Edogawa Passive House(Phius掲載プロジェクト)のArchitectクレジット確認依頼を行いました

江戸川パッシブハウス「Edogawa Passive House」(私が実施設計段階まで担当したパッシブハウス案件)が、Phius Passive Projects Design Competition 2025 における「International Recognition」カテゴリーの掲載プロジェクトとして紹介されました。

先日、Passive House Accelerator の掲載記事を通じて、このプロジェクトの Architect 表記が私の関与内容と異なる形で記載されていることを確認しました。

建築プロジェクトにおける設計者のクレジットは、関与の内容を正確に伝える上で大切な要素であると考えています。そのため現在、Phius に対して Architect 表記の確認を正式に依頼し、対応を待っている段階です。

本件については、今後の進展に応じて続報をお知らせいたします。

参考:Passive House Accelerator – PhiusCon 2025 掲載記事

https://passivehouseaccelerator.com/articles/phiuscon-2025-building-a-culture-of-purpose

天井を見上げて、土と電気の結び目を探す―― オールアースパウダーDIYの記録

先月、国分寺にある「スタジオ・アース」の佐々木さんが主宰するワークショップに参加しました。テーマは、オールアースパウダーを使った塗り壁の施工でした。

テクスチャ
オールアースパウダーの仕上がり。鏝の動きが、そのまま壁の表情として残る。

建築士という仕事柄、現場ではどうしても「監理する側」に立つことが多くなります。
工程を確認し、精度を見て、判断を下す立場です。

けれどこの日は、そうした役割をいったん脇に置いて、
一人の参加者として、土に触れ、手を動かす時間を過ごしました。

数値も図面もありません。
あるのは、材料の重さと、身体の動きだけ。
その単純な関係の中に、住まいと身体を考えるヒントが、
静かに浮かび上がってくるような気がしました。

はじめて
初めてとは思えない手つきで塗りまくる参加者の中、恐る恐る塗る私

ワークショップには女性の参加者も多く、現場は自然と役割分担が生まれていました。
壁の仕上げは女性陣、天井の施工は主に男性陣。

私は迷わず天井を引き受けました。

正直に言えば、初めてのDIYで天井を塗り続ける作業は、なかなか楽ではありません。
腕はすぐに重くなり、首にもじわじわと負担がかかってきます。

それでも、天井に鏝で材料を運び、身体全体でそれを伸ばしていくうちに、
材料の伸びと、自分の動きが、ふと同じになる瞬間がありました。そのときは、理由もなく、ただ気持ちがよかったんです。

天井施工中
天井に鏝で材料を運び、身体全体で伸ばしていく。翌日は筋肉痛に!

その感覚を境に、周囲の音が少し遠のき、時間の流れも曖昧になっていきました。
目の前の天井と、手の中の鏝だけが残るような感覚です。

住まい手が自ら手を動かすDIYには、こうした没入の時間が、たしかにあるのだと思います。

攪拌体験
材料づくりも、全員で体験する。ここから、すべての工程が始まる。

今回使用したオールアースパウダーは、素材としてもとても興味深いものでした。
主材は、メソポア構造をもつ珪藻土です。

高性能住宅の実務では、
「珪藻土はそれなりの調湿材で、過度な期待はしない」
という認識が一般的だと思います。

実験 after
原料となった珪藻土入り(メソポア構造)の水槽は湿度が下がっている

けれど、この素材は、その前提を少しずらしてくるように感じました。

印象的だったのは、組成の潔さです。
多くの塗り壁材に含まれるエマルション樹脂(化学接着剤)が使われていません。

メソポア珪藻土、白土、でんぷん、そして導電繊維のサンダーロン。
それだけです。

樹脂を含まないから、素材は呼吸を止めません。
役目を終えれば、土に還る。
電位を逃がし、湿気を受け止め、そして自然に戻っていく。

とても素直で、良い素材だとと感じました。

今回のワークショップでは、施工の前後で室内の電場測定も行われていました。
スタジオアースではおなじみの工程。

壁や天井にオールアースパウダーを塗る前の状態と、塗り終えたあとの状態。測定器の数値には、はっきりとした違いが現れていました。

電気は目に見えません。
電磁波も、空気のように、そこに「ある」ものです。
ふだん意識することなく暮らしているけれど、確かに空間の中に存在しています。

その変化が、数値として示されると、環境そのものが変わっていることを、実感として受け取ることができます。

導電繊維サンダーロンを含むオールアースパウダーは、壁内に滞留する電位を逃がし、電場を整える役割を果たします。

それは単なる塗り壁というより、空間の性質をそっと調律する層のような存在だと感じました。

素材を選ぶことは、空気を選ぶことでもあり、その場所で過ごす身体の環境を選ぶことでもあります。そのことを、数値と体感の両方で確かめられた一日でした。

これまで自宅改修では、EP(エマルションペイント)やタナクリームなども使ってきました。
それぞれに良さはありますが、電場への配慮と、高い調湿性能を同時に満たす素材には、
正直なところ、あまり出会えていなかったように思います。

