地域材とプレファブ建築の未来: モック工場の見学から考えるカウフマン流の可能性

IMG

1. 見学を重ねて気づいた、大型パネル建築の可能性

(1) これからの住宅設計に求められるもの

近年、高性能住宅の需要が高まり、施工の精度や効率化がますます重要になっています。
そんな中、大型パネルを活用した「高断熱・高気密住宅の効率的な建設手法」が注目されています。

先日、私はモック工場を訪れ、大型パネル工法の最前線を見学しました。
ここでは、建築家の丸山弾さんと大工の天野さんが、木製サッシの造作と大型パネル施工を組み合わせる試みを行っており、設計と施工の連携がどのように進められるのか を間近で学ぶことができました。

この見学を通じて、大型パネル工法が単なる施工の効率化にとどまらず、「設計の自由度」や「地域材の活用」にも適応できる技術であることを改めて実感しました。

(2) 大工不足の地域でも可能性を広げる大型パネル建築

以前見学した丹波山村の村営住宅では、大型パネルを活用し、大工不足の地域でも短期間で高性能な住宅を建設する事例が実践されていました。

このプロジェクトでは、現場作業を最小限に抑えながら、施工精度の高い省エネ住宅を実現する仕組みが導入されており、
地域の職人不足という課題に対応する手法として、大型パネル工法の可能性が示されていました。

これは、全国的に大工不足が進む日本の建築業界にとっても大きな示唆を与えるものです。
特に、都市部だけでなく、地方の住宅建設にも大型パネルを活用することで、設計の柔軟性を損なわずに持続可能な家づくりが可能になると考えられます。

丹波山村村営住宅見学会レポート:大型パネル工法と地域材の未来

(3) 地域材と大型パネル建築の融合

今回の見学で印象的だったのは、モック工場では紀州材を活用した大型パネルが製造されていたことです。
しかし、千葉県にはサンブスギという地域材があるにも関わらず、まだ十分に活用されていないことに課題を感じました。

日本では、地域材の活用が進みにくい要因の一つとして、規格化されていない木材の安定供給の難しさが挙げられます。
しかし、大型パネル建築の技術が進化することで、地域材を標準化し、適切な品質管理のもとでプレカット・加工する仕組みが可能になるかもしれません。

過去のセミナーで学んだヘルマン・カウフマンの建築では、地域材を活用しながら「設計の柔軟性」と「施工効率の向上」を両立する手法が実践されていました。
この視点から考えると、日本の住宅設計においても「地域材 × 大型パネル建築」の組み合わせをもっと積極的に活用できる可能性があると感じました。

2. モック工場で得た知見

(1) 大型パネルの製造プロセスとそのメリット

私が訪れたモック工場では、大型パネルが工場内で精密に製作されています。工場という安定した環境で作業するため、現場での天候や施工状況の影響を受けず、高い品質が維持されています。
例えば、高断熱住宅では、従来の現場施工だとサッシの重量増や断熱材の追加により工事の負担が大きくなることが問題でした。しかし、ここで製作される大型パネルは、均一な品質と精度を実現し、現場での作業時間や労力を大幅に削減します。これは、住宅の省エネ性と施工効率の向上に直結する大きなメリットです。

(2) 建築家と大工の協働で生まれる設計の柔軟性

また、現場では建築家と大工が直接コミュニケーションをとりながら、外部の木製サッシを造作するプロセスが行われています。
例えば、丸山さんの設計図面に基づき、天野さんが実際の施工で最適な木取り方法を提案するなど、単なるマニュアル通りではなく、現場ならではの柔軟な対応が見受けられました。こうした協働は、規格化された大型パネル施工でも個性的な家づくりを実現する鍵となります。実際に、この手法を取り入れることで、住まいのデザインに自由度が生まれ、将来的には施主のニーズに合わせたカスタマイズも可能になると感じました。

(3) 地域材の活用と未来の建築への展望

さらに、塩地さんのレクチャーから、今後全国に大型パネル工場を展開し、地域の森林資源を活かすという先進的な取り組みを知りました。
この技術は、地域材(例えば、紀州材など)を利用することで、地元の林業を活性化しながら、同時に輸送距離を短縮してトラック輸送の問題を解消するというものです。実際、輸送距離が8時間以内であれば、物流の効率が大幅に向上し、現場での人手不足や施工の遅延にも対応できるとのことです。
こうした取り組みは、従来の工法とは一線を画し、将来の住宅づくりに大きな影響を与える可能性を秘めています。これからの住宅設計では、単に技術的な側面だけでなく、地域全体を巻き込んだ持続可能なアプローチが求められるでしょう。

