さんむの家改修工事07:天然素材で仕上げる内装工事の進捗

天然素材を選ぶ理由

1.さんむの家、内装工事がいよいよ終盤へ

残暑が続きますが風は秋の気配です。

内部の木工事があらかた終了し、いよいよ内装工事が始まりました。まずはボード下地工事のパテ打ち作業に入っています。

パテ打ちが始まると工事が終盤にさしかかることを感じます。仕上げ材が薄塗りの天然内装仕上となるので下地の調整もクロス張りと比較すると念入りです。

2.天然素材の魅力:風合いと肌触りがもたらす心地よさ

さんむの家で使っている内装仕上材は薄塗り仕上げ材です

天然素材の良い所は、なんと言っても風合いや肌触りにあります。

これはメーカー素材と呼ばれる、大量生産されるビニールクロスや複合フローリングで味わうことがきません。

薄塗り仕上げ材を使った塗り壁はビニールクロスに無い質感があります。

無垢材の木の床の肌触りは心地よく、気がつくと素足になっています。

このように天然内装材は暮らしている時のちょっとした瞬間に、気持ちの良い喜びを感じさせてくれます。

3.天然素材が描く時間の美しさ

さらに天然素材は時がたつと風合いの良さがましていくので、その家で暮らしていく楽しみの一つになります。

天然素材での家づくりでは家の美しさは家が完成した時がスタート地点になり、時間経過によって新品の美しさから風合いを重ねた美しさへ変化していきます。

一方、メーカー素材では素材が美しく経年変化することは無く、完成した瞬間が一番美しくその後は経年劣化することになります。

4.天然素材の課題とその魅力

もちろん欠点もあります。

天然内装材はメーカー素材と比較するとコストも上がります。

工場で大量生産しているわけでは無いので、仕上がりにばらつきが出ることも多いです。

そのような欠点を認めることができるのならば、仕上がりのばらつきも天然内装材の魅力に感じることが出来るのでお勧めします。

5.次の工程:ビーナスコート仕上げの魅力

パテ下地が終わった後、天然内装材のビーナスコート仕上となります。

ビーナスコートとは?

ビーナスコートは、薄塗りの天然内装仕上クリーム材で、主な原材料は「卵殻」と「火山灰」です。
特に「卵殻」を原料としているのはビーナスコートだけだと思います。メーカーによれば、この「卵殻」はマヨネーズ工場で廃棄されるものを再利用し、乾燥・粉砕の工程を経て原料化されているとのことです。
再生素材を活用したこの仕上材は、環境に配慮した製品としても注目されています

パテ打ち作業の様子

描いている完成予想図と同じになるはずですが、楽しみと緊張感が入り交じった気持ちがします。

下地調整後、本塗りへと進みます。

次の工程はこちらからどうぞ
ビーナスコートの仕上がりをご覧いただけます

head研究会に参加しました

head研究会 オープンプロセス タスクフォース創立記念シンポジウム に参加しました。
今回、シンポジウムに参加したことで理解が深まった部分を何点か。

まずは松村先生からの高断熱住宅の普及についての新提案が印象的でした。
高断熱住宅の普及が進まない理由の一つとして”人間は数値、理屈のみで動かないから”とのこと。
このことは先生が何十年も前から実践している事実だそうです。
設計をしている実務者はこの部分に一生懸命になりがちで、どうにか数値をグラフ化したり理屈で通そうとしてしまいます。ですが、やはり上手くいかない。

そこで松村先生が、数値、理屈で動かないならば、新しい流れを住宅産業に取り入れては?との提案。

新しい流れとは、パネラーとして参加された Houzzさん、DIYer久米まりさん、暮らしかた冒険家さん、達です。

皆さんはDIYや暮らし方を提案して人気を得ています。そしてDIYリノベは今までの住宅産業とは違った流れを生み出しています。

そんなDIYや暮らし方の手本となる人達が工事の一つとして高断熱改修に取り組み、断熱された家の住み心地の良さを広め、その流れを新築高断熱住宅の普及に生かしていけないだろうかとのことでした。

住宅の性能を数字や理屈で説明するよりも、憧れの暮らし方のほうがイメージがしやすい。そんなイメージリーダーが断熱改修を始めたらその影響力は大きなものになります。

松村先生の提案を聞き、ユーザーさんは住宅を求めている時、住宅の性能も大切だけど、住まい方のイメージを求めているのだと腹落ちした感じです。
設計をしている実務者は数値が気になりますが、ユーザーさんとの目線が少し違っていたということです。この目線の違いは大きいです。