オールアースパウダーの大きな利点は、既存のビニールクロス下地を活かし、その上から施工できる点にあります(もちろん、適切な下地処理は前提ですが)。

既存壁を壊して廃棄物を出すのではなく、今の暮らしを包む薄い膜をそっと貼り替える。この軽やかさは、これからの既存住宅改修において、なかなか大きな意味を持つのではないでしょうか。

このブログではこれまで、睡眠や室内環境を、設計や数値の視点から整理してきました。
今回の記事は、そこから少し離れ、身体がどう感じたか、という地点からの記録になります。

私は現在、設計事務所としての活動と並行して、「スタジオアース四街道」としても動き始めています。

今後は補助金も活用し、この拠点そのものをオールアースパウダーで施工していく予定です。
数値による測定と、身体感覚の両面から、空気や場の変化を確かめていきたいと考えています。

施工が整った際には、電磁波や素材の話に限らず、住まいと身体の関係について、静かに話せる場として開いていけたらと思っています。

完成記念撮影
施工完了後の記念撮影。現場には、静かな達成感が!

睡眠を支える「寝室の環境設計」 ――睡眠・環境・住まいをひとつの視点で読む03

第1部では「考え方」を、
第2部では「深部体温と自律神経」の仕組みを整理しました。

最後となる第3部では、
その身体のメカニズムを、住まいからどう支えるか
設計の視点で静かに整理していきます。

血液データや睡眠ログを観察して感じたのは、
寝室は単に眠るための場所ではなく、
身体の仕組みや細胞のリズムを翌日に向けて“整え直す場所”
だということでした。


睡眠のスイッチを入れる最大の条件は、
深部体温(脳や内臓の温度)が静かに下降していくことです。

室温が乱高下すると、
脳は体温調節に追われ、この自然な下降が妨げられます。

身体へのはたらき
安定した室温は、自律神経の負担を減らし、
入眠をスムーズにします。

設計のポイント
夏は26℃前後、冬は18〜20℃をひとつの目安に、
夜間の温度変動をできるだけ小さくすること。
高断熱・高気密の住まいが有利なのは、
この「温度の静けさ」をつくりやすいからです。


湿度は、呼吸器の粘膜や皮膚感覚に直結します。

寝室が乾燥していると、
鼻や喉にわずかな違和感が生まれ、
それが微細な覚醒となって眠りを浅くします。

身体へのはたらき
適切な湿度は粘膜を保護し、
中途覚醒を起こしにくくします。

設計のポイント
冬は40〜60%を目安に。
加湿器が効くかどうかは、
実は「家の気密性能」に大きく左右されます。


光は、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌をコントロールする強力なスイッチです 。

身体へのはたらき
夜に強い光、とくに青色成分の多い光を浴びると、
脳は昼間だと錯覚し、修復のスイッチが入りにくくなります。

設計のポイント
就寝1時間前からは、
4000K以下の暖色系照明を使い、
間接照明で空間全体を包むように整えます。


寝室は閉め切ることが多いため、
家族の呼吸によって二酸化炭素(CO₂)濃度が家の中で最も上がりやすい場所です 。

身体へのはたらき
CO₂が1500ppmを超えると眠りが浅くなり、
2000ppmを超えると起床時の頭重感や倦怠感に直結します 。

設計のポイント
計画換気を正しく機能させるためには、
気密性能が欠かせません。
目安として、1000ppm以下を保てると、
朝の感覚が変わってきます。


耳から入る刺激は、たとえ眠っていても脳に届き、交感神経のスイッチを入れてしまいます 。

身体へのはたらき
はっきり聞こえる物音よりも、換気扇や家電、外の道路から響く「低周波」のノイズが、無意識の緊張を生みます 。

設計のポイント
高性能住宅は遮音性が高い一方、内部の静けさが上がる分、
微細な音が気になりやすくなります 。
寝室を道路や騒音源から離す配置計画は、
とても重要な「音の設計」です。


電磁波への感受性は人それぞれですが、自律神経(HRV:心拍変動)に影響を与えるケースを私は測定士として見てきました 。

身体へのはたらき
睡眠中に強い電磁波にさらされると、身体の修復に集中すべきエネルギーが阻害される可能性があります 。

設計のポイント
ゼロを目指す必要はありません。
EMFA(電磁波測定士協会)が推奨する “25 V/m 2.5 mG ” 基準以下を目指します。
「枕元から余分な配線を取り除く」といった、現実的な距離感で整えることが大切です。


家づくりは今、単なる性能競争から、
「そこに住む人の身体の仕組みや回復のリズムを、どう支えるか」
という段階へ進んでいます。

温度、湿度、光、空気、音、電磁波。
これらはすべて、あなたの細胞のリズムや自律神経とつながっています。

住まいという「器」を整え、
そこに日々の習慣を重ねることで、
身体は本来の回復力を発揮し始めます 。

第1部から第3部を通じてお伝えしたかったのは、家づくりは
健康と静けさを取り戻すための、ホリスティックな営み
だということです。
この記事が、あなたの暮らしと身体を見つめ直すきっかけになれば幸いです。

