高断熱と暮らしのあいだ#3 どこに、なぜ、その窓があるのか

designPHによる南面開口部の日射取得解析。遮蔽マスクダイアグラムとシミュレーション結果の数値表示。

──「意味」で選ぶパッシブ設計の判断

パッシブハウス認定の基準値をクリア、UA値0.18。
──でも、それだけで“良い設計”と言えるのか?

高断熱高気密の住宅設計では、性能値が重要な判断軸になります。
実際、私たちもdesignPH/PHPPを使い、シミュレーションを重ね、PH基準をクリアします。
けれど、設計はもっと複雑で、もっと複雑な判断が必要とされます。
とくに都市型パッシブハウスでは、性能を満足する以外の要件が求められます。

都市型敷地でのパッシブハウスは、周囲建物の影響で建物配置に限界があり、南側の窓から日射取得するなど、“理想的なパッシブデザインの設計”が難しいことが多いです。

今回の敷地でも、冬の日射取得が非常に難しいことが事前に分かっていました。
そのため、「暖房需要の削減」ではなく、「暖房負荷の抑制」を目標としています。

そこで、私たちは外皮性能でのシミュレーションでは以下のような複数の方向からアプローチしました。

  • 建物形状の工夫
  • 外皮強化による改善
  • 窓の配置・サッシ性能の検討・ガラスの選択(ECLAZ)・防火設備または防火ガラスの選択
異なるサッシ仕様と配置による、暖房・冷房のエネルギー性能値(需要・負荷)の比較グラフ。PHJの基準値と照らして改善プロセスを可視化している。
サッシの種類・配置・取り付け位置の変更によって、冷暖房の「需要」「負荷」がどのように改善されたかを示した比較グラフです。

こちらのグラフは、上記の条件に対して、PHPPシミュレーションで得られた【暖房需要・暖房負荷・冷房需要・冷房負荷】の値を可視化したものです。
PHJが定める各性能項目の基準ラインを重ねて表示しており、どの段階でクリアできたのかを観ることができます。
「2070+吹抜910」で暖房需要と冷房負荷がやや残りますが、「佐藤の窓:スマートウィン(クリア)」にて暖房需要以外の基準を満たす結果となりました。やはり日射取得が厳しい敷地では暖房需要のクリアは難しいと考えて良いのでしょう。
最終的には「冷暖房のピーク負荷」でクリアする道を選びました。
このグラフは、単なる高性能窓の選定だけでなく、配置と取り付け方の影響も大きいことを裏付けています。
都市型敷地でのパッシブハウスは、周囲建物の影響で建物配置に限界があり、南側の窓から日射取得するなど、“理想的なパッシブデザインの設計”が難しいことが多いです。
「冷暖房負荷で突破する」ことは、都市型敷地でのパッシブハウスの一つの解決策になります。

日射取得が限られる都市型敷地において、どこに、どの程度の時間帯で日射が得られるのかは、パッシブハウス設計における重要な判断材料になります。

本プロジェクトでは、南面の開口部が日射取得の鍵を握っていました。そこで、designPHを用いてこの窓に対する日射遮蔽の解析(Shading analysis)を行い、シミュレーション結果を確認しました。以下は上記のグラフで検討したdesignPHの画面です。

この画面は、designPHで出力される「Shading mask diagram(遮蔽マスクダイアグラム)」です。
灰色の点が視界を遮る要素(隣家・庇など)、赤やオレンジの点が時間帯ごとの太陽高度と方向を示しており、冬季の日射角では多くの時間帯が遮蔽されていることが分かります。

数値的にも、冬季の日射取得量は256.6 → 実際取得は124.3kWh/m²(約48%)と、半分以上が周囲建物の影になっている状況でした。

このような状況下で、どの窓が有効に機能するのか/どの窓が意味を持たないのかを事前に把握することができ、「意味のある窓だけを残す」設計判断につながりました。

“この太陽の動きを、私たちはどこまで想像できるだろうか?”
それは、設計者の想像力を超えて、光の動きを可視化する──シミュレーションという“道具”の力なのです。

防火認定、非常用進入口、意匠との整合──
都市部の3階建て住宅には、サッシ1枚を選ぶにも多くの要件があります。

性能と法的要件のすべてをクリアするために、選択した窓1枚1枚に“意味”があります。

準防火地域の準耐火建築物である本計画では、防火サッシ+非常用進入口+性能を満たす防火サッシ、日射取得のためのスマートウィンなど、さまざまなサッシを検討しました。
結果として、3メーカーの製品を使い分けることになりました。