3. カウフマン流プレファブ建築の分析

(1) 持続可能な建築の考え方

カウフマンが活動するフォアアールベルク州では、地域材の活用を前提にしたプレファブ建築が普及しています。
この地域では、工場で精密に加工された木材を用いることで施工精度を向上させ、同時にエネルギー消費を抑える というアプローチが進められています。

この手法は、地域経済の活性化にもつながるという点で注目されています。
たとえば、地域の森林資源を適切に管理しながら活用することで、環境負荷を減らしつつ持続可能な家づくり を実現できます。
これは、地域の木材を活かした省エネ住宅を求める日本の施主にも、非常に参考になる考え方です。

出典:Hermann Kaufmann Architekten: Architecture and Construction Details

(2) モック工場の取り組みとの共通点

現在の大型パネル工場では、施工精度の向上や現場での作業軽減 が実現されています。
この技術を全国に広げることで、輸送コスト削減・地域材の活用・職人不足の解消といった、日本の建設業界が抱える課題にも対応 できる可能性があります。

特に、日本ではトラックドライバーの労働規制強化によって、長距離輸送の負担が増えています。
大型パネルの生産を各地に分散させることで、輸送距離を短縮し、工期の安定化につなげることができるでしょう。

これは、フォアアールベルク州の成功モデルに近づく第一歩とも言えます。

出典:Hermann Kaufmann Architekten: Architecture and Construction Details

4. 新たな視点: 地域材とプレファブ工法の未来

今回の見学では、建築家と職人が協働しながら、新たな建築手法に挑戦している姿が印象的でした。
従来のプレファブ工法と違い、設計と施工がより密接に連携し、柔軟な対応が可能になることを実感しました。

また、フォアアールベルク州のカウフマン建築と比較すると、
日本の地域ごとの特性を活かしたプレファブ建築のあり方を考える必要があると感じました。

  • 千葉県における大型パネル工場の活用
  • JAS製材の品質管理と流通体制の整備
  • 地域材の供給網の確立

など、まだ多くの課題はありますが、地域材×プレファブ工法が日本の建築業界に与える影響は大きいと確信しています。

5. これからの建築と地域材の可能性

(1) これからのプレファブ建築

気候変動や地球温暖化への対応として、住宅の省エネ化と高性能化は今後さらに求められるようになります。
その一方で、断熱性能の向上や高性能サッシの採用により、住宅の重量が増加し、大工の負担も増しているのが現状です。

この課題に対して、プレファブ建築(大型パネル工法)を活用することで、施工負担を軽減しつつ、高い品質を維持する という解決策が考えられます。
具体的には、工場で高精度に加工された大型パネルを使用することで、断熱・気密性能を確保しながら、現場での組み立て作業を効率化することが可能になります。

つまり、大型パネル工法は、「省エネで快適な住まいを実現するだけでなく、施工の効率化や品質向上にも貢献する」 新しい家づくりの形として注目されているのです。

大型パネルの建て方

(2) 日本での活用のヒント

日本の建築業界においても、地域材×プレファブ技術の融合 は、今後の住宅設計の大きなテーマになり得ます。
すでに、ウッドステーションの塩地さんが全国に大型パネル工場を展開し、地域材の活用を促進する計画 を進めています。

この動きが広がることで、以下のようなメリットが期待できます。

  • 地域材の活用が進み、林業の活性化につながる
    → これまで利用されにくかった地域の森林資源を有効活用できる
  • JAS製材などの品質管理が標準化され、流通がスムーズになる
    → 一定の品質基準を持つパネルを安定供給しやすくなる
  • 施工効率が向上し、工務店や職人の負担を軽減できる
    → 施工の均一化により、作業の負担を軽くし、工期の短縮にもつながる

特に、「地域材を活かしつつ、設計の自由度を損なわない家づくり」が実現できる点は、今後の住宅設計にとって重要なポイントです。

(3) 設計にどう活かすか

今回のモック工場での見学では、大型パネル工法は設計の自由度を損なうものではなく、むしろ柔軟なデザインを可能にする技術であることを改めて実感しました。

特に、大工による造作建具の取り付けプロセスを大型パネルと組み合わせる試みを目の当たりにし、「工業化された建築」ではなく、「職人の技術と組み合わせた新しい住宅づくり」が可能であることがわかりました。

この技術を設計に活かすことで、以下のようなメリットが考えられます。

大型パネル+造作サッシ

地域材の活用 × 施工精度の向上

工場で加工された精密な大型パネルを使用することで、施工誤差を減らし、現場の負担を軽減できます。さらに、地域材を活かしたパネル設計により、木の質感や断熱性能を最大限に活かした住宅が実現できます。

建築家と大工の協働によるデザインの柔軟性

今回の取り組みでは、建築家の設計意図を大工が適切に解釈し、大型パネル化して施工するという流れが印象的でした。これにより、従来のプレファブ住宅のように「決まった形の家を作る」のではなく、施主の要望に応じた自由なデザインが可能になります。