高気密高断熱の家は、睡眠の質を本当に上げるのか? ――睡眠・環境・住まいをひとつの視点で読む02

最近、建築業界でも
「高断熱・高気密の家は健康にいい」
「睡眠が良くなる」
という言葉を耳にすることが増えてきました。

設計の現場に立ち、自分自身の身体データも観察している立場から見ると、
この言葉は半分は正しく、半分は少し足りないと感じています。

数値としての「性能」の裏側には、
もっと静かで、切実な身体の仕組みがあるからです。

この記事では、
睡眠科学・設計実務・8weeks.aiでの観察
この3つの視点から、その関係を整理してみたいと思います。


医学的に見て、深い眠りを支えるためには、
家の性能以前に、次の6つの要素が整っている必要があります。

  • 温度(深部体温の下降)
     眠りにつく際、脳や内臓の温度がゆっくり下がることが重要です。
     室温の乱高下は、この自然な下降を妨げ、眠りを浅くします。
  • 湿度(40〜60%)
     乾燥は粘膜を刺激して中途覚醒を招き、
     過湿は体温調整を難しくします。
  • 光(メラトニンの制御)
     特に夜の強い白色光は、睡眠ホルモンの分泌を抑えてしまいます。
  • 音(交感神経への刺激)
     目が覚めるほどでなくても、
     小さな音が「無意識の緊張」を生むことがあります。
  • 空気質(CO₂濃度)
     寝室のCO₂濃度が高くなると、
     翌朝のだるさとして体感されやすいと言われています。
  • 電磁波(EMF)
    EMF(電磁波)の感受性は個人差がありますが、
    敏感な人は寝つきやHRVに影響が出ることがあります。

建築の視点で言えば、
高性能住宅とは、これら6つの因子を
安定してコントロールするための「器」です。

高断熱・高気密であれば、
夜間の温度変化を1〜2℃以内に抑えやすくなり、
自律神経が休まりやすい「温度の静けさ」が生まれます。

また、気密が確保されていれば、
計画換気が意図通りに機能し、
寝室のCO₂濃度を抑えたり、外部の騒音を軽減することも可能になります。


ここが最も大切な点です。

たとえ高性能な家に住んでいても、
暮らし方が乱れていれば、睡眠は簡単に崩れます。

  • 寝る直前までスマホを見る
  • アルコールやカフェインの摂取タイミング
  • 日中の活動量が極端に少ない

睡眠は、
家(器) × 身体(状態) × 生活(習慣)
この掛け算で成り立っています。

家はあくまで、
「眠りやすい土俵」を整える存在なのだと思います。


私は最近、8weeks.aiを使い、
血液データ(栄養・代謝)と、
日々のヘルスケアデータ(睡眠・心拍変動・歩数)を突き合わせて観察しています。

そこで見えてきたのは、次のようなことでした。

  • 身体の状態が可視化されると、住まいの役割がはっきり見える
  • 回復が必要なときほど、温度や空気の安定が効いてくる
  • 内側(栄養)と外側(環境)が揃って、はじめて睡眠が深まる

これまで私は、UA値という数値を追ってきました。
今はそこに、
「この性能が、住む人の細胞のリズムをどう支えるか」
という視点が重なっています。

8weeks.aiでの観察は、
設計士としての専門性と、
一人の人間としての身体感覚をつなぐ“鏡”のような存在になっています。

暮らしと身体を整える設計――睡眠・環境・住まいをひとつの視点で読む01

高断熱・高気密、パッシブデザイン、電磁波対策……
設計の世界では「住まいの性能」を語る場面が増えてきました。

一方で、この数年で気づいたことがあります。

性能がどれだけ整っていても、
住む人の「身体」や「生活リズム」が整っていなければ
本当の快適さは生まれない。

そしてその逆もまた然りで、
身体が乱れると、性能の整った家でも快適とは感じられない。

私は最近、睡眠・自律神経・生活のログを取りつつ、
自分自身の暮らしを「設計する」ように見つめ直しています。
すると、家づくりと身体の関係が思いのほか深いことに気づきました。

この記事は、
住まい × 身体 × 環境 の関係を、実体験と専門知識からまとめたものです。

最近、私は睡眠データを継続的に観察しています。
睡眠不足が続くと
・朝の気分
・判断力
・身体の温度調整
・ストレス耐性
のすべてが低下していくのをはっきりと感じます。

そして気づいたのは、
睡眠は、住まいの環境の影響をいちばん受けるという事実。

例えば:

  • 寝室が乾燥するとHRV(自律神経)が下がる
  • 早朝の冷え込みが強いと睡眠が浅くなる
  • 寝る前の照明が明るいと入眠が遅れる
  • 翌日の集中力に“昨夜の空気質”が効いてくる

性能の良い家は、この「睡眠条件」を整えやすい。

逆に言えば、睡眠の質が安定し始めた時、その家の“本当の力”を感じられるのです。

家づくりの話では、快適性=温度・湿度
になりがちです。

しかし、実際にはもっと深い。

自律神経が整いやすい住まい という視点が、
今後とても重要になると感じています。

具体的には:

