建物探訪 大正時代の住宅リノベーション

思い出を残したい

リフォームの依頼を受け設計する時、古い柱や梁を残し意図的に現しにすることが多いです。
古い物が大好きな性格もありますが、古い建物の思い出を残すことができるのがリフォームを選ぶ理由の一つだと考えるからです。
柱のホゾ穴等を新しい材料で埋め木する仕事は大工さんの腕次第になりますが、新品の美しさとは違ったものを感じます。
こう言った仕事があると知ったのも現場での経験からです。
特に建築の仕事を始めたばかりの時の経験は大きな影響を与えると言いますが私も同じなのかもと気がつきました。

建物探訪して思い出したこと

久しぶりに懐かしい建築を訪問することができました。
オーナーさんと知り合いになったご縁で、建築を始めた頃に勉強で通わせてもらった建物です。

大正時代の建物をリノベーションしている建物で間取りは大きく変更されています。

 

間取り変更に伴い柱を隠すことが出来たと思うのですが、あえて古い柱を丁寧に補修して現しでつかうことの美しさをこの現場で覚えたのだと思います。

竣工から10年以上、年月を重ねて埋め木をした新しい部材も良い風合いになってきています。

 

 

全てを新しくしない

新しい柱に差し変え、綺麗サッパリするのも一つの手段です。
ですが耐震性など、重要な柱でなければこのように思い出を引き継ぐのも良いものだと考えます。
この柱を加工した大工さんは既に引退されてしまったようです。
今後このような仕事ができる職人さんの数も減っていきますが、どうにか残していきたい手仕事の一つです。
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パッシブハウス体験しました 第5回国際パッシブハウスデー

パッシブハウス初体験

5回目となる国際パッシブハウスデーのイベントでパッシブハウスが公開されました。
パッシブハウスはドイツのパッシブハウスの厳しい基準をクリアした住宅です。
パッシブハウスジャパンさんの講習を受け、パッシブハウスの設計手法は理解しているつもりですが、恥ずかしながらパッシブハウスの性能は未体験。これじゃマズイでしょ!と思っていたので、またとない機会です。
週末、いばらきパッシブハウス、ちちぶパッシブハウスの見学に行ってきました。
厳しい基準をクリアするために同じような住宅になるのでは?と考えていたのですが、それは違いました。

訪ねてみると、敷地、建て主の趣味嗜好、に合った住宅でした。

いばらきパッシブハウス 株式会社島田材木店

いばらきパッシブハウスは郊外の住宅街に建てられています。西面以外は建物が密接しておらず、解放された恵まれた環境です。

外観内観ともスッキリしたデザイン、吹き抜けを利用したハンモック、広いデッキ等、楽しい暮らしぶりが想像できます。
竣工されてから7年ほどたっているようですが木部が良い雰囲気に育っていました。オリジナルキッチンの杉柾目、チークの床が素敵でした。メーカー建材や、プリントの木目では味わうことが出来ません。やはり天然素材は良いですね。
高性能の建物と自然素材の組み合わせはとても魅力的ですね。
興味のあった換気エアコンのシステムについても詳しく説明していただきました。
原理は一種換気のシステムに温度調整のシステムを付加する単純そうなものですが、ダクティング等、実物は大変そうでした。
現在の性能に満足されているようですが、さらに小さな改良をコツコツと積み重ねていらっしゃるのが印象的でした。

室内の温熱環境での注意点は、普通の家と比較してパッシブハウス級の性能になると加湿が重要になるとのことでした。

ちちぶパッシブハウス 高橋建築株式会社

ちちぶパッシブハウスは市街地から少しはなれた山里の中にありました。
ほぼ南面にむいた建物配置と、南面の大開口木製サッシ、日射取得が良さそうです。
なるほど、日本のパッシブハウスの中で一番暖かいと言われるわけです。当日、室内は暑いくらいで窓を開けていました。
室内は無垢の木がふんだんに使われ、大黒柱、オリジナルの造作建具が見事でした。
窓から見える山里の風景と室内がマッチしており、山里には繊細なデザインよりも、無垢の木が使われたおおらかなデザインが似合っています。
このことは建物見学希望者が絶え無い事が証明しているように思えます。建物性能もちろんですが、地域にあったデザインも人気の一つなのでしょう。

景色が千葉の夷隅の山里と似ているせいか、とても落ち着いた居心地でした。千葉よりも気温差が大きいので紅葉が綺麗そうです。

太陽に素直な設計が大切

パッシブハウスの重要なポイントは、太陽の動きに合わせ、素直に建物をデザインすることがです。
断熱や気密はお客様の暮らし方に合わせて調整することができますが、建物配置は途中から調整する事が困難です。
千葉は茨城、秩父と比較すると温暖な気候なのでパッシブハウスクラスの性能は需要が少くないと思いますが、太陽に素直な設計は必要です。
今後、千葉らしい住宅の性能も検討する必要があります。