また、同一メーカーでも意匠と性能の優先順位のために異なっている納まりもあります。
これは、高断熱と暮らしのあいだ#2 で少しふれたハイサイドライトの件が関係しています。サッシ性能が想定値より低い可能性があり、取り付け位置を工夫することで少しでも数値を改善できるように設計段階で工夫しています。


また、これだけ複雑な組み合わせを確実に施工できたのは、大型パネル工法を採用したからです(この点は次回の記事で詳しく紹介します)。

窓の配置に「意図」があり、サッシの選定に「理由」がある。取り付け位置に「判断」がある。
それらすべてを、設計者は一つずつ、折り重ねるように選択していきます。

たとえ高性能住宅の基準をクリアしたとしても、それだけでは、どんな設計判断があったのかは伝わりません。

お客様に細かく説明することは少ないですが、時には“なぜそうしたか”を伝えることも大切だと思います。言葉にすれば、そこに「理由」が浮かび上がります。
「暮らし」をかたちづくる設計の裏方としての本質、数字の背後にあった“設計の理由”を少しでも共有できればと思います。

📝 この住宅の設計全体について詳しくはこちら
▶︎ 都市型パッシブハウス 設計事例ページへ
外皮性能・空調計画・素材選定・外構設計まで、詳細な解説を掲載しています。

朝日とともに目覚める家は、設計でつくれるか?

自然のリズムを住まいに取り込む、ということ

朝のやわらかな光で目覚めるとき、
あるいは夕暮れに、空がゆっくりと色を変える時間に、
ふと心がほどける瞬間があります。

住まいづくりでも、そんな自然のリズムを取り入れることができます。

けれど、ただ窓を設ければいい、ただ性能を高めればいい──
そんな単純な話ではありません。

どんな光を、どんなふうに迎えるか。
そのひとつひとつが、暮らしの豊かさを形づくっていきます。

朝と夕の光が、暮らしの質を支える理由

人間の体には「体内時計(サーカディアンリズム)」と呼ばれる仕組みが備わっています。
朝に光を感じることでリセットされ、一日のリズムを整えながら、
夜には自然と眠りに向かう流れをつくります。

スタンフォード大学の睡眠研究でも、朝と夜、それぞれの光環境が
心身のリズムに深く影響を与えることがわかっています。

けれど、心地よい目覚めや穏やかな眠りを育てるためには、
ただ光を浴びればよいわけではありません。

「どんな光を、どのタイミングで、どんなふうに取り込むか」。

その繊細な選択が、毎日の暮らしの質を静かに支えているのです。

パッシブデザインで性能と暮らしを両立させる設計

家づくりでは、自然のリズムを無理なく取り入れる工夫ができます。
たとえば、朝の光を取り込むために窓の配置を考えること。

しかし、単純に「東側に窓をつければよい」というわけではありません。
高断熱高気密住宅では、窓の種類や日射のコントロールが非常に重要です。
朝の光は、直射ではなく、やわらかく空間に拡がる間接光が心地よい目覚めを助けます。

パッシブデザイン無しで、建物性能を上げようとするとUA値のみを追求しがちです。
サッシの面積を小さくして数値を稼ごうとする傾向も見られますが、それでは本末転倒です。

確かに、東西の開口部を小さくすることは消費エネルギーを小さくするには有効です。
ですが、それだけでは暮らしが豊かにはなりません。

パッシブデザインによって各部の仕様を決め、
消費エネルギーを計算して比較することで、
東側に大きな開口を設けることも、一つの手段になると考えます。

設計段階では、こうした性能と暮らしのバランスを一つひとつ丁寧にすり合わせていきます。
敷地の特性、ご家族の暮らし方、求める光の質──
それらを静かに聞き取りながら、「その家だけの心地よい朝」をかたちにしていきます。