● ① 温湿度の揺らぎを最小にする

急激な温度差は、交感神経を刺激します。
高断熱高気密が求められる理由は、単に省エネではなく
身体へのストレスを減らすためでもある。

● ② 朝の光の入り方を整える

睡眠ホルモンの切り替えは日射が鍵。
パッシブデザインの思想と、自律神経のリズムは密接です。

● ③ 夜の照明を落とす仕組み

LEDの色温度、間接照明の配置は、
“副交感神経を邪魔しない空間”をつくります。

● ④ 寝室の電磁波環境を整える

EMF(電磁波)の感受性は個人差がありますが、
敏感な人は寝つきやHRVに影響が出ることがある。
測定士としても、ここの調整は“住まいの最終仕上げ”と考えています。

この4つは、
家と身体を切り離さずに設計するための最低限の視点です。

住まいを整えることは、実は身体を整えることと同時進行です。

たとえば私は最近、次の3つを小さな習慣として固定しました。

● ① 寝る1時間前に部屋の照明を落とす

● ② 朝のルーティンを一定に保つ

● ③ 夜はスマホ・PCをできるだけ遠ざける

これだけで、

  • 睡眠
  • 気分
  • 朝の活力
  • 判断の静けさ

が驚くほど変わりました。

この「生活の整い」が起きると、家そのものの魅力が変わって見えます。

住まいは“箱”ではなく、
暮らす人のリズムとともに呼吸する存在になる。

私はこれを“暮らし方の設計” と呼んでいます。

建築の世界は、これまで性能や数値が中心でした。

しかしこれからは、身体・暮らし・住まい を一体で考える
“ホリスティックな設計” が求められると感じています。

その理由は明確です。

● 住む人の体質や生活リズムは千差万別

● 睡眠・自律神経が家の快適性を左右する

● 電磁波・空気質など「見えない性能」が重要

● 数字より“暮らしの手ざわり”が幸福を決める

建築と医学は少しずつ近づいています。
8weeks.aiのようなヘルスケア解析ツールは、設計の世界でも活きてくると感じています。

家は「性能」ではなく
そこに暮らす人の身体をどう支えるか
という視点で設計される時代に向かっています。

私は、性能を追求する設計の世界に長くいましたが、最近は“暮らしの静けさ”や“身体の声”を
丁寧に観察する時間が増えました。

すると、家という存在が以前よりずっと立体的に、人に寄り添うものとして見えてきました。

性能 × 身体 × 暮らし

この三つを同じラインで扱うことが、
これからの家づくりの本質になる。

そんな実感が、いまの私の中に静かに育ちつつあります。

暮らしを整えることは、家の未来を整えることでもあります。

これから、この領域について
少しずつBlogでお話していけたらと思っています。

高断熱と暮らしのあいだ#3 どこに、なぜ、その窓があるのか

designPHによる南面開口部の日射取得解析。遮蔽マスクダイアグラムとシミュレーション結果の数値表示。

──「意味」で選ぶパッシブ設計の判断

パッシブハウス認定の基準値をクリア、UA値0.18。
──でも、それだけで“良い設計”と言えるのか?

高断熱高気密の住宅設計では、性能値が重要な判断軸になります。
実際、私たちもdesignPH/PHPPを使い、シミュレーションを重ね、PH基準をクリアします。
けれど、設計はもっと複雑で、もっと複雑な判断が必要とされます。
とくに都市型パッシブハウスでは、性能を満足する以外の要件が求められます。

都市型敷地でのパッシブハウスは、周囲建物の影響で建物配置に限界があり、南側の窓から日射取得するなど、“理想的なパッシブデザインの設計”が難しいことが多いです。

今回の敷地でも、冬の日射取得が非常に難しいことが事前に分かっていました。
そのため、「暖房需要の削減」ではなく、「暖房負荷の抑制」を目標としています。

そこで、私たちは外皮性能でのシミュレーションでは以下のような複数の方向からアプローチしました。

  • 建物形状の工夫
  • 外皮強化による改善
  • 窓の配置・サッシ性能の検討・ガラスの選択(ECLAZ)・防火設備または防火ガラスの選択
異なるサッシ仕様と配置による、暖房・冷房のエネルギー性能値(需要・負荷)の比較グラフ。PHJの基準値と照らして改善プロセスを可視化している。
サッシの種類・配置・取り付け位置の変更によって、冷暖房の「需要」「負荷」がどのように改善されたかを示した比較グラフです。

こちらのグラフは、上記の条件に対して、PHPPシミュレーションで得られた【暖房需要・暖房負荷・冷房需要・冷房負荷】の値を可視化したものです。
PHJが定める各性能項目の基準ラインを重ねて表示しており、どの段階でクリアできたのかを観ることができます。
「2070+吹抜910」で暖房需要と冷房負荷がやや残りますが、「佐藤の窓:スマートウィン(クリア)」にて暖房需要以外の基準を満たす結果となりました。やはり日射取得が厳しい敷地では暖房需要のクリアは難しいと考えて良いのでしょう。
最終的には「冷暖房のピーク負荷」でクリアする道を選びました。
このグラフは、単なる高性能窓の選定だけでなく、配置と取り付け方の影響も大きいことを裏付けています。
都市型敷地でのパッシブハウスは、周囲建物の影響で建物配置に限界があり、南側の窓から日射取得するなど、“理想的なパッシブデザインの設計”が難しいことが多いです。
「冷暖房負荷で突破する」ことは、都市型敷地でのパッシブハウスの一つの解決策になります。