またHouzz加藤さんの、”日本のユーザーは、自分たちの暮らし方を選ぶ事が不慣れで、暮らし方のイントロダクションをいる”が印象的でした。
住宅の性能や数値はシミュレーションソフトなどで改善することが可能です。
ですが住まい方についてはそう簡単にはいきません。
住まい方はライフスタイルそのもので自分たちの哲学がチラチラ見えることも。
この辺は働き方改革等とも関係してきそうで大きなテーマです。

またパネラーの富田さんが実践した断熱改修も素晴らしい実例でした。
実務者レベルで断熱改修を考えると、ユーザーの考えているレベルを超えてしまい不採用になりがちです。
富田さんの満足度を考えると、ユーザーレベルの断熱改修の満足度についても考える余地がありそうです。

YKK APW フォーラム&プレゼンテーションに参加

YKK APWフォーラムつくばに参加してきました。
プレゼンテーションは関西の建築家 Eee works 代表の日下洋介先生です。
日下先生は性能とデザインが両立する建物設計を実践されており、私達も目指している性能とデザインの両立を学んできました。

温熱環境設計について大きな学びがあり、設計時のシミュレーションを行い事前に確認することの大切さを改めて確認。
遅れながらも、私も建物燃費ナビ、ホームズくん試用版を試しているところでしたので、今回の講演を聴講し採用に迷いが無くなりました。
しかしながら他ソフトの連携、使い勝手等、どちらのソフトを導入するか迷っています。
幸いにも、省エネ建築診断士セミナーを受講する予定なので、その後に決定する予定です。

講演内容は聴竹居からコルビジェを通して機能、性能、デザインの話へ。
最新作の紹介もあり飽きることの無い講演でした。
帰路、街路樹の隙間から見えるカーテンウォールの建物を見て気がついたのですが、講演会場がつくば学園都市なのでコルビジェを絡めたのでしょうか?次回機会がありましたらお聞きしてみたいです。

YKKさんが主催するYKK APWフォーラムは貴重な情報収集の場。
一年毎に変わる省エネ関係の法令などを整理することができます。
設計事務所にはとても有難いことです。
継続して開催されることを期待します。

YKKさん、日下先生、ありがとうございました。

さんむの家改修工事06:工業製品の魅力

普遍的な素材を使う~工業製品の魅力~

昔ながらの形を活かしたリフォーム

この建物は、山武地域でよく見られる昔ながらの切妻屋根の形をしています。

現代の住宅でよく見られる総二階の形状ではなく、2階建てに下屋が取り付いたデザインです。40年以上前、普請で大工さんが普通に建てた家だと思います。特にデザインを意識すること無く建てられたと思います。

今回の改修工事では窓の大きさ、軒の出等を調整するくらいで、大きな外見変更をしていません。

なぜなら、過去の思い出をつなぐ意味合いで旧い部分を残しながらのリフォームを選択しているからです。40年以上そこに建っていた雰囲気を大きく変えることをしたくなくて大きな外見変更をしていないのです。

普通の家に見えるデザインの工夫

しかし、建物の細部を丁寧に調整することで全体の雰囲気を大きく変えることができると考えています。
派手なデザインでは無く、シンプルな形に素材感を生かした仕上材で普通の家を目指しました。

工業製品を選ぶ理由

外壁材は耐候性とコストを考慮してガルバリウム鋼板の小波板としました。

ブリキの小波板はこの地域でも倉庫に使われている材料です。

同じ小波板でもガルバリウム鋼板の小波板は耐候性に優れていて、ブリキ板とは比べものになりません。
サイディング等のメーカー建材と比較すると豪華さでは劣りますが、素材感を活かした仕上にはもってこいです。
またメーカー建材は廃番になってしまうと修理が不可能となってしまいますが、こういった工業材料でしたらそういった心配は必要ありません。またサイディング材の多くは10年ほどすると劣化が激しく、再塗装やシーリングの打ち直しなどの手間がかかります。

遮熱効果を意識した外壁選び

色についてはシルバーにしたのですが、それにも理由があります。
最近よく見かける、黒い外壁も候補にあがりました。黒い外壁と木部のコントラストは美しいいですよね。

今回の計画では、一次エネルギー消費の削減も重視しています。太陽からの日射による温度の上昇を考えた場合、黒色系と白色系の外壁を比較したとき、白色系の方が遮熱効果が大きいです。ですから外壁を白色系のシルバーにすることにより、遮熱効果を狙っています。

基本を大切にした建物性能の向上

建物性能を向上させるためには決まったやり方があるわけではありませんがこう言った小さな積み重ねが大切なんです。基本を押さえて定石を一つ一つ積み重ねていくことが大切だと考えています。
出来ることをやっていけば、少しずつ建物性能は上がっていきます。

工業製品は一見すると味気ない素材に思えるかもしれません。ですが適材適所で使えば、意匠と性能の両方を満足する素材だと考えています。