小さな習慣が、光と暮らしを育てる

設計だけでなく、暮らしの中にも、自然のリズムを整える小さな工夫を取り入れることができます。

  • 遮光カーテンを控えめにして、やわらかな朝の光を感じられるようにする
  • 朝起きたらカーテンを開け、自然光をしっかり取り込む
  • 朝の光の中で数分だけ深呼吸する時間をつくる

毎朝のこうした小さな習慣が、
体内リズムを整え、
心地よい目覚めとともに、一日のはじまりをやさしく支えてくれるのです。

性能だけではない、暮らしを包む設計へ

高断熱・高気密の技術に支えられた快適な性能と、
自然のリズムに寄り添う、やわらかな設計。

その両方を大切にした家づくりが、これからの暮らしにはきっと求められていくでしょう。

ただ性能を追いかけるだけでは得られない、
光や風と共に呼吸するような心地よさ。

幸設計スタジオでは、
そんな暮らしのリズムを大切にしながら、
一人ひとりに寄り添った住まいをご提案しています。

朝の光も、夕暮れの静けさも、
あなたの暮らしをそっと支える力になります。

まずは、どんな光と暮らしたいか──
一緒に想像してみませんか。


暮らしを包む設計だけでなく、
電磁波対策や生活環境全般のサポートも、
スタジオ・アース四街道として取り組んでいます。

光や風、そして見えない環境まで含めて、
あなたの健やかな毎日をそっと支えていきたいと考えています。

高断熱高気密住宅で快適な冬を過ごすための3つの設計ポイント

高断熱高気密住宅は、光熱費を抑えながら快適な室内環境を実現する住まいです。しかし、その性能を最大限に発揮するためには、設計段階での丁寧なシミュレーションが欠かせません。本記事では、シミュレーションを活用しながら理想の住まいを実現するための3つのポイントをご紹介します。

1.窓の選定は性能と景観のバランスが鍵

窓は住宅の中で最も熱が逃げやすい部分であり、その配置や性能が建物全体の快適性に大きな影響を与えます。加えて、窓は外の景色を取り込む役割もあるため、設計時に慎重な検討が求められます。

実例: シミュレーションで導く納得とは

提案した設計に対してクライアントからの追加希望も少なくありません。希望された追加窓についてシミュレーションを行ったところ、隣家の外壁しか見えず、明るさも期待できないだけではなく、全体性能も低下することが判明し、結果的に諦めるようなケースもあります。今までの住まいの経験から”この位置に窓が欲しい”と望まれるのは理解できますし、もし景観が良い窓でしたら性能よりも景観を優先する可能性もあります。ですが判断材料が無い説明よりも、シミュレーションでの比較により、納得した選択をすることが可能です。

2.千葉県特有の気候を考慮した設計

千葉県は比較的温暖な地域ですが、内陸部と沿岸部では気候条件に大きな差があります。この違いを考慮し、基本設計段階からシミュレーション時に適切な気象観測所データを用いることが、効率的で快適な住宅づくりの鍵となります。

千葉県の気候条件のポイント

  • 夏: 内陸部では年間で30℃を超える日が50日以上に及び、沿岸部では30日未満と大きな差があります。
  • 冬: 内陸部は最低気温0℃未満の日数が年間60日を超えるのに対し、沿岸部では6日程度と少ないです。
出典:銚子地方気象台HP 千葉県の気象特性

3.各部材のトレードオフを理解する

高断熱高気密住宅の設計では、サッシ性能と換気システムなど、それぞれの性能やコストのバランスを取ることが、全体性能を最適化するうえで重要です。

実例: サッシと換気システムの予算調整

事前の家づくりの勉強で色々と調べた結果、トリプルガラス+樹脂サッシを希望していたクライアントが来所されました。寒冷地ではトリプルガラス+樹脂サッシが絶対条件の可能性がありますが千葉県では状況が少し変わります。トリプルガラス+樹脂サッシ、3種換気の条件から、シミュレーションを繰り返し、ペアガラス+樹脂サッシへ変更、その差額で熱交換気への変更が可能になり、燃費が若干向上し、建物全体のコストパフォーマンスが向上する結果になったこともあります。