日射取得が限られる都市型敷地において、どこに、どの程度の時間帯で日射が得られるのかは、パッシブハウス設計における重要な判断材料になります。

本プロジェクトでは、南面の開口部が日射取得の鍵を握っていました。そこで、designPHを用いてこの窓に対する日射遮蔽の解析(Shading analysis)を行い、シミュレーション結果を確認しました。以下は上記のグラフで検討したdesignPHの画面です。

この画面は、designPHで出力される「Shading mask diagram(遮蔽マスクダイアグラム)」です。
灰色の点が視界を遮る要素(隣家・庇など)、赤やオレンジの点が時間帯ごとの太陽高度と方向を示しており、冬季の日射角では多くの時間帯が遮蔽されていることが分かります。

数値的にも、冬季の日射取得量は256.6 → 実際取得は124.3kWh/m²(約48%)と、半分以上が周囲建物の影になっている状況でした。

このような状況下で、どの窓が有効に機能するのか/どの窓が意味を持たないのかを事前に把握することができ、「意味のある窓だけを残す」設計判断につながりました。

“この太陽の動きを、私たちはどこまで想像できるだろうか?”
それは、設計者の想像力を超えて、光の動きを可視化する──シミュレーションという“道具”の力なのです。

防火認定、非常用進入口、意匠との整合──
都市部の3階建て住宅には、サッシ1枚を選ぶにも多くの要件があります。

性能と法的要件のすべてをクリアするために、選択した窓1枚1枚に“意味”があります。

準防火地域の準耐火建築物である本計画では、防火サッシ+非常用進入口+性能を満たす防火サッシ、日射取得のためのスマートウィンなど、さまざまなサッシを検討しました。
結果として、3メーカーの製品を使い分けることになりました。

また、同一メーカーでも意匠と性能の優先順位のために異なっている納まりもあります。
これは、高断熱と暮らしのあいだ#2 で少しふれたハイサイドライトの件が関係しています。サッシ性能が想定値より低い可能性があり、取り付け位置を工夫することで少しでも数値を改善できるように設計段階で工夫しています。


また、これだけ複雑な組み合わせを確実に施工できたのは、大型パネル工法を採用したからです(この点は次回の記事で詳しく紹介します)。

窓の配置に「意図」があり、サッシの選定に「理由」がある。取り付け位置に「判断」がある。
それらすべてを、設計者は一つずつ、折り重ねるように選択していきます。

たとえ高性能住宅の基準をクリアしたとしても、それだけでは、どんな設計判断があったのかは伝わりません。

お客様に細かく説明することは少ないですが、時には“なぜそうしたか”を伝えることも大切だと思います。言葉にすれば、そこに「理由」が浮かび上がります。
「暮らし」をかたちづくる設計の裏方としての本質、数字の背後にあった“設計の理由”を少しでも共有できればと思います。

📝 この住宅の設計全体について詳しくはこちら
▶︎ 都市型パッシブハウス 設計事例ページへ
外皮性能・空調計画・素材選定・外構設計まで、詳細な解説を掲載しています。

「乾いた空気」とは何か──高断熱住宅と室内空気質を見つめ直す

先日、バウビオロギー研究会の定例セミナーに参加しました。
テーマは『高断熱住宅における冬季の低湿度の実態と室内空気質について』。講師は三田村輝章先生。
高断熱・高気密住宅の設計では空調換気設備がとても重要になり、つねづね関心のあったテーマでした。

高性能住宅はしばしば「冬の過乾燥が問題だ」と言われます。
けれども実際に住んでみて「乾いている」と感じる空気とは、どういうものなのでしょうか?
今回のセミナーは、その問いを再認識する内容でした。

実測と数値から見た乾燥の実態

まずはセミナーの内容を、簡単にまとめます。

従来の研究によると、北日本や東日本では「乾燥を訴える住まい手」が多い傾向があります。
これは地域の気候だけでなく、室温の高さや暖房の種類なども関係していると考えられます。

住宅における湿度の適性範囲は以下のように提示されました:

  • 相対湿度:40〜60%
  • 絶対湿度:7.6g/kg以上が目安
     ※ただし、結露のリスクを考慮する必要あり

また、人は湿度に対しては鈍感だという指摘も印象的でした。
「乾燥している」と感じるのは、単に数値によるものではなく、においや静電気といった感覚的な要因も関係しているのではないかという内容でした。

高性能住宅における実測結果も4件、紹介されました。
パッシブハウスを含んだ高性能住宅において、使われている暖房設備や換気設備、加湿器や空気清浄器など暮らし方の違いによって、室内空気質には明確な差が出ていました。
高性能住宅における“暮らし方”と“空気の質”の関係性は、今後も注目していきたいテーマだと感じます。

乾燥とは「体感」なのか?──感覚と言葉のズレ

このように乾燥の数値がある一方で、実際に住まい手が「乾燥している」と感じるのは、数値だけではとらえられない感覚的な一面があるように思えます。
人間は、温度の変化には敏感でも、湿度に対しては鈍感です。
ですから、私たちは、「埃っぽい」「静電気が起きやすい」といった、不快な違和感から、私たちは自然と「乾燥している空気」と判断している可能性がある──という指摘もありました。
その“言語化されない感覚”をあえて言葉にしてみるという試みが、今回のセミナーの中で印象的な提案でした。