高性能住宅と効率化の両立

大型パネル工法では、高断熱・高気密な住宅を、工期を短縮しながら高精度で建設できます。施工のばらつきを抑え、現場の負担を減らしながら、快適な住まいを実現することが可能です。

地域材を活かしながら、高性能かつ自由な設計を実現できる大型パネル工法。
今後の設計では、これらの技術をどのように活用するかが重要な鍵となります。

とめ

大型パネル工法は、単に施工効率を上げるためのものではなく、地域材を活かしながら、省エネ住宅の可能性を広げる手法として、今後の住宅設計に大きく貢献できる技術です。

今回の見学を通じて、施工精度の向上や現場での作業軽減だけでなく、設計の自由度を確保しながら、将来的には地域材を活用する方法もある ことが分かりました。

また、地域ごとに異なる木材やデザインを活かした大型パネル工法が可能になれば、これまで「工業化された建築」として見られていたプレファブ建築のイメージが変わり、より柔軟で持続可能な住宅設計が実現できる可能性があります。

もし、地域材を活かした高性能な家づくりに興味がある方 は、ぜひ一緒に最適な設計を考えていければと思います。

👉 大型パネル工法と地域材の活用について、詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。

🔗 関連記事:

丹波山村村営住宅見学会レポート:大型パネル工法と地域材の未来

大工仲間に誘われて、丹波山村村営住宅の見学会に行ってきました。今回見学したのは、大型パネル「ハーフ住宅」を活用し、スピード建設が行われたプロジェクトです。今年度4月に事業採択され、8月に上棟、そして年明け1月10日には完成見学会という驚くべきスピード感!公共事業では珍しいプロポーザル方式が採用され、この結果、効率的な予算化と短期間での建設が可能になったそうです。

上野原I.Cから国道139号を経由して向かいました。山深い道中はヘアピンカーブの連続。途中には、金属製の屋根をかぶせた茅葺きの古民家や、松本~高山周辺で見られる切妻の軒が深い古民家など、地域の個性豊かな景観が広がっていました。一方で、ハウスメーカーのような住宅はほとんど見かけません。
山が深くなるにつれ、集落の間隔は広がり、山々の存在感が増していきます。道中では落石対策工事を多く見かけましたが、こうした地域では土木の仕事はあっても建築工務店の仕事は少ないのかもしれません。

小菅村庁舎近くの木造大断面集成材を使った建物

現場では、大型パネル工法による効率的な施工方法について学びました。一緒に参加した大工仲間たちと工事手順や納まりについて議論を重ねた結果、「熟練した工務店と大工だからこそ実現できる工期だ」という結論に至りました。それでも私たちも努力次第で挑戦できるはず。新年会を兼ねて勉強会を開こうという話になり、私は丹波山村モデルをモデリングしてさらに検討してみたいと思っています。


また、事業関係者の話を聞くと、工務店や大工が得意とする住宅分野でプロポーザル方式を採用したことが、今回の成功の鍵だったそうです。海外では、公営住宅こそ高性能住宅(パッシブハウス)が採用される例が多く、こうしたプロジェクトが地域にとっても建築業界にとっても大きな一歩になると感じました。

ここまで見学会で感じたことをお伝えしてきましたが、さらに考えを深める中で、地域と建築の関係について新たな視点が見えてきました。

丹波山村村営住宅を訪れる道中では、集落に点在する古民家や小さな住宅が印象的でした。それらは地域の風土や暮らしに根付いた、控えめで素朴な存在感を持っています。一方で、村営住宅や村庁舎のような施設は、大規模で立派な建物です。特に庁舎はその存在感が際立っていて、道中で見た集落とのスケール感の違いに少し驚かされました。


この違和感は、地域の建物の「役割」によるものかもしれません。庁舎や施設は、地域の中心機能を担う場であり、建物の規模やデザインにもその意図が反映されています。しかし、その大規模さが、時に周辺との調和を考えるきっかけにもなります。


また、今回の村営住宅では、当初は山梨県産材の利用が検討されていましたが、最終的には集成材工場の関係で長野県の齋藤木材工業が供給するカラマツが採用されました。地域材を使う意図があったものの、実際の供給体制の問題などもあり、すべてが地元産材ではないという現実があります。こうした背景も含め、建築が地域の風景や文化にどう関わるかを考えることが必要だと感じます。

丹波山村HPはこちら


丹波山村庁舎の詳細はこちら

丹波山村庁舎 内観

地域材を活用する上で直面する課題の一つが、効率的な供給網の構築やコストの管理です。こうした課題を解決する手段として、デジタル技術の活用が注目されています。


たとえば、私が以前参加したVUILDの「まれびとの家」プロジェクトでは、デジタルファブリケーション(デジタル設計と加工技術)を活用し、地域材を効率よく加工し建築に取り入れる取り組みが行われました。このプロジェクトでは、地域材を短期間で製品化する手法が確立され、建築の迅速な施工と材料の有効活用が実現しました。


