私たちが考える、自然と共生する設計の基本

自然と共生する設計は、単に「エコ」や「環境にやさしい」という言葉だけでは語り尽くせません。
私たちは、自然エネルギーを最大限に活かし、住む人の快適さと建物の持続可能性を両立させることを目指しています。その中でも特に注目しているのが、「日射取得」 の工夫です。


日射取得のための窓の配置を考える

建物を設計する際、まず重要になるのが、敷地の日影を考慮したシミュレーションです。
このプロセスでは、太陽の動きを観察し、日射の角度や季節ごとの変化を検討します。そして、太陽光が効率よく差し込む窓の位置を慎重に決定します。

たとえば、周囲を建物に囲まれた敷地では、日射が届くポイントが限られることがあります。このような場合、ピンポイントで「日射取得」を確保する工夫が求められます。窓を設置する壁面の位置が建物全体の性能を左右するため、シミュレーションの結果をもとに、最適な配置を導き出します。


窓の役割はそれだけではありません

窓には日射取得の役割だけでなく、建築基準法を満たすための採光や換気を確保するという重要な機能もあります。
そのため、窓の配置を考える際には、自然エネルギーの活用と法規上の要件を同時に満たすことが必要です。これを実現するためには、設計者の技術と工夫が求められます。


自然の力を最大限に活かすために

自然と共生する設計は、単なるデザインの工夫や高性能な設備に頼るだけではなく、精密なシミュレーションを活用した自然エネルギーの利用が鍵となります。
今回ご紹介した日射取得を意識した窓の配置は、その一つの具体例です。
建物が自然と調和することで、住む人にとって快適で、環境にも配慮した住まいが実現します。

日当たりをシミュレーションする 建物編

今日は4月16日。緊急事態宣言が出てから約1週間がたちました。外出を少なくして他人との接触を80パーセントまで減らして爆発的な拡大を防ぐとの事。これが達成できれば爆発的な感染を避けることができるそうです。

業務打合せにはZOOMを主に使っていますが、お客様との打合せが目下の課題。PCを持っていないお客様とどのように打合せするのか多くて思案中です。

※緊急事態宣言が全国に広がりそうなニュースが入ってきましたね。。。

日当たりをシミュレーションする 建物編

日当たりをシミュレーションするの続きになります。

前回は敷地に対するシミュレーションを行い、建物を配置してみたところ、思いがけない方向から日影が飛んでくることが判明したお話でした。

くりかえしますが、パッシブ設計のポイントの一つに日当たり条件があります。理想的には大草原の中にポツンと建つような、隣地に何もなくて建物を南側に正対する配置ができれば、日射について大きな問題は少ないでしょう。ですが、そういった条件の敷地は非常に限られています。
そのため、敷地の日当たり条件を丁寧に検討した後、建物形状や窓の配置を決める設計が必要になります。

次に、前回と同じようにシミュレーションを行い、その結果をご紹介します。

シミュレーション結果:12:00の状況

シミュレーションを行った結果、建物の半分以上が北側の建物からの日影の影響を受けていることがわかりました。この後、14:00には全体的に日射を受けることができますが、15:00には別の建物の影響を再び受ける状況になります。。

 

太陽から取得する日射熱

1階の窓からはほとんど日射熱を得ることができないことがわかりました。しかし、屋根面からは日射熱を取得できる可能性があるため、屋根面に窓を設置するという解決策を考えます。この場合、ハイサイドライトと呼ばれる窓を設置することで、北側建物からの日影の影響を避けることができます。

 

ハイサイドライトの効果

シミュレーションを重ねた結果、ハイサイドライトからの日射を得ることで、室内温度に大きな違いが生まれることがわかりました。日射熱の取得量は、ハイサイドライト設置時は7,200whで、設置しない場合の4,600whと比べて約1.5倍になります。また、室内の温度も14:00に約3℃の差が生まれ、最高室温は日射熱が最大になる12:00から約2時間後に達するという興味深い結果となりました。

 日射熱の取得状況です。

ハイサイドライトに日射を受けることができて日射熱も得ることができそうです。

どうにか解決できそうです。

 