電磁波測定士の視点から──静電気と空気質

セミナーには、EMFA(日本電磁波協会)のメンバーも参加されており、「静電気を感じる空気は、たいてい乾燥している」という意見が紹介されました。

すると、講師の三田村先生から、「静電気って、測れるものなんですか? 測り方があればぜひ教えてください」という逆質問が投げかけられ、ちょっとした緊張感と好奇心が。

空気の帯電性──たとえば「静電気が起きると埃が引き寄せられる」といった感覚──を、もし静電気の測定によって“見える化”できれば、新たな空気質のとらえ方が見えてくるかもしれません。

日常的な感覚と、新たな測定技術。そのあいだに橋をかけるような対話が生まれたことは、とても印象深い瞬間でした。

静電気で困っているゴールデンレトリーバーのイラスト。乾燥した空気を表現するために、毛が逆立ち、困った表情をしている。
「乾いた空気って、こういう感じ…?」 セミナーで出た「静電気を帯びた空気」という話を聞きながら、ふと浮かんだイメージ。 犬だって困ってるかもしれません

実例から学ぶ:高橋建築さんのパッシブハウス

セミナーでは、実際に測定された住宅の実例も紹介されました。
特に印象的だったのは、いずれも高橋建築さんが手がけたパッシブハウス2件です。

いずれも室内空気質の測定に協力されており、高気密・高断熱性能に加えて、実測による検証を大切にされていることが伝わってきました。
こうした「つくる → 測る →見直す」という姿勢は、地域工務店の可能性と誠実さを感じさせます。

また、床下にシリカゲルを敷き詰めた住宅では、自然素材による調湿効果が数値としても現れており、工法や素材の選定、暮らし方の影響力をあらためて実感しました。

空気の“質”と設計のこれから

これからの住宅設計において、「空気の質」はますます重要なテーマになります。そしてその“質”は、単なる物理的な数値だけでは語りきれないことがわかりました。

数値で表せない「体感」や「違和感」を、どう捉えていくか。
その感覚と言葉を設計や測定に橋渡ししていくことが、より深く豊かな住環境づくりにつながるのではないかと感じました。

今後も、こうした実測データや他分野にまたがる議論に注目しながら、私自身の設計実務にも活かしていきたいと思います。

高断熱と暮らしのあいだ#2都市型パッシブハウスのよりどころ

DesighPH01

東京の住宅地、北側道路に面した敷地は、東と南に3階建、西に2階建の隣家が迫り、人が通るのがやっとという密集地。
建蔽率60%、第3種高度地区、準防火地域。クライアントの要望を満たすには3階建とする必要があり、準耐火建築物が求められる。

そんな敷地条件を目の前に考えていました。

──この場所に、果たして“パッシブハウス”は成立するのだろうか?

パッシブハウスと高断熱高気密住宅、その違いって?

パッシブハウスとは、パッシブハウス5原則に基づき設計・施工されパッシブハウス認定を受けた建物です。日本ではPHJPHIJPが認定機関となっています。

ですから高断熱高気密住宅の外皮性能を強化し、空調設備で室温・湿度調整するだけでは正式のパッシブハウスではないのです。パッシブデザインに基づき適切な日射取得と日射遮蔽の調整を行い、適切な空調設計、熱橋計算に基づいた詳細設計、そしてそれを実現する施工技術が必要となります。日本での基準には必要とされていない、気密測定はもちろん、空調の風量策定も行い、パッシブハウス認定基準値を満足させなくてはなりません。

当然ながらパッシブハウス認定要件以外にも建築設計として、温熱性能の追求だけでなく、耐震性能、空間構成、素材、外構を含めた沢山の要件を一つずつ解決していく地道な作業の繰り返しになります。

今回は都市型パッシブハウス認定を目指した設計となるので要件が多いですが、規模にかかわらず同じようなステップで進みます。以下、制約に向き合いなどのように設計作業を行ってきたのか振りかえります。


※PHJ、PHIJPの違い:どちらもパッシブハウス認定が可能です。基準の違いについては両者で認定を受けた秩父の高橋建築㈱さんの投稿が参考になります 
リンクはこちら:PHIUS:WUFIPassive  PHI:PHPP 比較

日射取得が難しい

パッシブハウスの認定において、日射取得は極めて重要な要件になります。そのため、南面に正対させるために、建物の配置自体を敷地に対して方位を振ることもあります。

しかし本プロジェクトでは、南面・東面には木造3階建てが迫り、西側は唯一の2階建。なので西側から日射取得・採光を取る計画でスタートしました。
まずは敷地の日射シミュレーションを実施し、日射が確保できる窓位置を丁寧に探ることから始まりました。

屋根・壁・基礎──断熱性能と防火性能の両立

平面計画、断面計画、断熱構成を決定するために繰り返しシミュレーションを行い、暖房・冷房のバランスをとる設計が必要になります。その時に使用するシミュレーションソフトがPHPPです。パッシブハウス認定のためには、単純に断熱材を厚くすれば良いわけではなく、パッシブハウス5原則に基づき、全てがバランスよくなるよう設計を行います。