一方、今回の丹波山村村営住宅では大型パネルが活用されています。大型パネルの主な特徴は、「山から建築までのデータ共有」を実現する点です。

現在、「新しい林業」事業として木材の伐採場所や加工情報をデジタルデータで一元管理することで、材料のトレーサビリティを確保し、地域材の利用率向上や持続可能な森林活用を可能にする試みが林野庁の実証事業が行われています。このデータ共有の仕組みが実現されると、材料の流通と施工プロセス全体が効率化され、大型パネルの活用が建築全体の合理化に貢献しすることになります。さらに、大型パネルは供給網全体の透明性を向上させ、建築プロセスをよりスムーズに進めるための重要な基盤を提供することになります。
また、大型パネルの利用は建築プロセスの効率化にも貢献しています。工場でプレファブリーケーションされたパネルを、大工が迅速に組み立てることで、上棟までの工期を大幅に短縮しました。この方法により、大工が不足している地域でも、短期間で効率的に建築を完成させることが可能になっています。この効率化は、地域の建築需要に応える上で、非常に重要な一歩となっています。


こうした取り組みを通じて、建築業界全体が持つ課題(コスト、材料供給、効率性)を解決する糸口が見えてきます。地域材を最大限活用し、デジタル技術を効果的に取り入れることで、地域と建築が新たな形で結びつく未来を作り出すことができるでしょう。

VUILD:「まれびとの家」の詳細はこちら

大型パネルの詳細はこちら

参考図書:森林列島再生論


丹波山村村営住宅の見学会を通じて、大型パネル工法やプロポーザル方式の可能性を学ぶとともに、地域材活用の課題や地域と施設のギャップについて考えさせられました。デジタル技術の活用や効率的な仕組みづくりを通じて、地域と建築の新たなつながりを生み出していくことが求められます。
今後もこうしたプロジェクトに注目しながら、地域材を活用した建築の未来を探っていきたいと思います。

厳しい規制の中で生まれる創造性:カウフマン建築が教えること

240926 KHさん

先日投稿しました建築家ヘルマンカウフマン氏の講演会の続きになります。
今回の記事では、竹中工務店との協力による日本の施工現場での実践例に注目しました。

一方、前回の記事では、ウッドステーションやモックの技術進化について触れています。それらの技術が背景にあることで、本記事で取り上げるパッシブタウン第5期街区の事例にも、さらに深い意義が生まれています。


(※前回の講演記事はこちら

施工技術と設計哲学:パッシブタウン第5期街区

 YKK不動産が推進する「パッシブタウン」プロジェクトの最終街区が公開されました。このプロジェクトは、富山県産材を87%使用し、脱炭素建築を目指しています。RCコア構造により地震力を軽減し、耐火性を備えた木質ハイブリッド構造が特徴。Power to Gas技術やプレファブ工法の活用による効率的な省エネ設計が、持続可能な社会への一歩として注目されています。 

出所:YKK不動産、竹中工務店

記事のリンクはこちらから

木質ハイブリッド構造でつくる最先端の脱炭素建築(※日経クロステックより要約)」

YKK Passivetown, Kurobe Hermann Kaufmann + Partner ZT GmbHより


環境と技術の最適解を求めて

カウフマン氏の日本の地震に対する法規や消防法への対応は、非常に大変だったとのことでした。(通訳の方が訳した「消防法」という言葉は、おそらく「防火規定」を指しているのでしょう)

講演中にカウフマン氏の基本図面と実施図面を比較する機会がありました。センターコアの占める割合や厚さ、カーテンウォールの厚さなどが大きく異なり、これらを比較することで、日本の規制が建築デザインに与える影響を具体的に理解することができました。またオーストリアのフォアアールベルク州にあるLifeCycle Tower (LCT ONE)との比較も行われ、コア(LCT ONEでは片側偏心コアでしたが)の割合の違いは一目瞭然でした。


カウフマン氏の設計では、スラブの薄さやカーテンウォールの軽やかさがとても魅力的ですが、日本の厳しい耐震・防火規定により、設計の見直しが必要となりました。その中で、竹中工務店と協力し、RCコアを増強しつつも木材の活用を最大限に引き出したハイブリッド構造という革新的な解決策が生まれました。

出所:YKK不動産、竹中工務店


建築設計において、与えられた条件の中で最適解を導き出すプロセスは、単なる制約への対応ではなく、新たな価値を創造する機会となります。このパッシブタウン第5期街区プロジェクトは、まさにその典型例といえるでしょう。このような厳しい制約の中から、新しいアイディアを生み出している姿勢がとても印象的でした。


