普遍的な素材を使う~工業製品の魅力~
昔ながらの形を活かしたリフォーム
山武の家は、山武地域でよく見られる昔ながらの切妻屋根の形をしています。
現在よく見られる高性能住宅のような総二階の建物ではなく、2階建てに下屋が取り付いたデザインです。
40年以上前、性能(燃費、耐震)やデザインやを意識せず、大工さんが普請で普通に建てた家でしょう。
今回の改修工事では窓の大きさ、軒の出等を調整するくらいで、大きな外見変更をしていません。
それは、過去の思い出をつなぐ意味合いで旧い部分を残しながらのリフォームを選択しているからです。40年以上そこに建っていた雰囲気を大きく変えることをしたくなくて大きな外見変更をしていないのです。

普通の家に見えるデザインの工夫
しかし、建物の細部を丁寧に調整することで全体の雰囲気を大きく変えることができると考えています。
派手なデザインでは無く、シンプルな形に素材感を生かした仕上材で普通の家を目指しました。
工業製品を選ぶ理由
外壁材は耐候性とコストを考慮してガルバリウム鋼板の小波板としました。
ブリキの小波板はこの地域でも倉庫に使われている材料です。同じ小波板でもガルバリウム鋼板の小波板は耐候性に優れていて、ブリキ板とは比べものになりません。
サイディング等のメーカー建材と比較すると豪華さでは劣りますが、素材感を活かした仕上にはもってこいです。
またメーカー建材は廃番になってしまうと修理が不可能となってしまいますが、こういった工業材料でしたらそういった心配は必要ありません。
またサイディング材の多くは10年ほどすると劣化が激しく、再塗装やシーリングの打ち直しなどの手間がかかります。
その点、ガルバリウム鋼板のような工業製品はメンテナンス性にも優れており、長期的に考えると暮らしに寄り添う素材だと言えます。

遮熱効果を意識した外壁選び
色についてはシルバーにしたのですが、それにも理由があります。
最近よく見かける、黒い外壁も候補にあがりました。黒い外壁と木部のコントラストも美しいいです。
※山武の家改修工事では、一次エネルギー消費の削減も重視しています。太陽からの日射による温度の上昇を考えた場合、黒色系と白色系の外壁を比較したとき、白色系の方が遮熱効果が大きいです。ですから外壁を白色系のシルバーにすることにより、遮熱効果を狙っています。
※2025年追記
外皮の断熱強化によって、1次エネルギーが外壁の色によって影響を受ける可能性はシミュレーションによります。
基本を大切にした建物性能の向上
建物性能を向上させるためには決まったやり方があるわけではありませんがこう言った小さな積み重ねが大切なんです。基本を押さえて定石を一つ一つ積み重ねていくことが大切だと考えています。
出来ることをやっていけば、少しずつ建物性能は上がっていきます。
工業製品は一見すると味気ない素材に思えるかもしれません。ですが適材適所で使えば、意匠と性能の両方を満足する素材だと考えています。
※2025年追記
2017年当時に書いたこの記事を読み返すと、いまも「工業製品の持続性」という視点は変わらず大切だと感じています。また、最新の知見も加筆しました
工業製品はサイディングなどの既製品建材に比べて耐久性が高く、劣化が少ないため、永く使える素材です。
修繕の手間を抑えながら安心して使い続けられる点は、建物の資産価値を守るうえでも大きな利点となります。
更新や補修の頻度を減らし、世代を超えて住まいを活かしていくことこそが、サステナブルな住まいづくりにつながります。