さらに要望により、木製と金属の外壁を採用するためには、防火設計上の制限をクリアする必要があり、防火構造をどのようにクリアするかも重要な要件です。隣地が迫る環境で確実に施工できるかも重要な要件になります。

高度斜線・道路斜線と3階建の両立

当初は西側からの日射取得を検討していましたが、PHPPの入力結果により断念です。間違った基本方針では詳細設計での工夫でもリカバリーが難しくなります。改めて、西側からの日射取得は難しいことを実感しました。

日射シミュレーションの結果、南側アパート庇の影を避けたごくわずかな壁面から、日射取得が可能であることがわかりました。結果、3階南面の限られた壁面から採光・日射取得を行い、吹き抜け空間を通じて2階に届けることが設計のメインテーマとなりました。

designPHのシミュレーション。密集地の隙間から日射取得可能かシミュレーションする
密集地の隙間から日射取得可能かシミュレーションする

建物の断面設計は北側道路斜線によって屋根形状が南からの片流れとなり、ハイサイドライトでの日射取得で設計を進めます。しかし、高さ制限によりハイサイドライトの高さも最小限しか確保できないことが判明。都市型パッシブハウスの設計の難しさを味わうこととなりました。(※このハイサイドライトが、後に思わぬ問題を引き起こすことになる……)

designPHによるシミレーション状況。ハイサイドライトのシミュレーションによって南面建物をかわして日射取得が可能に
ハイサイドライトのシミュレーションによって南面建物をかわして日射取得が可能に

その後、階高調整、構造設計、バルコニーとサッシの取り合い、空調ダクト設計、隣地からの視線等など──都市型パッシブハウスとしての全体調整が求められました。結果、建物形状、窓配置、すべてに意味があり、意図なく設計した部分はありません。
都市型パッシブハウスの設計は、まさに緻密な設計の折り重ねの連続になりました。

唯一の余白──北側に提案したヤマボウシ

唯一余裕のある北側スペースに、ヤマボウシの植栽を提案しました。
ヤマボウシは5〜7月に白い花を咲かせ、その姿は上階からの視線に映える樹木です。北側は道路を挟むため隣家と離れがあり、「明るい日影」となる環境。湿気を好む樹種でもあり、この土地に合うと判断しました。

都市型パッシブハウスの設計において、パッシブハウス認定取得の数値目標を達成するのは必要な要件ですが、それに加え、暮らしの要望を満足した「住まい」となっていることが最も重要です。素材、構法、施工、法規、生活イメージまで、複数の要件を満足させながら、検討を折り重ねていく

──この敷地条件で、求められた性能と空間をどのように両立できるのか?
──この設計は、思い描いた暮らしが実現できる「住まい」になるのか?

設計とは、条件や制約等の要件を一つ一つ検討し、何度も見直しを重ねて形にしていく作業です。そのプロセスは、直線的に積み上げるというよりも、判断と修正を折り返しながら折り重ねていく、「設計とは折り重ねること」と考えています。

都市部でも、ここまでできる

このプロジェクトは、「都市型敷地でもここまでできる」ことの一つの実例です。
迫る隣家、限られた日射、厳しい制約、──それでもなお、技術と工夫によって「豊かな暮らし」を実現する「住まいは可能だと信じています。

次回:Blog記事③|UA値の理由──シミュレーションの舞台裏

📝 この住宅の設計全体について詳しくはこちら
▶︎ 都市型パッシブハウス 設計事例ページへ
外皮性能・空調計画・素材選定・外構設計まで、詳細な解説を掲載しています。

高断熱と暮らしのあいだ#1 築40年の家に住む設計士が考えること

私が今住んでいる家は、築40年のプレハブ住宅です。
この家を選んだのは「性能が良いから」ではありません。

たとえば、内部の建具。
当時流行っていたラワン材がしっかりと使われていて、年月を経て独特の風合いを持っています。
新建材では絶対に出せない質感で、家全体の雰囲気にしっくりと馴染んでいる。
木の建具が好きな私にとっては、大きな満足ポイントです。

また、ビニールクロスはDIYで塗装を重ねたり、自然素材の「タナクリーム」を自分で塗っています。
床材だけはDIYでは仕上がりに納得できなさそうだったので、大工さんにお願いしましたが、
その材料もわざわざ千葉の山武市まで行ってサンブスギを調達しています。

思えば、高断熱高気密住宅に目覚める前は「性能」にほとんど関心がありませんでした。
だからこそ、この家では“感性”の部分で存分に楽しむことができたのだと思います。
それが、今もここに住み続けている理由の一つかもしれません

当然、断熱材などの性能面では限界があります。
でも、普通の在来木造住宅と違って、この家は“規格住宅”なんですね。
それが住んでいると何となく見えてきて、在来の木造住宅のように自由にはできない…
そういう“リノベの限界”もまた、日々実感するところです。
(これはまたいつか、もっと詳しく書きたいテーマです。)

高断熱高気密住宅に憧れはあります。
でも、私が一番大事にしてきたのは「どんな材料で作られているか」。
そして、経年変化しても“味わい”が残る自然素材かどうか。
そういう意味では、この家は「性能」ではなく「素材の強さ」で、
私の暮らしを支えてくれています。