建物内の温度分布状況はこのようになります。

左図がハイサイドライト設置。右図は特に対策していない状況です。

日射熱はハイサイドライト設置7,200wh。対策なしだと 4,600wh。約1.5倍になります。

 

室内の温度はこんな状況です。

ハイサイドライトからの日射熱で14:00に3℃ほどの温度差が出てきます。

最高室温が日射熱最大の12:00から2時間遅れの14:00になることも興味深いです。

パッシブハウスとシミュレーション

今回のような敷地状況では日当たりの条件が厳しいと思われるかもしれませんが、パッシブハウスもこのようなシミュレーションの延長線上にあります。「たかがシミュレーション」と言う声も聞かれますが、事前に検討を行うかどうかで設計の精度や建物の性能には大きな違いが出るのです。

パッシブ設計は「自然の力」を理解し、それを活かした家づくりです。これからも、「自然の力」を最大限に取り込める、丁寧な設計を心がけていきます。

 

パッシブ設計は「自然の力」を理解し活かした家づくりです。

これからも「自然の力」を取り込める、ていねいな設計をこころがげて生きたいと考えています。

 

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日当たりをシミュレーションする

今日は4月2日。年度初めですね。今日はとても風が強かったです。桜は満開ですが強風に耐えてます。
コロナウイルスのニュースがいやでも飛び込んできます。色々不安なことが多いと思いますが自分でコントロールできることに集中して日々過ごしています。

私はリラックスするためにヨガを日課としています。ヨガを習い始めてから3年くらい、太陽礼拝を毎朝の日課としています。太陽礼拝を簡単に説明するとヨガのラジオ体操みたいなものなんですが毎日やることでその日の体調変化にも気づきやすくなったりします。

来年はコロナウイルスもきっと収束して、どんなことを書いているのでしょうね。

そんな中でも粛々と設計を進めており、今日はシミュレーションソフトを使った日射の検討についてです。

敷地概要

敷地の形状を地図で確認すると、南北方向のずれが少なく、条件は良好です。パッシブ設計において、日当たり条件は重要なポイントの一つであり、南面に正対するほど有利になります。

しかし、今回の敷地では、すべてが有利な条件とは言えません。現地調査の結果は次の通りです。

  • 北面、西面に道路
  • 南面、東面は宅地

市街地ということもあり、既存の建物が敷地に接近して建てられており、一見して隣地からの日陰の影響を強く受けることが判明しました。西側には6メートルの道路がありますが、驚きの結果が待っていました…。

配置計画

まず、現地で周辺の隣接敷地を調査し、隣接建物の配置や高さを計測しました。そのデータを基に隣地建物を配置し、建物の影響を検討します。そして、早速プランニング…ではなく、まずは日陰のシミュレーションを行います。

シミュレーションソフトを使用し、隣接建物からの日陰の影響を考慮した上で、建物の配置計画を進めます。「ここしかない」配置計画を心がけることで、無理のないプランを目指します。

シミュレーション結果:冬至での検討

基本案が決まったら、もう一度シミュレーションを実施します。今回は、太陽高度が一番低くなる冬至でのシミュレーション結果をご紹介します。

11:00頃

11:00を過ぎると、南西の角に日が当たり始めますが、1階の南面にはまだ日射がほとんど当たっていません。北側建物からの日陰の影響が大きく出ています。

 

 

 

14:00頃


14時になると、ようやく南面全体が日射を受けます。しかし、今度は南西の建物からの日陰が建物に影響を与え始めています。

 

 

15:00頃

15時には、南西の建物からの日陰の影響で、1階の南面には全く日射が届かなくなります。

 

 

 

 

日陰は予想しないところから現れる

シミュレーションを行う前は、北側建物の日陰が通り過ぎた後、11時過ぎには日射を邪魔するものはないと想定していました。しかし驚いたことに、西側道路を挟んで南西にある建物から、予想を超える日陰が広がっていたのです。

「ん?何かの間違いかな…」と思いましたが、現地で確認したところ、ほぼ同じ状況が確認できました。この経験から、シミュレーションソフトの精度を改めて実感しました。

このように、想像できなかった日陰が建物の設計に影響を与えることがあります。

外皮性能だけでは足りない

冒頭でも触れたように、パッシブ設計では日当たり条件が重要です。この条件を満たすためには、シミュレーションソフトを活用することが不可欠です。外皮性能を上げるだけでは、冬の暖かい家を実現するには不十分です。