設計時はシミュレーションを重ね、太陽に素直な設計を目指したいと思います。

最後になりますが、オープンハウスに協力してくださった皆様、お陰さまで貴重な体験ができました。ありがとうございました。

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室内の環境を測定する

計測してわかること

ビジネスの有名なフレームワークの一つにPDCAサイクルがあります。計画→実行→評価→改善→計画→と業務を改善していく手法です。

PDCAサイクルを建物の建設に当てはめてみると、設計・施工はPD、暮らし始めた状況を計測することがC、それに基づいて改善することがAになります。建物性能を改善するためにも、PDCAサイクルを回して改善していくことが大切だと考えています。

建物の使い勝手については人それぞれの感覚に寄るところが多いので計測が難しいですが、建物内の環境、室温・湿度については計測することができます。

このような理由があり、御引渡し前の建物に室温・湿度を測定記録する装置を設置させていただきました。
本来ならば建物の数ヶ所に設置するのが良いのですが、理由もあり(結構なお値段がしますので)1ヶ所だけ設置させていただきました。
測定データは次の設計に生かす事ができる貴重なものなので、御協力は大変有難いです。

 

具体的に伝えたい

今回は無断熱住宅をリフォームしたので室内の室温・湿度環境は劇的に改善しています。そのことをお伝えする時、暖かい家になりましたよ!では無く、一歩すすんで実際の状況をしっかりと把握し数値化してお伝えしたいと考えています。

室温・湿度を計測するもう一つの理由は、設計者として設計時に目指した数値目標を体感として覚えておきたいからです。

建物設計時はソフトを使用しながら数値の改善を目指すのですが、完成後、暮らし始めた家の中で、その数値がどの程度の温熱環境なのか体感することが大切だと思います。そのためにも完成後に室温・湿度を計測しています。

温熱ソフトを使った設計では数値を追い求めてしまいがちなのですが、この辺でいいでしょう みたいな丁度良い体感温度を見付けたいと思っています。

現在は本格的な冬の前なので外気温の変化はほとんどありませんが、一冬のデータを記録させていただきたいと思います。

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びおソーラー設計者のつどいin鎌倉 

どんな職業でもトップスターと呼ばれる人がいます。同じ仕事をしていて憧れるような人達です。住宅設計の中にもトップスターの建築家がいますが、堀部安嗣さんもその一人だと思います。

そんな建築家の堀部安嗣さんが設計した住宅が見学できると案内が届きました。滅多に無いチャンスです。スケジュールを調整して手の物語さん主催「びおソーラー設計者のつどいin鎌倉」に参加してきました。

シンプルな家形

外観はシンプルな切妻屋根の家形で周辺の戸建て住宅と比べると小ぶりに感じます。外壁はシンプルな板張りで派手さは全くありません。ですが軒先の見付を小さく収めていたり、開口部周りが一工夫されていて美しく見えます。

プランは4間角の真四角な外郭で、階高も低いので外観が小ぶりな印象が納得できます。小住宅に分類されると思います。

小住宅は階段の位置が全てを決めてしまうのですが、螺旋階段が絶妙な位置に計画され廊下が一切無いプランなので狭く感じません。

また、詳細は控えますがこの螺旋階段に仕掛けがありまして、堀部建築の荘厳な高い精神性を表現しているように感じました。

天井高は低いが心地良い

この住宅は天井の高さを低く押さえて設計されていました。天井が低いと狭苦しさを感じそうですが、それとは逆に心地良さを感じます。よく目にする住宅の広告では天井は高いほうが良い!みたいな潮流があります。高い天井高は解放感があり、その気持ち良さも解ります。ですが低い天井高の包まれるような居心地の良さはまた格別なんです。これは体験してみないと解りません。

暮らしも楽しそう

リビングはもちろんですが、キッチンが南に面していて窓から美しい景色が望めます。天板に小さな段差がついていたりと細かな工夫が沢山あり、暮らしが楽しめそうです。

堀部建築の特徴、建具等の細かい納まり、素材の選定は見事で、完成度の高さに言葉がでません。一つ一つの部材が美しいだけで無く、毎日の生活でその部材に触れる度に喜びを感じそうでした。

室内の温熱環境は?

この建物に引っ越す前、オーナーさんは無断熱の極寒の住宅に住まわれていたそう。そんな寒さに震えるオーナーさんを見て、堀部さんは暖かい家を設計してあげたいと思ったそうです。
そのためにびおソーラーで熱源を確保し、建物内部の各所にも空気の循環を促すような工夫が随所に見ることができました。オーナーさん曰く、2週間生活した室内の環境は快適だそうです。
夏場の日射遮蔽対策もしてあり、夏場の環境も快適そうに思えます。

引き渡しを終えた後も、幸せそうなオーナーさんと堀部氏の笑顔の会話が信頼関係が良好な事を物語っていました。

見学を終えて

 堀部建築は美しい小さな小箱のようでした。ですが、設計者として見学すると設計に対する情熱、手がけたであろう時間、を想像し圧倒されました。見学会後の講演会で今回のプランにたどり着くまでの苦労話を聞くこともできました。最近は温熱環境にも配慮をしていて日々進化されています。やはりトップランナーは日々の勉強を怠らないのですね。だからトップランナーなのです。

残念ながら住宅の見学会なので残念ながら写真は一切無しですが、堀部建築の余韻を味わいながら訪れた妙法寺の苔階段をポストします。この苔階段も踏むことを許されない荘厳さを感じました。

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