まとめ: 基本設計でもシミュレーションを活用する重要性

高断熱高気密住宅では、「たたき台」と呼ばれるような初期案は成り立ちません。性能を追求する住宅では、あらゆる選択肢がシミュレーションによって裏付けられたものでなければ、真の快適性や効率性を実現することは難しいからです。

基本設計の段階で、建物形状、方位、窓や断熱材、換気システムの選定など、一つひとつの要素をシミュレーションで検証しながら進めることで、住まい全体のバランスを最適化します。このプロセスを丁寧に行うことが、高断熱高気密住宅の成功を決定づけます。

設計者と十分に対話を重ね、生活スタイルや予算に応じた最適解を探るプロセスをぜひ大切にしてください。シミュレーション結果を共有しながら、一緒に理想の住まいを作り上げていきましょう。

「どのように選べば良いか」と迷う方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。設計段階での適切なサポートを通じて、快適で効率的な住まいづくりをお手伝いします。

補足: Q&A形式の記事の案内

「窓の配置や性能をどう選ぶべき?」「熱交換換気の導入コストは?」など、よくある疑問をまとめたQ&A記事も準備中です。

具体的なご質問があれば、お気軽にお問い合わせください。

私たちが考える、自然と共生する設計の基本

自然と共生する設計は、単に「エコ」や「環境にやさしい」という言葉だけでは語り尽くせません。
私たちは、自然エネルギーを最大限に活かし、住む人の快適さと建物の持続可能性を両立させることを目指しています。その中でも特に注目しているのが、「日射取得」 の工夫です。


建物を設計する際、まず重要になるのが、敷地の日影を考慮したシミュレーションです。
このプロセスでは、太陽の動きを観察し、日射の角度や季節ごとの変化を検討します。そして、太陽光が効率よく差し込む窓の位置を慎重に決定します。

たとえば、周囲を建物に囲まれた敷地では、日射が届くポイントが限られることがあります。このような場合、ピンポイントで「日射取得」を確保する工夫が求められます。窓を設置する壁面の位置が建物全体の性能を左右するため、シミュレーションの結果をもとに、最適な配置を導き出します。


窓には日射取得の役割だけでなく、建築基準法を満たすための採光や換気を確保するという重要な機能もあります。
そのため、窓の配置を考える際には、自然エネルギーの活用と法規上の要件を同時に満たすことが必要です。これを実現するためには、設計者の技術と工夫が求められます。


自然と共生する設計は、単なるデザインの工夫や高性能な設備に頼るだけではなく、精密なシミュレーションを活用した自然エネルギーの利用が鍵となります。
今回ご紹介した日射取得を意識した窓の配置は、その一つの具体例です。
建物が自然と調和することで、住む人にとって快適で、環境にも配慮した住まいが実現します。

敷地と環境を活かす建築デザイン: シミュレーションの力

建築デザインのプロセスでは、シミュレーションが理想の形を見つけるために重要な役割を果たします。
理想の形を実現するには、好みのスタイルや建築法規など、さまざまな要件があります。しかし、シミュレーションは自然環境を十分に活かすために欠かせないツールです。

例えば、あるプロジェクトでは、周囲を建物に囲まれた敷地が課題となりました。

そこで、日影シミュレーションを活用することで、採光を確保できる建物配置を見つけることができました。

このように、周辺環境の影響を把握するためには、シミュレーションが欠かせません。

建物の外皮性能(断熱材の厚さ)やUa値だけでは、燃費の良い建物は実現できません。
例えば、冬季に十分な太陽光を取り入れるための南向きの窓配置や、夏季の強い日射を遮る庇(シェーディング)の設計は、シミュレーションを通じた確認があって初めて適切に行えます。
パッシブハウスの設計では、断熱や気密などを重視した5つの基本原則があります。この5原則に加え、太陽光をどのように取り入れ、遮るかというバランスも重要なポイントです。

こうしたプロセスを経て、自然環境を最大限に活かした建物配置を実現しました。
シミュレーションは、理想のデザインを形作るための強力なサポートツールです。技術を活かして、より快適で持続可能な住まいを目指していきたいですね。

