さんむの家改修工事08:天然素材の良し悪し

天然素材は施工にコツが必要

ビーナスコートの本塗りが終わりました。

水性塗料と違い、自然系の材料は扱いにコツが必要です。シーラーの調整、材料の希釈など難しい部分があったようですが無事に施工完了しました。

本来ならば何事も無く施工できると良いのですが、必ず何か問題が発生します。ですが、原因を突き止め、対策を取ることができれば貴重な経験の一つになると考えています。

監理ポイントも見つかったので次回に施工に生かせればと考えています。

仕上がりは素晴らしく、水性塗料にはない少しざらついた肌触りで、陰影も綺麗だと思います。

さんむの家で使用したビーナスコートについて解説したいと思います

ビーナスコートは薄塗りの天然内装仕上クリーム材で、主原材料は「卵殻」と「火山灰」です。

原材料に「卵殻」を使っているのはビーナスコートだけだと思います。

メーカーさんによると「卵殻」は、マヨネーズ工場から廃棄されるものを、乾燥、粉砕の工程を経たものを原料としているそうです。

マヨネーズを作る過程で生じる卵の殻。本来でしたら処分費をかけて廃棄されるものを再利用しています。リサイクル素材であるのでエコロジーの視点から見ても満足ができる原材料です。来訪されたお客さまに、この壁、リサイクル素材で卵の殻からできてるんだよ!なんて話題にもなりそうです。

もう一つの原材料「火山灰」については皆さんご存じだと思いますが、こちらも利用価値の少ない素材です。

火山が噴火し、堆積した火山灰の処理に苦労されているニュースを見かけますよね。そんな厄介でもある素材です。

ビーナスコートはこんな二つの原材料を活用している、地球環境に負荷をかけることの少ないエコロジーな材料なのです。

機能面では、臭いや有害物質を吸着し、湿気を吸湿する効果があります。

もちろん天然素材ですから仕上りもビニールクロスには無い、天然素材の美しい質感を楽しむことができ意匠面でも満足です。

エコロジー、意匠、機能の3点を満足させることができる素材だと思います。

 

 

さんむの家改修工事07:天然素材で仕上げる内装工事の進捗

天然素材を選ぶ理由

1.さんむの家、内装工事がいよいよ終盤へ

残暑が続きますが風は秋の気配です。

内部の木工事があらかた終了し、いよいよ内装工事が始まりました。まずはボード下地工事のパテ打ち作業に入っています。

パテ打ちが始まると工事が終盤にさしかかることを感じます。仕上げ材が薄塗りの天然内装仕上となるので下地の調整もクロス張りと比較すると念入りです。

2.天然素材の魅力:風合いと肌触りがもたらす心地よさ

さんむの家で使っている内装仕上材は薄塗り仕上げ材です

天然素材の良い所は、なんと言っても風合いや肌触りにあります。

これはメーカー素材と呼ばれる、大量生産されるビニールクロスや複合フローリングで味わうことがきません。

薄塗り仕上げ材を使った塗り壁はビニールクロスに無い質感があります。

無垢材の木の床の肌触りは心地よく、気がつくと素足になっています。

このように天然内装材は暮らしている時のちょっとした瞬間に、気持ちの良い喜びを感じさせてくれます。

3.天然素材が描く時間の美しさ

さらに天然素材は時がたつと風合いの良さがましていくので、その家で暮らしていく楽しみの一つになります。

天然素材での家づくりでは家の美しさは家が完成した時がスタート地点になり、時間経過によって新品の美しさから風合いを重ねた美しさへ変化していきます。

一方、メーカー素材では素材が美しく経年変化することは無く、完成した瞬間が一番美しくその後は経年劣化することになります。

4.天然素材の課題とその魅力

もちろん欠点もあります。

天然内装材はメーカー素材と比較するとコストも上がります。

工場で大量生産しているわけでは無いので、仕上がりにばらつきが出ることも多いです。

そのような欠点を認めることができるのならば、仕上がりのばらつきも天然内装材の魅力に感じることが出来るのでお勧めします。

5.次の工程:ビーナスコート仕上げの魅力

パテ下地が終わった後、天然内装材のビーナスコート仕上となります。

ビーナスコートとは?