とはいえ──
“寒さ暑さ”もまた“感性の一部”であるので、
やっぱり、人間が本当に快適だと感じる温熱環境で暮らすことは、すごく大切です。

それを最小限のエネルギーで実現することが、設計の使命だと私は考えています。
そのためには、もう「勘」ではダメで、ちゃんと理屈、計算が必要です。
シミュレーションソフトを駆使して、科学的な裏付けを持って設計する。
そこに設計者の役割の本質みたいなものがあると思います。

私はパッシブハウスの設計など高気密高断熱の設計をしますが、「持続可能性」が最も大切だと考えています。だからこそ、高断熱高気密という技術は、これからの時代に欠かせないものなんです

改めて考えてみると、
私がこの家で感じているのは、単なる「性能の良し悪し」ではありません。

経年変化によって深みを増す素材、
大工とともに作った床、
自分で手を加えた壁や建具。

快適性は確かに大切ですが、
それを支えるのは、性能という「理屈」だけではなく、
暮らしの中で積み重なる「実感」や「記憶」だと思っています。

設計という仕事は、その両方をつなぐ役割を持っています。
性能を確実に押さえること。
そして、その上で、時間が経っても意味を持ち続ける空間をつくること。

私はこれからも、その両方を問い続けながら設計を続けていくのだと思います。

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朝日とともに目覚める家は、設計でつくれるか?

自然のリズムを住まいに取り込む、ということ

朝のやわらかな光で目覚めるとき、
あるいは夕暮れに、空がゆっくりと色を変える時間に、
ふと心がほどける瞬間があります。

住まいづくりでも、そんな自然のリズムを取り入れることができます。

けれど、ただ窓を設ければいい、ただ性能を高めればいい──
そんな単純な話ではありません。

どんな光を、どんなふうに迎えるか。
そのひとつひとつが、暮らしの豊かさを形づくっていきます。

朝と夕の光が、暮らしの質を支える理由

人間の体には「体内時計(サーカディアンリズム)」と呼ばれる仕組みが備わっています。
朝に光を感じることでリセットされ、一日のリズムを整えながら、
夜には自然と眠りに向かう流れをつくります。

スタンフォード大学の睡眠研究でも、朝と夜、それぞれの光環境が
心身のリズムに深く影響を与えることがわかっています。

けれど、心地よい目覚めや穏やかな眠りを育てるためには、
ただ光を浴びればよいわけではありません。

「どんな光を、どのタイミングで、どんなふうに取り込むか」。

その繊細な選択が、毎日の暮らしの質を静かに支えているのです。

パッシブデザインで性能と暮らしを両立させる設計

家づくりでは、自然のリズムを無理なく取り入れる工夫ができます。
たとえば、朝の光を取り込むために窓の配置を考えること。

しかし、単純に「東側に窓をつければよい」というわけではありません。
高断熱高気密住宅では、窓の種類や日射のコントロールが非常に重要です。
朝の光は、直射ではなく、やわらかく空間に拡がる間接光が心地よい目覚めを助けます。

パッシブデザイン無しで、建物性能を上げようとするとUA値のみを追求しがちです。
サッシの面積を小さくして数値を稼ごうとする傾向も見られますが、それでは本末転倒です。

確かに、東西の開口部を小さくすることは消費エネルギーを小さくするには有効です。
ですが、それだけでは暮らしが豊かにはなりません。

パッシブデザインによって各部の仕様を決め、
消費エネルギーを計算して比較することで、
東側に大きな開口を設けることも、一つの手段になると考えます。

設計段階では、こうした性能と暮らしのバランスを一つひとつ丁寧にすり合わせていきます。
敷地の特性、ご家族の暮らし方、求める光の質──
それらを静かに聞き取りながら、「その家だけの心地よい朝」をかたちにしていきます。

小さな習慣が、光と暮らしを育てる

設計だけでなく、暮らしの中にも、自然のリズムを整える小さな工夫を取り入れることができます。

  • 遮光カーテンを控えめにして、やわらかな朝の光を感じられるようにする
  • 朝起きたらカーテンを開け、自然光をしっかり取り込む
  • 朝の光の中で数分だけ深呼吸する時間をつくる

毎朝のこうした小さな習慣が、
体内リズムを整え、
心地よい目覚めとともに、一日のはじまりをやさしく支えてくれるのです。

性能だけではない、暮らしを包む設計へ

高断熱・高気密の技術に支えられた快適な性能と、
自然のリズムに寄り添う、やわらかな設計。

その両方を大切にした家づくりが、これからの暮らしにはきっと求められていくでしょう。

ただ性能を追いかけるだけでは得られない、
光や風と共に呼吸するような心地よさ。

幸設計スタジオでは、
そんな暮らしのリズムを大切にしながら、
一人ひとりに寄り添った住まいをご提案しています。

朝の光も、夕暮れの静けさも、
あなたの暮らしをそっと支える力になります。

まずは、どんな光と暮らしたいか──
一緒に想像してみませんか。


暮らしを包む設計だけでなく、
電磁波対策や生活環境全般のサポートも、
スタジオ・アース四街道として取り組んでいます。

光や風、そして見えない環境まで含めて、
あなたの健やかな毎日をそっと支えていきたいと考えています。