本記事では、シミュレーションの重要性について概要をお伝えしました。具体的な実例については、追記していく予定ですので、引き続きご覧いただければ幸いです。

— #建築デザイン #シミュレーションの力 #パッシブハウス

パッシブハウスジャパン全国大会2023:発表の舞台裏

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2023年11月16日に開催されたパッシブハウスジャパン全国大会2023で、実例報告として発表する機会をいただきました。壇上での発表は貴重な経験であり、今後同じような機会があるかどうかわからないため、特別な思い出となりました。

左から 池田組の池田さん 森代表 当日登壇したFabWorksの中さん 発表が終わって安堵する私

発表内容:NOIL新築工事の事例報告

発表では、現在進行中のプロジェクトNOIL新築工事についてご紹介しました。このプロジェクトは、ローエナジービルディング認定を目指す建築であり、私は解析チームの一員として、また池田組の池田さんは施工者代表として、二人で登壇しました。

発表当日の朝には、最新の現場写真への差し替えやDesignPHのリアル操作などもあり、緊張がピークに。しかし、出来栄えはともかく、無事に発表を終えることができました。

外部開口部の解析:高性能化への挑戦

このプロジェクトでは、外部開口部の性能と耐久性向上に力を入れました。

意匠設計→施工図作成→解析のフローを数回繰り返し、解析を重ねた結果、納得のいく仕様を実現しました。

外部開口部の解析では、Certified PH Consultantの高岡利香さんが多大な努力をしてくださいました。

また、外部開口部は山崎屋木工さんのキュレーショナー、木製サッシ+トリプルガラス仕様の高性能仕様となっています。ZEB認定の建物なのに、窓周辺に座ると何となく肌寒いということがあるのですが、本物件では快適に過ごすことが出来るはずです。

PHPPとDesignPHの活用

NOIL新築工事は非住宅の建物なのですがPHPP+DesingPHで性能を解析することが可能です。

DesignPHとは?

プレゼン中の画面に赤く塗られた建物が映っていましたが、これはDesingPHで解析した結果になります。赤く塗られた部分は断熱の外側になっていて、このデータをPHPPに読み込んで計算することができます。

PHPPのメリットと課題

PHPPは工法や建材を問わずに解析できる柔軟性が魅力です。悪い面は特に無いと思いますが、あえて言うならば国産ソフトと比較すると操作方法がアナログなことでしょうか。

厳しい環境下での現場進行状況

厳しい寒さと雪の中、また能登半島地震などありましたが、池田組さんの報告によると現場は着々と進行中とのこと。ホント、.雪国の方々の粘り強さには感服するばかりです。

厳しい環境下での現場進行状況

NOIL新築工事は、ローエナジービルディング(申請予定)を目指しており、工事の進行に合わせ、再解析等これから検討する要件が残っています。引き続きチームで力を合わせ、より良い結果を目指してコツコツと取り組んでいきたいと思います。

パッシブハウス設計のためのDesignPHとSketchUp活用ガイド

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1.Zoom勉強会でDesignPHの使用法を学ぶ

STAY HOME週間中、Passive House Japan(PHJ)のメンバー有志が主催するDesignPH勉強会に参加しました。私自身はDesignPHライセンス未所持ですが、導入を検討中のため見学させていただきました。

2. DesignPHとは?SketchUpでの3Dモデリングに便利なプラグイン

DesignPHSketchUpプラグインとして使用するソフトです。SketchUp+ DesignPHを使うことでパッシブハウスの設計を3D上(SketchUp)でモデリングできます。モデルを作成した後、そのデータをPHPP(パッシブハウス設計用のエネルギーバランスソフト)にエクスポートして、エネルギー設計を詳細に進めることができます。PHPPはExcelベースをデータをセルに入力する方式です。

※建物燃費ナビもPHPPがベースで、入力方法がCADベースになっています。このCAD機能をSketchUpに置き換えたものと考えると理解しやすいかもしれません。DesignPHは、PHPPのセルへの入力をSketchUp上で直感的に入力できるツールです。

ソフトの準備

※SketchUpはデスクトップ版のMake 2017、DesignPHはDemo版(2週間有効、機能制限有)を使っています。ソフトは実際に試してみることで理解が深まりますので、ぜひ試してみてください。

■SketchUp Make 2017 ダウンロードはこちらから https://www.sketchup.com/download/all(こちらからMake 2017を選択)

■DesignPH Demo版 ダウンロードはこちらから https://designph.org/DEMO_download(試用期間14日 機能制限アリ)