施工中の雨とプレファブ工法の役割

また、カウフマン氏は講演では、施工中の雨による木材の濡れを極力避けることの重要性についても触れていました。木材は湿気を含むことで品質が低下する可能性があるため、建材の搬入スケジュールや現場の雨対策が設計と同じくらい重要だと強調しています。

オーストリアと比較し、『施工途中で雨が降っても雨漏りしない』という竹中工務店の施工技術を高く評価していました。この点は、日本の施工現場における優れた管理体制と技術力を象徴していると言えます。日本の施工現場では、雨のリスクを避ける工夫が投稿などで話題になるように、雨対策は日本の施工現場において、重要な管理項目の一つです。日本の施工体制の素晴らしいポイントの一つです。

迅速施工を実現するため採用されたプレファブ工法には、木材を湿気から守りながら作業効率を上げるという、カウフマン氏の哲学が反映されています。

出典:Hermann Kaufmann Architekten: Architecture and Construction Details

持続可能な技術としての可能性


カウフマン氏の設計は、シンプルなデザインと精緻なディテールなど、その意匠面に注目が集まりがちです。ですが、その設計を実現するために、直面した条件から逃げず、粘り強く問題解決を重ねるカウフマン氏の姿勢に強い印象を受けました。

竹中工務店の雨対策や迅速施工の技術は、プレファブ工法の可能性をさらに広げ、日本独自の建築価値をさらに深化させました。また、カウフマン氏が示した厳しい規制の中で創造性を発揮する設計哲学は、私たちの未来の建築を導く重要な示唆に満ちています。この技術の進化は、単なる効率化ではなく、持続可能な社会に向けた新しい価値創造の一環です。こうした建築の可能性を、私たちの生活や環境にどのように活用できるのか、一緒に考え続けたいと思います。

前回の記事はこちらからどうぞ

プレファブシステムの実践:モック千葉工場での経験とサンブ杉の可能性

357447310 3483421815229240 7326254691707343117 n

1年前にFacebookでプレファブシステムについて投稿しましたが、あれからの経験や考えを少し更新しつつ、改めて振り返りたいと思います。特に、モック千葉工場での実践を通じて、プレファブ工法の可能性と現場での課題を深く実感しました。

モック千葉工場では、親会社である山長グループの紀州材を使用しています。その品質管理の高さには非常に感銘を受けました。プレファブ工法における安定した材質の提供は、施工の精度と効率に直結し、大きなメリットをもたらします。しかし、私は地元千葉県のサンブ杉をもっと活用できないかと考えています。

そこで、サンブ杉をプレファブ工法に適用するための方法を模索してきました。特に、山長の紀州材と同等の品質管理を実現できる千葉県内の製材所を見つける必要があると感じています。もしサンブ杉がその基準を満たせば、地元資源を使ったサステナブルな建築の可能性がさらに広がります。

この取り組みが、地域経済の活性化にも貢献することは間違いありません。今後も地元の工務店や職人との連携を深め、地域資源を最大限に活かした建築に取り組んでいきたいと思います。

詳しくはこちらの記事もご覧ください:
1年前の記事ですが、今でも大切な経験です) Facebook投稿リンク

6月のニュースレター バウビオロギー講座受講中です

Baubio 新25の行動指針

2024年から始めた月の振返り、しばらく下書きのまま放置してしまいまして、月末の投稿です。こんにちは、Koukiです。

数か月前のお話、バウビオロギー講座のスクーリングに参加しました。現在は全講座の1/3まで受講している段階で、今後はオンラインにてスクーリング講座が開催されるようです。

日本バウビオロギー研究会の通信講座を受講しています。

日頃の活動として、PHJメンバーの設計した建物を見学したり、昨年はミライの住宅さん主催の住宅空調講座@埼玉に参加しています。当然ながら、高性能住宅では全館空調が多く、エアコンなどの機器を利用した考え方が主流になっています。

しかしながら、夏季の高温多湿の外気を取り入れて通風でどうにかしようという考えは今さらありませんが、一方で性能や効率に特化した設計や思想だけではバランスが悪いと考える機会も増えてきました。さらに、EMFA(日本電磁波協会)の2級測定士の試験でもバウビオロギーについて軽く触れていまして、そこからバウビオロギーへの興味が広がっていきました。

バウビオロギーを学び始めて分かったことは、その名が示す通り、建築・生命・論理を包括するビジョンと範囲の広さです。つまり、”ホリスティックに考え行動する”という目標のためには、幅広い知識が必要不可欠なのです。そのため、講座テキストも多岐にわたり、建築技術だけでなく、生態学、環境科学、心理学、さらには哲学的な要素まで含まれています。

