建築探訪:千葉県文化会館と千葉県立中央図書館
千葉県文化会館と千葉県立中央図書館を建築探訪してきました。建物は大高正人の設計。
隣接する二つの建物である千葉県文化会館と千葉県立美術館も合わせて設計されたようです。
近代モダン建築の名作:DOCOMOMO Japanに選定された図書館
千葉県立中央図書館はDOCOMOMO Japanに選定されている近代モダン建築の一つです。
千葉県立中央図書館はDOCOMOMO 096です。
カーテンウォールとワッフル状スラブの美しさ

この建物は地下2階・地上5階建てですが、隣の千葉県文化会館側からアプローチすると敷地に高低差があるため、2階建てに見えます。
丁寧に割り付けられたカーテンウォールが、繊細で美しい印象を与えます
深い軒の張り出しにより、カーテンウォールに陰影が映り、さらに美しく見えます。
PCa・PC工法とは? その斬新さと技術的特徴
持ち出しの梁端部を注意深く観察すると、プレキャスト工法で建設されていることに気が付きました。
エントランスの庇部分も、建物本体と同じワッフル状のスラブ材で構成されており、それがプレキャスト工法の手がかりとなります。
大高正人の設計とは知っていましたがまさかのプレキャスト工法。当時は目新しい工法だったに違い無いです。
PCa・PC工法とは何か?
工場で製作された柱・梁などのプレキャスト部材を、プレストレスにより一体化し建築物を構築する工法です。
柱梁接合部を場所打ちコンクリートで施工する場合や、柱を鉄筋コンクリート造にするなど、敷地や工期・コストなどの条件により様々なバリエーションがあります。
参照:株式会社建研HP
図書館内部の雰囲気と設備の更新
千葉県立中央図書館は、大高正人の設計によるDOCOMOMO選定の近代モダン建築。その隣にある 千葉県文化会館 も同じく大高正人が手掛けた名建築です。エントランスの荘厳な空間やコンクリートの力強い表現は必見。 [千葉県文化会館の建築探訪はこちら]
建物内部に入ってみると天井のワッフル状のスラブ材が目に飛び込んできます。
現場打ちのコンクリートと違いプレキャストのコンクリート表面は美しいです。
2階の閲覧室も落ち着いた雰囲気。
閲覧用の机や椅子も、建設当時からのものが使われており、当時の雰囲気を感じられます。
ですが設備更新が難しいようで後付けの配管類がいたるところに見えています。
照度も足りないようで照明も追加されていたり、検索用のPC周りも配管だらけ。当時は検索用のPCなどありませんから仕方がないですね。
近代モダン建築の保存と未来
近代モダン建築は、歴史的価値だけでなく、建築技術の発展の証としても重要です。特に千葉県立中央図書館と千葉県文化会館は、千葉の文化的景観を形成する「千葉文化の森」としての価値もあります。
しかし、設備の老朽化や耐震問題により、解体・建て替えの可能性が議論されています。建築の保存と活用のバランスを考えながら、どうすれば未来へ受け継げるのか、一緒に考えてみませんか?
プレキャスト工法がもたらす耐震の課題と保存の可能性
「千葉県立図書館基本構想案」p23より 平成24年に実施した改修計画事前調査の結果、耐震改修が技術的に難しい 問題を抱えていることが判明しており、他にも改修に伴う工事費の不経済性、建物の 老朽化やバリアフリー不足、書庫不足などの様々な問題点を考慮すると、建物自体の 建替えを最も現実的な選択肢として検討する段階にあると言えます。
さらに耐震診断で危険と判断された箇所は立ち入り禁止になっていました。
千葉県文化会館と千葉県立中央図書館は、同じく大高正人が設計した近代モダン建築です。両建築は一体的に計画され、それぞれ異なる魅力を持っています。
残念ながら、この建物の特徴となっているプレキャスト工法が耐震改修を難しくしているようです。
貴重な建築ですが設備の老朽化、耐震性からは目を背けることができません。
ですが、この建物は、やはり貴重な文化遺産です。保存されることが望まれます。
千葉県立中央図書館と千葉県文化会館を未来へ残すために
千葉県立中央図書館は DOCOMOMO Japan に選定された近代モダン建築であり、プレキャスト工法の先駆けとしても貴重な建物です。また、千葉県文化会館と共に「千葉文化の森」を形成する重要な建築群であり、一体的な保存が求められます。
千葉県立中央図書館は耐震改修が困難であるため、建て替えの可能性も議論されています。しかし、近代建築の歴史的価値や、プレキャスト工法の貴重な事例であることから、保存の可能性も模索されています。現在、千葉工業大学・藤木竜也准教授による『千葉県立中央図書館保存活用検討報告書』が発表されています。 詳細はこちらのBlogをご覧ください。 [千葉県立中央図書館保存活用検討報告書]
これらの建築が今後も大切にされるよう、関心を持ち続けることが大切です。 保存活動を支援する方法として、以下のようなアクションが考えられます。
- SNSで建築の魅力を発信する(#千葉文化の森 #近代モダン建築 などのハッシュタグを活用)
- 保存活動を行っている団体・大学の情報をシェアする
- 建築探訪や見学会に参加し、関心を持つ人を増やす
この文化的な財産を未来に残していくために、一緒に考えてみませんか?