHPP(パッシブハウス設計用のエネルギーバランスソフト)にエクスポート、エネルギー設計を詳細に進めていきます。

PHPPはExcelがベースとなっているので、データをセルに入力する方法です。

※建物燃費ナビもPHPPがベースになっており、入力方法がCADベースになっているのです。このCAD機能をSketchUpに置き換えたものと考えてよいのかな?

DesignPHはPHPPのセルへの入力を、SketchUpを使って、3D上で直観的に入力できるツールになります。

さてここからは忘備録的に。

ソフトの準備

※SketchUpはデスクトップ版のMake 2017、DesignPHはDemo版(2週間有効、機能制限有)を使っています。

ソフトは使ってみないと解かりません。試してみてください!

■SketchUp Make 2017  https://www.sketchup.com/download/all(こちらからMake 2017を選択)

■DesignPH Demo版  https://designph.org/DEMO_download(試用期間14日 機能制限アリ)

DesignPHのDemo版を使っていますので、機能が限定されています。今後、正規版を導入しましたら追記予定です。

SketchUpでモデリング

サッシ開口部は四角の外形だけで大丈夫

まずはSketchUpで簡単な外観モデルを作成します。

この時、あまり複雑な形状で無いほうが良いです。開口等もサッシ開口だけで十分。

他のCADからDXF出力した場合は余分な線は整理してしまった方が後々の作業が楽になります。

建物の方位や、開口部の位置を検討したりして簡単な外観モデルを作成してしまいましょう。

属性の割当て

作成した外観モデルに壁、屋根、開口部毎に属性を割当てます。

この時、壁、屋根、開口部にワンクリックで属性を割り当てることができます。

※私はDemo版だったので属性をカスタマイズすることができませんでしたが 、Passivhaus Institutの認定済みコンポーネントを割り当てることができました。

簡単なサッシ開口の四角にワンクリックでサッシモデルを挿入できます

窓についてはワンクリックで、サッシ枠とガラスが別々に表現されます。

ですから最初のボリューム作成段階ではサッシ開口のみで十分なんです。これは時間の短縮にもなるので嬉しい機能です。

樋先、庇等、サッシ開口部に影を落とす部位もモデルします

計算結果を見てみると庇などの端部からガラス中央にラインが見えます。これが計算部分ならば、屋根の厚み等は必要ないようです。まあ、これはこれで外壁面積等計算に影響しそうですが、難しいことは考えずに最後まで進んでみます。

建物の内部壁についてはモデル化する必要はありません。

暖房されていない部屋については、温度係数を入力するだけでモデル化できます。

※これは試すことができませんでした。

周辺環境の入力

DesignPHでは周囲の建物等、障害物からの影響も計算してくれます。なので、計画建物に影を落とす、周辺建物等もモデリングする必要があります。

Google Earthからおおよその地形モデルをインポートすることもできます。その後、DesignPHは計画建物への日影の影響も考慮しながら、日射取得熱等を計算してくれます。

※Demo版ではこれも試すことができませんでした。参加者の中には広範囲の地形モデルをインポートして山からの日影の影響を確かめている強者も…

※気候データについては、プラグインでデータが用意されています。ですが日本ではあまり細かい分類が無いようでした。またアメダスから気候データを読み込むこともできないようです。

エネルギー計算

外観モデルを完成させたら、エネルギー計算を実行、建物のエネルギー消費量を評価することができます。DesignPHによる計算はソフト内で行われていて、PHPPへの出力は必要ありません。結果はPHPPほど正確ではないと思いますが、この段階で簡単に数値を把握することができれば良いでしょう。なので計算結果が15 kWh / m2であっても、計画した建物がパッシブハウスレベルかの判断はできません。この次のステップでPHPPでの計算が必要になるからです。そのためにもこの段階では、さらに建物性能を高めておく必要があるかとおもいます。