DesignPHのDemo版を使っていますので、機能が限定されています。今後、正規版を導入しましたら追記予定です。

3.DesignPHでのモデリングからPHPPへのエクスポートまでの方法

SketchUpでモデリング

サッシ開口部は四角の外形だけで大丈夫

まずはSketchUpで簡単な外観モデルを作成します。この時、あまり複雑な形状で無いほうが良いです。開口等もサッシ開口だけで十分です。他のCADからDXF出力した場合、余分な線を整理しておくと後々の作業が楽になります。建物の方位や開口部の位置を検討し、簡単な外観モデルを作成していきましょう

属性の割当て

簡単なサッシ開口の四角にワンクリックでサッシモデルを挿入できます

作成した外観モデルに壁、屋根、開口部ごとに属性を割当てます。この時、壁、屋根、開口部にワンクリックで属性を割り当てることができます。

※私はDemo版だったので属性をカスタマイズすることができませんでしたが 、Passivhaus Institutの認定済みコンポーネントを割り当てることができました。

窓についてはワンクリックで、サッシ枠とガラスが別々に表現されますボリューム作成段階ではサッシ開口のみで十分で、時間の短縮にもなるの便利な機能です。また庇などのサッシ開口部に影を落とす部位もモデル化できます

計算結果を見てみると庇などの端部からガラス中央にラインが見えます。これが計算部分ならば、屋根の厚み等は必要ないようです。まあ、これはこれで外壁面積等計算に影響しそうですが、難しいことは考えずに最後まで進んでみます。

建物の内部壁についてはモデル化する必要はありません。

暖房されていない部屋については、温度係数を入力するだけでモデル化できます。

※これは試すことができませんでした。

周辺環境の入力

DesignPHでは周囲の建物等、障害物からの影響も計算してくれます。なので、計画建物に影を落とす、周辺建物等もモデリングする必要があります。

Google Earthからおおよその地形モデルをインポートすることもできます。その後、DesignPHは計画建物への日影の影響も考慮しながら、日射取得熱等を計算してくれます。

※Demo版ではこれも試すことができませんでした。参加者の中には広範囲の地形モデルをインポートして山からの日影の影響を確かめている強者も…

※気候データについては、プラグインでデータが用意されています。ですが日本ではあまり細かい分類が無いようでした。またアメダスから気候データを読み込むこともできないようです。

4. エネルギー計算とPHPPへのエクスポート計算

外観モデルを完成させたら、エネルギー計算を実行、建物のエネルギー消費量を評価することができます。DesignPHによる計算はソフト内で行われていて、PHPPへの出力は必要ありません。結果はPHPPほど正確ではないと思いますが、この段階で簡単に数値を把握することができれば良いでしょう。なので計算結果が15 kWh / m2であっても、計画した建物がパッシブハウスレベルかの判断はできません。この次のステップでPHPPでの計算が必要になるからです。そのためにもこの段階では、さらに建物性能を高めておく必要があるかとおもいます。

DesignPH内で事前エネルギー計算を実行後、データを.pppファイルとしてエクスポート、PHPPに直接インポートできます。

※この作業もできませんでした。

5. DesignPHを使ってみた感想

※今回はDemo版での感想になります。

・使いやすさ
DesignPHは、SketchUpのプラグインとしてとても使いやすいと思います。

認定パッシブハウスを設計する時はDesignPHだけでは足りません。PHPPでの計算等、複雑な検討が沢山あります。ですが初期段階からパッシブハウスの設計に利用すれば、失敗が少なくなると思います。

・設計者へのおすすめ
若手設計者や学生も挑戦しやすく、パッシブハウス設計の基礎を理解しやすいです。温熱設計に興味をもったらSketchUp+ DesignPHにチャレンジしてみてもらいたいです。パッシブ設計に馴れていなくても、DesignPH内ならば手軽に結果をみることができます。未来の設計者がパッシブハウスへ興味をもってくれると良いなと思います。

・非住宅建物への応用可能性

住宅以外の建物、複雑な形状の建物等は評価するソフトが少ないのでDesignPHが有効かと思います。普通の住宅レベルならば、もちろん”建物燃費ナビ”が早くて有効です!