ビーナスコートは、薄塗りの天然内装仕上クリーム材で、主な原材料は「卵殻」と「火山灰」です。
特に「卵殻」を原料としているのはビーナスコートだけだと思います。メーカーによれば、この「卵殻」はマヨネーズ工場で廃棄されるものを再利用し、乾燥・粉砕の工程を経て原料化されているとのことです。
再生素材を活用したこの仕上材は、環境に配慮した製品としても注目されています

パテ打ち作業の様子

描いている完成予想図と同じになるはずですが、楽しみと緊張感が入り交じった気持ちがします。

下地調整後、本塗りへと進みます。

次の工程はこちらからどうぞ
ビーナスコートの仕上がりをご覧いただけます

さんむの家改修工事06:工業製品の魅力

ガルバリウム鋼板小波板を採用した事例

山武の家は、山武地域でよく見られる昔ながらの切妻屋根の形をしています。
現在よく見られる高性能住宅のような総二階の建物ではなく、2階建てに下屋が取り付いたデザインです。
40年以上前、性能(燃費、耐震)やデザインやを意識せず、大工さんが普請で普通に建てた家でしょう。

今回の改修工事では窓の大きさ、軒の出等を調整するくらいで、大きな外見変更をしていません。
それは、過去の思い出をつなぐ意味合いで旧い部分を残しながらのリフォームを選択しているからです。40年以上そこに建っていた雰囲気を大きく変えることをしたくなくて大きな外見変更をしていないのです。

北立面
外壁仕上げ:ガルバリウム鋼板小波板、パッシブデザインの為にシルバーを採用

しかし、建物の細部を丁寧に調整することで全体の雰囲気を大きく変えることができると考えています。
派手なデザインでは無く、シンプルな形に素材感を生かした仕上材で普通の家を目指しました。

外壁材は耐候性とコストを考慮してガルバリウム鋼板の小波板としました。
ブリキの小波板はこの地域でも倉庫に使われている材料です。同じ小波板でもガルバリウム鋼板の小波板は耐候性に優れていて、ブリキ板とは比べものになりません。
サイディング等のメーカー建材と比較すると豪華さでは劣りますが、素材感を活かした仕上にはもってこいです。
またメーカー建材は廃番になってしまうと修理が不可能となってしまいますが、こういった工業材料でしたらそういった心配は必要ありません。
またサイディング材の多くは10年ほどすると劣化が激しく、再塗装やシーリングの打ち直しなどの手間がかかります。
その点、ガルバリウム鋼板のような工業製品はメンテナンス性にも優れており、長期的に考えると暮らしに寄り添う素材だと言えます。

色についてはシルバーにしたのですが、それにも理由があります。
最近よく見かける、黒い外壁も候補にあがりました。黒い外壁と木部のコントラストも美しいいです。
※山武の家改修工事では、一次エネルギー消費の削減も重視しています。太陽からの日射による温度の上昇を考えた場合、黒色系と白色系の外壁を比較したとき、白色系の方が遮熱効果が大きいです。ですから外壁を白色系のシルバーにすることにより、遮熱効果を狙っています。

※2025年追記
外皮の断熱強化によって、1次エネルギーが外壁の色によって影響を受ける可能性はシミュレーションによります。

建物性能を向上させるためには決まったやり方があるわけではありませんがこう言った小さな積み重ねが大切なんです。基本を押さえて定石を一つ一つ積み重ねていくことが大切だと考えています。
出来ることをやっていけば、少しずつ建物性能は上がっていきます。

工業製品は一見すると味気ない素材に思えるかもしれません。ですが適材適所で使えば、意匠と性能の両方を満足する素材だと考えています。

2025年追記

2017年当時に書いたこの記事を読み返すと、いまも「工業製品の持続性」という視点は変わらず大切だと感じています。また、最新の知見も加筆しました

工業製品はサイディングなどの既製品建材に比べて耐久性が高く、劣化が少ないため、永く使える素材です。
修繕の手間を抑えながら安心して使い続けられる点は、建物の資産価値を守るうえでも大きな利点となります。

更新や補修の頻度を減らし、世代を超えて住まいを活かしていくことこそが、サステナブルな住まいづくりにつながります。

👉 設計5原則「工業製品の魅力」について詳しく読む