DesignPH内で事前エネルギー計算を実行後、データを.pppファイルとしてエクスポート、PHPPに直接インポートできます。

※この作業もできませんでした。

感想

※今回はDemo版での感想になります。

・DesignPHは、SketchUpのプラグインとしてとても使いやすいと思います。

・認定パッシブハウスを設計する時はDesignPHだけでは足りません。PHPPでの計算等、複雑な検討が沢山あります。ですが初期段階からパッシブハウスの設計に利用すれば、失敗が少なくなると思います。

・学生、若い設計者はSketchUpを使いこなしている人が多いようです。温熱設計に興味をもったらSketchUp+ DesignPHにチャレンジしてみてもらいたいです。パッシブ設計に馴れていなくても、DesignPH内ならば手軽に結果をみることができます。未来の設計者がパッシブハウスへ興味をもってくれると良いなと思います。

・住宅以外の建物、複雑な形状の建物等は評価するソフトが少ないのでDesignPHが有効かと思います。

・普通の住宅レベルならば、もちろん”建物燃費ナビ”が早くて有効です!

日当たりをシミュレーションする 建物編

今日は4月16日。緊急事態宣言が出てから約1週間がたちました。外出を少なくして他人との接触を80パーセントまで減らして爆発的な拡大を防ぐとの事。これが達成できれば爆発的な感染を避けることができるそうです。

業務打合せにはZOOMを主に使っていますが、お客様との打合せが目下の課題。PCを持っていないお客様とどのように打合せするのか多くて思案中です。

※緊急事態宣言が全国に広がりそうなニュースが入ってきましたね。。。

建物への日当たりをシミュレーションする

日当たりをシミュレーションするの続きになります。

前回はおもに敷地に対してのシミュレーション、建物を配置してみたら思いがけない無い方向から日影が飛んでくることが解ったというお話でした。

くりかえしますが、パッシブ設計のポイントの一つに日当たり条件があります。

大草原の中にポツンと建つような、隣地に何もなくて建物を南側に正対する配置ができれば日射については大きな問題は少ないと思います。ですがそういった条件の敷地はほとんどありません。

ですから敷地の日当たり条件を検討した後、建物形状や窓の配置を決める丁寧な設計が必要になってきます。

前回と同じようにシミュレーションをご紹介していきますね。

12:00の日当たり状況です。

建物の半分以上が北側建物からの日影の影響を受けています。

この後14:00には全体的に日射を受けることができますが15:00には別の日影の影響をうけます。

 

太陽から取得した日射熱を表すとこんな状態です。

1階の窓からはほとんど日射熱を得ることがほとんどできない事が解ります。

ですが屋根面からは日射熱を得ることがわかるでしょうか?

 

そこで一つの解決方法、屋根面に窓を付けて日射を受けることを考えます。

図のような窓を付けてみます。ハイサイドライトを呼ばれている窓です。

北側建物からの日影の影響も受けていないようです!

 

日射熱の取得状況です。

ハイサイドライトに日射を受けることができて日射熱も得ることができそうです。

どうにか解決できそうです。

 

建物内の温度分布状況はこのようになります。

左図がハイサイドライト設置。右図は特に対策していない状況です。

日射熱はハイサイドライト設置7,200wh。対策なしだと 4,600wh。約1.5倍になります。

 

室内の温度はこんな状況です。

ハイサイドライトからの日射熱で14:00に3℃ほどの温度差が出てきます。

最高室温が日射熱最大の12:00から2時間遅れの14:00になることも興味深いです。

 

一例ですがこのようにしてシミュレーションを重ねて設計を進めていきます。

今回のような敷地状況では厳しいかと思いますが、パッシブハウスもこのようなシミュレーションの延長にあります。

どうせシミュレーションでしょ?という声も聴きます。たかがシミュレーションなのですが、事前に検討するとしないでは大きな違いがあると思います。

 

パッシブ設計は「自然の力」を理解し活かした家づくりです。

これからも「自然の力」を取り込める、ていねいな設計をこころがげて生きたいと考えています。

 