暖房設備をフル稼働すれば室温を一定に保てますが、それでは経済的に非効率です。太陽からの日射を最大限に利用し、自然に素直な設計が求められます。このシミュレーションが、設計にとって大切なポイントであることを改めて感じます。

次回は、さらに詳しいシミュレーションのポイントについてご紹介します。

暮らしをアップデートする設計

住宅や建築の設計をして常々感じることは、究極の一品製作品だということ。

家電製品や自動車は各メーカーさんが巨額の開発費を投入して開発する工業製品。

一方、住宅は一品製作のオーダーメイドです。

土地の形状が同じでも、敷地の場所が変わると全く違います。同じものはほとんどないと言ってもよいです。

暮らしをアップデートする

少し言い訳のようですが、建物が完成し暮らし始めてから手を入れるところが出てきてしまいます。

そういったところに手を入れて自分達の暮らしに近づけていくことを楽しんでもらえたらと考えています。

住宅や建築建物は完成した時はまだ完成途中、手を入れることで完成に近づいていくものかなと。

とくに住宅は家族の成長に合わせて変化させたり、家族の好みに合わせながら手を入れることが大切だと思います。

住まいに手を入れることで、暮らしをアップデートする感覚です。

とは言え、全くの未完製品をお渡ししているわけではありません。

設計前段階では、ヒアリング等でご要望等は詳しくお聞きし、設計に反映しています。残念ながら予算等の関係で全てが叶うわけではありませんが。。。

設計時には温熱シミュレーションは必ず行い、建物性能面では満足するようにしております。

建物性能を左右したり、後から手を加えることが難しい箇所 例えば、構造の耐震等級、壁の内側になる断熱材等、についてはしっりとした設計をしてお金をかける。

ですが、後から交換できる内装部分については、変化していく家族構成、趣味趣向にあわせて手を入れるような設計が好ましいと考えています。

アップデートが難しい部分はしっかりとした設計を心がけています

建物性能を満足するために、現在、シミュレーションソフトを活用した新しい設計方法を試行錯誤しております。簡単に説明したいと思います。

一番最初にすることは日陰のチェック

まずは周辺環境が敷地にどんな影響を与えるかチェックします。特に敷地に接する建物から発生する日陰などの影響をシミュレーションします。使用するソフトは主にホームズ君を使います。

南側の建物はもちろんですが東側、西側の建物からも大きな影響を受けることがあります。シミュレーション前、私も頭の中である程度の予想をしています。

”この方向に空きがあるからこちらから日射を取り込めるな”などと予想するのですが、その予想を見事に裏切られる事もあります。

ですからシミュレーションソフトの計算無しでは、正確な設計はできないと考えています。シミュレーション結果を参考にして建物の配置や窓の位置を決める参考にします。

パッシブ設計の基本は効率よく太陽からの日射を取り込んだり、遮蔽することが基本になります。ですから日影の影響を検討しながら設計することが大切になります。

次にホームズ君と新住協さんのQPexを使いながら建物の性能を決定する屋根・外壁・床、開口部などの外皮性能を設計です。

QPexは各部の断熱材の種類、厚さ、開口部の仕様を入力すると比較的簡単にUa値、暖冷房エネルギーを計算できるので、とても優れた計算プログラムです。

※細かい点ですがQPexはエクセルベースの暖冷房エネルギー計算プログラムなので正確にはシミュレーションソフトとは違います。

その後にホームズ君を使って室温シミュレーションを行います。

※ホームズ君は使い始めて間も無いので入力に手間取ることが多いのですが丁寧なサポートがあるので助かっています。やはり日本語で手軽にサポートしてくれるのは安心です。

ホームズ君とQpexを行ったり来たりを繰り返し、グルグルしながら仕様を決めていくようにしています。

パッシブハウスのジャパンの会員ですから、建物燃費ナビで計算もしています。

このように温熱環境についてはきちんとシミュレーションすることが大切です。正しい施工方法を知っていることもちろんです。