バウビオロギーの考え方は、単に建物の性能や効率を追求するだけでなく、人間と自然環境との調和を重視します。言い換えれば、これまで学んできた高性能住宅の設計とは異なる視点を提供してくれたのです。例えば、自然素材の活用や室内の空気質、電磁波の影響など、従来の設計では見過ごされがちな要素にも注目します。

また、バウビオロギーは持続可能性にも重点を置いています。すなわち、エネルギー効率だけでなく、建材の生産から廃棄までのライフサイクル全体を考慮することで、真の意味での環境負荷の低減を目指しているのです。

まだまだ講座の半ばですが、今までの学びを通じて、私は設計者としての視野が大きく広がったと感じています。高性能住宅の技術的な側面と、バウビオロギーの全体論的なアプローチを融合させることで、より豊かで持続可能な住環境を創造できる可能性が見えてきました。

今後は、これらの新しい知見を自分の設計実践にどのように取り入れていくか、具体的な方法を模索していきたいと思います。同時に、クライアントにもこの新しいアプローチの価値を伝え、共に理想的な住まいづくりを進めていければと考えています。講座の終了までにしばらく時間が必要ですが、今後の受講がとても楽しみです。

バウビオロギーの学びは、私にとって単なる知識の獲得以上の意味を持ちました。それは、建築実務者としての責任と可能性を再認識する機会となったのです。

暮らしとともに育つ家──アップデートしやすい設計の考え方

住宅や建築の設計をしていて常々感じるのは、家が究極の一品製作品だということ。
家電や自動車はメーカーが巨額の開発費を投じて作る工業製品ですが、住宅は一品もののオーダーメイド。
同じ形の土地でも、敷地が変われば条件も変わり、まったく同じ家にはなりません。

暮らしをアップデートする

建物が完成して暮らし始めると、「もう少しこうしたい」と思う部分が出てくることがあります。
それを手を入れながら自分たちの暮らしに近づけていくことも、家を楽しむひとつの形ではないでしょうか。
住宅は、完成した時がゴールではなく、暮らしながら少しずつ完成に近づいていくもの。
家族の成長に合わせたり、好みに寄せたりしながら手を加えていくことが大切だと思います。

とはいえ、未完成の状態でお渡ししているわけではありません。
設計前にはしっかりヒアリングを行い、ご要望を反映します。
ただ、予算の関係ですべてが叶うわけではないのも事実です。

そこで、設計では 「後から変えにくい部分はしっかり作る」 ことを重視しています。
例えば、耐震等級や壁の中に隠れる断熱材など、建物の性能に関わる部分にはしっかり予算をかける。
一方で、内装や仕上げなど 後から変更しやすい部分は、暮らしの変化に合わせて手を入れられる ほうがいい。
そんな考え方で、アップデートしやすい設計を心がけています。

設計の工夫 〜シミュレーションの活用〜

後から変えにくい部分は、設計段階でしっかりと決める。
耐震等級や壁の中の断熱材など、建物の性能に関わる部分は後から手を加えるのが難しいため、設計時にしっかりと検討し、最適な形を追求することが重要 です。

そのために、パッシブ設計を確実に機能させるためのシミュレーション を活用しています。

まずは敷地環境を知る


最初に行うのは、パッシブデザインで大切な日射取得を左右する敷地環境の確認 です。
周囲の建物が敷地にどんな影響を与えるか、シミュレーションで確認します。
南側だけでなく、東・西側の建物の影響も大きいことがあるので、事前の予測と合わせて検討します。
「この方向なら日射を取り込めるはず」と思っていても、シミュレーションをすると意外な影響が見えてくることもあります。
数値や視覚的な分析をもとに、パッシブデザインに基づいて最適な建物配置や窓の設計を進める ことが、アップデートしやすい住まいの第一歩です。

住まいをアップデートしやすい設計を考えるためには、敷地環境を正しく把握することが大切です。
→ 詳しくはこちら『敷地と環境を活かす建築デザイン:シミュレーションの力

建物の性能を決める

次に行うのが、屋根・外壁・床・開口部などの外皮性能を決定する作業 です
ホームズ君新住協のQPex を活用し、断熱材の種類や厚さ、開口部の仕様を細かく計算。

設計の過程では、ホームズ君とQPexを行ったり来たりしながら、仕様を決めていく ことになります。
QPexは断熱材の種類や厚さ、開口部の仕様を入力すると、Ua値や暖冷房エネルギーの計算ができる ので、とても便利です。


特に、断熱性能は一度施工すると後から大きく変更できない部分 なので、設計段階でしっかりとした検討が必要です。
ここでのシミュレーションは、「将来的にメンテナンスしやすい設計」と「変えにくい性能を最適化する設計」のバランスを取る ために重要な工程になります。