相談、お問い合わせはお気軽にどうぞ。

オンラインでの打合せも可能です。

メールはこちらです。

 

 

 

 

 

 

日当たりをシミュレーションする

今日は4月2日。年度初めですね。今日はとても風が強かったです。桜は満開ですが強風に耐えてます。
コロナウイルスのニュースがいやでも飛び込んできます。色々不安なことが多いと思いますが自分でコントロールできることに集中して日々過ごしています。

私はリラックスするためにヨガを日課としています。ヨガを習い始めてから3年くらい、太陽礼拝を毎朝の日課としています。太陽礼拝を簡単に説明するとヨガのラジオ体操みたいなものなんですが毎日やることでその日の体調変化にも気づきやすくなったりします。

来年はコロナウイルスもきっと収束して、どんなことを書いているのでしょうね。

そんな中でも粛々と設計を進めており、今日はシミュレーションソフトを使った日射の検討についてです。

敷地概要

地図を見る限り敷地形状は南北がほぼ振れていない良い条件。

パッシブ設計のポイントの一つは日当たり条件。南面に正対するほど有利になります。

ですが、当該敷地、有利な条件ばかりではありません。

現地を調査した結果が以下の通りです。

・北面、西面に道路

・南面、東面は宅地

市街地ですから既存の建物が当該敷地までかなり接近して建てられています。

一見しただけで、隣地からの日陰の影響を受け、日当たり条件は厳しい判定へ。

西側は6メートル道路を挟んでいるので南西側の建物からの影響はほとんど無いだろうと予想しました(後に驚きの結果に。。。)

配置計画

まずは現地で、建設予定地に隣接する周辺敷地を調査して、隣地建物の配置、高さを計測します。

そのデータをもとにして隣地建物を配置し作図します。

そして早速プランニングを開始します…ではなく、先走る気持ちを押さえて、隣接する建物からの日陰を検討します。

検討にはシミュレーションソフトを使います。検討結果を考慮しながら建物の配置計画をします。

何となく配置するのでなく、”ここしかない”配置計画を心がけます。

シミュレーション、シミュレーション、シミュレーション

基本案が決まったら、ここでもう一度シミュレーションします。

今回は太陽高度が一番低くなる冬至でのシミュレーションをご紹介。

11:00頃

11:00を過ぎると南西の角にようやく日が当たり始めます。
1階の南面にはまだ、半分以上日射がありません。北側建物からの日陰の影響を大きく受けています。

 

 

 

14:00頃


14時になると、ようやく南面全体が日射を受けます。

ですが南西の建物からの日陰が 建物にあたり始めています。

 

 

 

15:00頃

15時には南西の建物から日陰によって、1階の南面の日射はなくなってしまいます

 

 

 

 

日陰は予想しないところから突然に

シミュレーション前、北側建物の日陰が通り過ぎた後、11時過ぎには日射を邪魔する日陰が生じないと想定していました。ですがなんと、西側道路を挟んだ南西にある建物から想定を超えるの日陰が浸食してきました。

ん?何かの間違いかな。。。”、6メートル道路ですからまさかの結果です。シミュレーションソフトを信じられずに半信半疑で現地に向かいました。そして現地を確認したところ、ほとんど同じような日陰を確認。

この経験でシミュレーションソフトの正確さを実感しました。すまん、シミュレーションソフト。。。

このように想像できなかったような日陰が影響を与える可能性があるのです。

外皮性能だけでは足りません

最初にお話をしたように、パッシブ設計のポイントの一つに日当たり条件があります。

このポイントを満足させるためにはシミュレーションソフトが必要になることは明らかです。

経済的に冬暖かい家を実現するためには外皮性能を上げるだけでは十分ではありません。暖房設備をフル稼働すれば同じ室温にすることができますが、暖房費用が大変なことになり不経済になる可能性が大です。

