曳家岡本、岡本棟梁のはなし

地震の影響で地盤が液状化を起こしてしまい建物が傾いてしまったり等、様々な理由で基礎が沈下して傾いてしまった建物を直す仕事があります。

沈下修正工法と言って、おもに曳家(ひきや)さんが仕事をしています。

曳家というと建物を移動させたり、持ち上げて新たに基礎をつくり、また下ろしたりと、ダイナミックな仕事のイメージでした。

今回はそのイメージを払拭するセミナーに参加してきました。

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”杭の摩擦が解けて建物が再沈下する”

”曳家をしているときに建物の反対側が振動し始めた時の怖さといったら。。。”

沈下修正工法のセミナーで曳家岡本の岡本棟梁の話で印象に残った言葉です。

セミナーの主催は東京建築士会さん、11月16日に開催されました。

 

曳家の仕事はダイナミックなイメージがありましたが、建物の上部構造を理解した上で、沈下修正をするときに移動する値は㎜単位。非常にデリケートな手間のかかる仕事です。

沈下修正工法には数種類の工法があり、それぞれの工法に特徴があり、地盤の状況によって工法を使い分けなくては効果が出ないとのこと。

全ての状況に対応することができる魔法のような工法はありません。

地味な作業を繰り返すことによって初めて安全に確実に建物の沈下を修正することができます。

また、基礎の種類や剛性によって、基礎を持ち上げる沈下修正が出来ない場合もある。そういった限界も包み隠さず話をされていました。

また北海道での地震で地盤沈下した建物を修正する時の基本的な考え方も話されていました。

北海道は凍結深度によって基礎の高さが高くなってしまうので基礎を持ち上げることが難しいとのことです。その対策として「土台揚げ」工法があるとのこと 。

「土台揚げ」工法*岡本棟梁のブログから抜粋

土台揚げ工法であれば、地下水位の問題もありません。浦安市入船地区では「布基礎」のお家が多かったことと、この水位の問題から「土台揚げ」工法が多く選ばれました。しかし土台揚げは地盤改良を伴う工事ではありませんので地盤が安定していること。再沈下が起こる可能性があることを認識しておいていただなくてはなりません。それでも1棟あたり300万円前後で沈下修正工事が出来ることから、選ばれていました。

*岡本棟梁Blog 沈下修正のことをまとめた記事----北海道地震で傾いた家を直すための参考意見です---

こちらの記事には、さまざまな沈下修正工法の良い点、悪い点がまとめてありとても参考になりました。

 

地盤にまつわる話は業者さんの話を鵜呑みにしてしまうことも多く、それではプロとして不勉強以外の何ものでもありません。

今回、岡本棟梁のセミナーで判断材料が増えたので、沈下修正の相談お頂いた時はお役に立てると思います。

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意外と燃えない木材の話

初めて都電に乗って都電テーブル鬼子母神前へ。

改札が無くて戸惑いましたが、バスと同じ仕組みなんですね!”チン!”というベルの音が発車の合図。夕暮れ時と重なってノスタルジックな雰囲気。

タニタさんの外壁材、ZIGが45分準耐火の認定を取得した記念講演会+懇親会に参加です。

木材は簡単に燃えるものと思い込んでいませんか?私はキャンプで薪を燃やすのが得意ですからそう思っていました(違)

ですが技術を使うと火に晒されても45分間は燃え抜けない外壁を作ることができるのです。

ちなみに、この45分、火事が発生してから建物が崩れ落ちる前に消火できる時間だそうです。

私の仕事の範囲では45分準耐火の仕様はほとんどありませんが建物の防火を考える時に必要な知識が増えました。

今回の講演で建築基準法改正による防火についての違いもキャッチアップ。講師の桜設計集団、安井先生によると、今回の法改正の内容は建物の防火に関しては今後しばらくないほどの大きな内容とのこと。

法改正により今まで木造で建てることができ無かった規模の木造建築が、ZIGの45分準耐火構造+構造設計をクリアすれば、建てることが可能になります。大工さんが住宅以外の建物を建てることができるわけです。

サッシについても木造住宅の方が性能が良い(特に温熱)ので温熱に優れた建物にすることが可能になりますね。

ですが耐久性には少し注意が必要そうで、特に柱間に充填断熱をした構造の場合、在来木造の知識がないと問題が発生しそうです。

また実務を担当された 桜設計集団、加來さんが試験体が燃えている、萌える画像(プロには)を紹介されていました。ですが燃えている炎が小さくて一般人には萌える画像ではありません。もっと炎や煙が充満しているほうが。。。

この事は温熱の分野でも同じこと。しっかりと断熱された建物ほどサーモカメラ画像が均一になってしまい盛り上がらない事と同じ、と腑に落ちました。

懇親会では都電テーブルさんの素材を生かした料理が並び、美味しく楽しむことができました。
初対面の人ばかりでしたが建築談義で盛り上がります。
板金の納まり、伝説の職人話などなど、向かい合っていないと話せない内容盛りだくさん。
最後はZIGの開発者でもある伊礼先生の〆でお開きに。開発秘話もなるほどでした。
タニタさん、楽しい企画をありがとうございました。