室温シミュレーションで快適性を確認

次に、ホームズ君を使った室温シミュレーション を行い、計画した仕様が快適性を満たすかを検証します。
シミュレーション結果をもとに、開口部の配置や断熱仕様を微調整し、エネルギー効率と快適性を両立する最適なプラン を探ります

さらに、パッシブハウス・ジャパンの「建物燃費ナビ」も活用し、エネルギー消費量を確認。

次に 建物の性能を決定する作業。こうして 性能を数値で検証しながら設計することで、住み始めてからの快適性が確保される ことにつながります。

施工が伴ってはじめて性能が生きる

そして、どれだけ良い設計をしても、施工が適切でなければ性能は発揮されませんシミュレーション結果を現場で正確に再現できるかどうか も、住まいの性能を決定づける重要なポイントです。

このため、施工時にも適切な断熱・気密施工が行われているか確認しながら、設計の意図をしっかりと伝えることを心がけています。

家は、暮らしとともに成長する

家は、完成した瞬間がゴールではなく、暮らしとともに成長し、アップデートしていくものです。
設計の段階で 「変えられない部分はしっかり」「変えやすい部分は柔軟に」 を意識することで、住まいはより快適になります。
あなたの暮らしにフィットする家を、一緒に考えてみませんか?
まずはお気軽にご相談ください。

家を計画するなら、まずは敷地環境を知ることが重要です。
『日当たりをシミュレーションする:敷地編』を読む

あなたの住まいも、アップデートできます。まずは無料相談から始めませんか?
設計のご相談はこちら

工bar〜工場が一夜限りのbarになります〜

IMG

大人の秘密基地

週末、お招きをいただき、一夜限りのバー”工bar”にお邪魔してきました。

入場門から見えない奥のほうにある工場へ進むと灯りが見えます。ひっそりと営業中ですが、中に入ると沢山に人で賑わっています。まるで秘密基地みたい。カッコ良すぎです!

大人の遊び心

普段は鯰組さんの工場(こうば)として使われているのですが、照明デザイナー、フラワーデザイナー、花器デザイナー、ケータリング、バー、ワイン醸造家などなどが集まり、工場が”工bar”にデザインされていました。

工場や建設機械は実用的なデザインで魅力がありますが、やはりデザインすると別世界、特に照明の効果は絶大ですね。

照明は工場や現場で使われている仮設の照明を使っているそうですがこの雰囲気。テーブルのキャンドルの明かりでお酒が飲めるなんて幸せです。

バーカウンターも工場の加工機に組み込まれたりと工夫が沢山です。しかもバーカウンターは全て無垢材。私は丸太をひいた加工前の無垢板で一杯いただきました。なんて贅沢!

DJブースもあり、フォトコンテストも開催、盛りだくさんスギ(笑)プロジェクターでは インスタに投稿をするとスライドショーで写してくれました。

しかも餅つき臼と杵の本格的な餅つき大会まであり、久しぶりに餅つきもやらせていただきました。つきたてのお餅も美味しかった!

遊び心が沢山ある、とても楽しい素敵な工barでした。工barのきっかけは新丸ビルにある現バーを鯰組さんが施工したのが発想の始まりだそうです。

鯰組さんの工場ということですが、企画運営や準備はさぞかし大変だったと思います。貴重な機会を本当にありがとうございました。

主催:(株)鯰組さん
協力:(株)タニタハウジングウェアさん
照明デザイン:廣木 花織さん
ケータリング:アホウドリさん
出張バー:ジムルームさん

 

 

 

 

意外と燃えない木材の話:木材の防火性能と準耐火構造の可能性

1.都電に乗って向かった準耐火木造建築の講演会

初めて都電に乗って都電テーブル鬼子母神前へ。

改札が無くて戸惑いましたが、バスと同じ仕組みなんですね!”チン!”というベルの音が発車の合図。夕暮れ時と重なってノスタルジックな雰囲気。

タニタさんの外壁材、ZIGが45分準耐火の認定を取得した記念講演会+懇親会に参加です。

2.木材の防火性能は意外と高い?45分準耐火構造の実力

木材は簡単に燃えるものと思い込んでいませんか?私はキャンプで薪を燃やすのが得意ですからそう思っていました(違)

ですが技術を使うと火に晒されても45分間は燃え抜けない外壁を作ることができるのです。

ちなみに、この45分、火事が発生してから建物が崩れ落ちる前に消火できる時間だそうです。

私の仕事の範囲では45分準耐火の仕様はほとんどありませんが建物の防火を考える時に必要な知識が増えました。

3.建築基準法改正が広げる木造準耐火建築の可能性

今回の講演で建築基準法改正による防火についての違いもキャッチアップ。講師の桜設計集団、安井先生によると、今回の法改正の内容は建物の防火に関しては今後しばらくないほどの大きな内容とのこと。