この例のように太陽からの日射を利用するために、太陽に素直が設計が必要になってきます。

それを実現するには経験だけではなくシミュレーションする必要があるんです。

それ以外にもこのシュミレーションで大切なポイントがあるのですが、それは次の機会にでも。

暮らしをアップデートする設計

住宅や建築の設計をして常々感じることは、究極の一品製作品だということ。

家電製品や自動車は各メーカーさんが巨額の開発費を投入して開発する工業製品。

一方、住宅は一品製作のオーダーメイドです。

土地の形状が同じでも、敷地の場所が変わると全く違います。同じものはほとんどないと言ってもよいです。

暮らしをアップデートする

少し言い訳のようですが、建物が完成し暮らし始めてから手を入れるところが出てきてしまいます。

そういったところに手を入れて自分達の暮らしに近づけていくことを楽しんでもらえたらと考えています。

住宅や建築建物は完成した時はまだ完成途中、手を入れることで完成に近づいていくものかなと。

とくに住宅は家族の成長に合わせて変化させたり、家族の好みに合わせながら手を入れることが大切だと思います。

住まいに手を入れることで、暮らしをアップデートする感覚です。

とは言え、全くの未完製品をお渡ししているわけではありません。

設計前段階では、ヒアリング等でご要望等は詳しくお聞きし、設計に反映しています。残念ながら予算等の関係で全てが叶うわけではありませんが。。。

設計時には温熱シミュレーションは必ず行い、建物性能面では満足するようにしております。

建物性能を左右したり、後から手を加えることが難しい箇所 例えば、構造の耐震等級、壁の内側になる断熱材等、についてはしっりとした設計をしてお金をかける。

ですが、後から交換できる内装部分については、変化していく家族構成、趣味趣向にあわせて手を入れるような設計が好ましいと考えています。

アップデートが難しい部分はしっかりとした設計を心がけています

建物性能を満足するために、現在、シミュレーションソフトを活用した新しい設計方法を試行錯誤しております。簡単に説明したいと思います。

一番最初にすることは日陰のチェック

まずは周辺環境が敷地にどんな影響を与えるかチェックします。特に敷地に接する建物から発生する日陰などの影響をシミュレーションします。使用するソフトは主にホームズ君を使います。

南側の建物はもちろんですが東側、西側の建物からも大きな影響を受けることがあります。シミュレーション前、私も頭の中である程度の予想をしています。

”この方向に空きがあるからこちらから日射を取り込めるな”などと予想するのですが、その予想を見事に裏切られる事もあります。

ですからシミュレーションソフトの計算無しでは、正確な設計はできないと考えています。シミュレーション結果を参考にして建物の配置や窓の位置を決める参考にします。

パッシブ設計の基本は効率よく太陽からの日射を取り込んだり、遮蔽することが基本になります。ですから日影の影響を検討しながら設計することが大切になります。

次にホームズ君と新住協さんのQPexを使いながら建物の性能を決定する屋根・外壁・床、開口部などの外皮性能を設計です。

QPexは各部の断熱材の種類、厚さ、開口部の仕様を入力すると比較的簡単にUa値、暖冷房エネルギーを計算できるので、とても優れた計算プログラムです。

※細かい点ですがQPexはエクセルベースの暖冷房エネルギー計算プログラムなので正確にはシミュレーションソフトとは違います。

その後にホームズ君を使って室温シミュレーションを行います。

※ホームズ君は使い始めて間も無いので入力に手間取ることが多いのですが丁寧なサポートがあるので助かっています。やはり日本語で手軽にサポートしてくれるのは安心です。

ホームズ君とQpexを行ったり来たりを繰り返し、グルグルしながら仕様を決めていくようにしています。

パッシブハウスのジャパンの会員ですから、建物燃費ナビで計算もしています。

このように温熱環境についてはきちんとシミュレーションすることが大切です。正しい施工方法を知っていることもちろんです。