睡眠を支える「寝室の環境設計」 ――睡眠・環境・住まいをひとつの視点で読む03

第1部では「考え方」を、
第2部では「深部体温と自律神経」の仕組みを整理しました。

最後となる第3部では、
その身体のメカニズムを、住まいからどう支えるか
設計の視点で静かに整理していきます。

血液データや睡眠ログを観察して感じたのは、
寝室は単に眠るための場所ではなく、
身体の仕組みや細胞のリズムを翌日に向けて“整え直す場所”
だということでした。


睡眠のスイッチを入れる最大の条件は、
深部体温(脳や内臓の温度)が静かに下降していくことです。

室温が乱高下すると、
脳は体温調節に追われ、この自然な下降が妨げられます。

身体へのはたらき
安定した室温は、自律神経の負担を減らし、
入眠をスムーズにします。

設計のポイント
夏は26℃前後、冬は18〜20℃をひとつの目安に、
夜間の温度変動をできるだけ小さくすること。
高断熱・高気密の住まいが有利なのは、
この「温度の静けさ」をつくりやすいからです。


湿度は、呼吸器の粘膜や皮膚感覚に直結します。

寝室が乾燥していると、
鼻や喉にわずかな違和感が生まれ、
それが微細な覚醒となって眠りを浅くします。

身体へのはたらき
適切な湿度は粘膜を保護し、
中途覚醒を起こしにくくします。

設計のポイント
冬は40〜60%を目安に。
加湿器が効くかどうかは、
実は「家の気密性能」に大きく左右されます。


光は、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌をコントロールする強力なスイッチです 。

身体へのはたらき
夜に強い光、とくに青色成分の多い光を浴びると、
脳は昼間だと錯覚し、修復のスイッチが入りにくくなります。

設計のポイント
就寝1時間前からは、
4000K以下の暖色系照明を使い、
間接照明で空間全体を包むように整えます。


寝室は閉め切ることが多いため、
家族の呼吸によって二酸化炭素(CO₂)濃度が家の中で最も上がりやすい場所です 。

身体へのはたらき
CO₂が1500ppmを超えると眠りが浅くなり、
2000ppmを超えると起床時の頭重感や倦怠感に直結します 。

設計のポイント
計画換気を正しく機能させるためには、
気密性能が欠かせません。
目安として、1000ppm以下を保てると、
朝の感覚が変わってきます。


耳から入る刺激は、たとえ眠っていても脳に届き、交感神経のスイッチを入れてしまいます 。

身体へのはたらき
はっきり聞こえる物音よりも、換気扇や家電、外の道路から響く「低周波」のノイズが、無意識の緊張を生みます 。

設計のポイント
高性能住宅は遮音性が高い一方、内部の静けさが上がる分、
微細な音が気になりやすくなります 。
寝室を道路や騒音源から離す配置計画は、
とても重要な「音の設計」です。


電磁波への感受性は人それぞれですが、自律神経(HRV:心拍変動)に影響を与えるケースを私は測定士として見てきました 。

身体へのはたらき
睡眠中に強い電磁波にさらされると、身体の修復に集中すべきエネルギーが阻害される可能性があります 。

設計のポイント
ゼロを目指す必要はありません。
EMFA(電磁波測定士協会)が推奨する “25 V/m 2.5 mG ” 基準以下を目指します。
「枕元から余分な配線を取り除く」といった、現実的な距離感で整えることが大切です。


家づくりは今、単なる性能競争から、
「そこに住む人の身体の仕組みや回復のリズムを、どう支えるか」
という段階へ進んでいます。

温度、湿度、光、空気、音、電磁波。
これらはすべて、あなたの細胞のリズムや自律神経とつながっています。

住まいという「器」を整え、
そこに日々の習慣を重ねることで、
身体は本来の回復力を発揮し始めます 。

第1部から第3部を通じてお伝えしたかったのは、家づくりは
健康と静けさを取り戻すための、ホリスティックな営み
だということです。
この記事が、あなたの暮らしと身体を見つめ直すきっかけになれば幸いです。

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