 

たいせつに

椅子の座面の張り替えをしてもらいました。右がbefor 左がafterになります。

画像をみてもお分かりのように、古い椅子と比較してみると座面の高さは2、3 ㎝ ほど高くなっています長年の使用で内部のウレタンが劣化してつぶれ、そうとう薄くなっていたようです。

ウレタンは硬さの違うウレタンを2種類を使い、座面の生地も椅子専用の生地で張り替えてもらっています。椅子専用生地なので摩耗性にも優れているようですし触り心地も良いです。

張り替えと同時に椅子の緩みも閉めてもらいガタツキが少なくなりました。

座り心地もよく、今までよく我慢されていたと思います。ウレタンがすこしづつ劣化していくので座り心地が悪くなっているのに気が付きづらいんですよね。

ちなみに金額は張り替え生地を含めて8000円です。

ダイニングチェアを調べてみると、なんと新しいダイニングチェアも変えてしまう金額なんですね。ですから少し迷う金額です。

金額だけを考えると新しく買い替えてしまいたくなりますが椅子の雰囲気やダイニングテーブルの相性とを考えると修理するのも良いのではと思います。

真鍮のマイナスネジで背板が固定されています。これは古い椅子ならではのディテールです。こういった部分を大切にされる方は張替をして永く使っていただきたいです。

座り心地が良くなったので、残りの2脚も改めて張り替えてもらうことになりました。10年以上使った椅子ですがまだまだ使えそうです。

 

里山と板倉建築

神社が近くにある里山の一角に、昔ながらの建て方、板倉工法で建てられた建物を見学してきました。板倉工法で建てられた建物を実際に見学するのは初めて。

一般的な在来工法と違う建て方なのだから、きっと住まいや暮らし方もきっと違うはずです。そんなことを考えながらの見学です

伝統工法から進化

板倉工法は柱の間に溝を掘ってそこに厚板を落とし込んで壁をつくる工法です。4寸角の柱と一寸厚の板で基本構造をつくります。柱と柱の間に筋交いや構造合板で耐力を確保する、在来工法や2×4と違い主要構造部には接合用の構造金物をつかわずに、大工さんによる木組みの継手で建てられています。

 

柱と横架材の接合も大工さんの手仕事による仕口に込栓と呼ばれる木製のピンを打ち込んで接合しています。板倉工法は落とし込んだ厚板の室内側がそのまま仕上げとなってくるので、構造と仕上げが一体になった無駄の無い仕組みが魅力的です。

 

 

里山の暮らしを再現する

見学した住宅は土間を中心とした吹き抜けが中心となっていて、丸太を加工した事がわかる太鼓梁や登り梁を見事にくみ上げた小屋組も見応えがありました。在来工法のような定形材を使ったリズミカルな小屋組も美しいですが大工さんの手仕事がわかる小屋組も見応えがあって良いですね。

 

室内建具には一部古い建具が使われていて新築なのにまるで古民家のような雰囲気。土間にはマキストーブ、給湯はマキやペレットを燃やしてお湯を沸かす給湯器が使われています。この建物が建てられているのは里山の一角です。燃料としてマキを調達することができれば、まるで昔ながらの里山の暮らしが実現出来そうです。

国内材の流通をデザインする

また板倉工法の材料は主にスギが使われてます。国内で調達しやすい材料を選んでいるそうです。スギは日本各地で植樹されていて調達のしやすい材料。

ですが安価な輸入材に押されて国産材のスギの需要が低迷。森林の手入れができずに荒れているニュースを見かけます。日本の森林から伐採されて木材となり建物になる。こんなサイクルを取り戻す事ができれば輸入材を減らすことができます。

板倉工法のようにスギ材を有効利用できる工法が一般化して、使用量が増えれば森林の荒廃を食い止める1つの方法になりそうです。

今回の建物は千葉のサンブスギを使って建てられていました。地元の良い材料を集め、大工さんが腕を振るったようです。職人不足で大工さんも減っている建設業界。腕のたつ経験豊富な大工さんも減っていますが、施工会社の石井工業(株)さまは板倉工法のような仕事ができるように様々な取り組みをされているようです。

板倉工法と復興住宅

また板倉は復興用の仮設住宅にも使われています。他工法のプレファブの住宅と比較すると板倉工法では無垢の木が仕上げに使われているので生活をしていると気持ちが安らぐようです。災害時の緊急用の仮設住宅の役目を終えた後も、解体をされて復興住宅として再利用されているようです。このような再利用ができる事も板倉工法の特徴の1つです。

板倉工法は金物を使わないので古民家の改修にも適していそうです。古民家を改修するときも耐力壁の追加が必要になるのですが、古民家のような金物を使わない構造に板倉工法は馴染みそうにです。施工方法の検討が必要ですが機会があれば採用してみたい工法です。

見学会を開催してくださったお施主様、板倉工法を詳しく説明していただいた(株)里山建築研究所さま、施工の石井工業(株)さま、貴重な機会をありがとうございました。