法改正により今まで木造で建てることができ無かった規模の木造建築が、ZIGの45分準耐火構造+構造設計をクリアすれば、建てることが可能になります。大工さんが住宅以外の建物を建てることができるわけです。

4.温熱性能と耐久性のバランス――在来木造の知見が活きる


サッシについても木造住宅の方が性能が良い(特に温熱)ので温熱に優れた建物にすることが可能になります。ですが耐久性には少し注意が必要そうで、特に柱間に充填断熱をした構造の場合、在来木造の知識がないと問題が発生しそうです。



5.試験体の“萌える”瞬間と、防火・断熱の共通点

また実務を担当された 桜設計集団、加來さんが試験体が燃えている、萌える画像(プロには)を紹介されていました。ですが燃えている炎が小さくて一般人には萌える画像ではありません。もっと炎や煙が充満しているほうが。。。

この事は温熱の分野でも同じこと。しっかりと断熱された建物ほどサーモカメラ画像が均一になってしまい盛り上がらない事と同じ、と腑に落ちました。

6.懇親会で広がる建築談義

懇親会では都電テーブルさんの素材を生かした料理が並び、美味しく楽しむことができました。
初対面の人ばかりでしたが建築談義で盛り上がります。
板金の納まり、伝説の職人話などなど、向かい合っていないと話せない内容盛りだくさん。
 

7.伊礼先生の開発秘話で締めくくり

最後はZIGの開発者でもある伊礼先生の〆でお開きに。開発秘話もなるほどでした。
 
 
タニタさん、楽しい企画をありがとうございました。

補足:防火認定番号や改正内容

  • 外壁材「ZIG」の準耐火認定
     外壁の45分準耐火構造として防火認定を取得。※認定番号は手元資料の正式表記をご確認のうえ記入してください(例:認定番号:****)。

  • 建築基準法改正(概要)
     一定条件を満たすことで、従来は木造で計画しづらかった規模・用途の建築でも、準耐火構造+適切な構造設計により木造化の可能性が拡大。

  • 温熱との関係
     木製サッシ等により温熱性能(断熱・気密)を高水準にしやすい一方、柱間充填断熱の採用時は防露計画・通気層の連続性・開口部まわりの納まりなど耐久性の配慮が必須。

  • 実務メモ
     試験体の燃焼挙動は炎や煙の派手さ=性能ではないことの確認に有用。断熱のサーモ画像が均一になるのと同様、“目立たない”ことが性能の証左になる場合がある。

※本補足は講演時点のメモ的整理です。詳細仕様・認定番号は最新資料をご確認ください。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

ヴィンテージチェアの座面張り替え:経年変化を楽しむリペアの魅力

IMG

座面の張り替えで蘇った椅子の快適さ

椅子の座面の張り替えをしてもらいました。右がbefor 左がafterになります。

画像をみてもお分かりのように、古い椅子と比較してみると座面の高さは2、3 ㎝ ほど高くなっています長年の使用で内部のウレタンが劣化してつぶれ、そうとう薄くなっていたようです。

ウレタンは硬さの違うウレタンを2種類を使い、座面の生地も椅子専用の生地で張り替えてもらっています。椅子専用生地なので摩耗性にも優れているようですし触り心地も良いです。

張り替えと同時に椅子の緩みも閉めてもらいガタツキが少なくなりました。

座り心地もよく、今までよく我慢されていたと思います。ウレタンがすこしづつ劣化していくので座り心地が悪くなっているのに気が付きづらいんですよね。

修理と買い替え、どちらを選ぶべきか

今回の張り替え費用は張り替え生地を含めて8000円です。

ダイニングチェアを調べてみると、なんと新しいダイニングチェアも変えてしまう金額なんですね。ですから少し迷う金額です。

金額だけを考えると新しく買い替えてしまいたくなりますが椅子の雰囲気やダイニングテーブルの相性とを考えると修理するのも良いのではと思います。

特に、この椅子には古い真鍮のマイナスネジで固定された背板があり、ヴィンテージならではのディテールが光ります。こうした魅力を大切にしたい方には、張り替えという選択肢がぴったりではないでしょうか。

経年変化を楽しむ暮らし方

座り心地が良くなったので、残りの2脚も改めて張り替えてもらうことになりました。10年以上使った椅子ですがまだまだ使えそうです。ヴィンテージ家具の魅力は、経年変化が生み出す深い味わいと、丁寧なメンテナンスによって長く使い続けられるところにあります。

「古いものを修理して使い続ける」という行為は、単なる節約ではなく、愛着を持って暮らすための大切なステップです。家具を大切に使う姿勢は、家族や住まいに対する思いと重なります。手間をかけて蘇った椅子たちは、また新しい思い出を刻んでいくことでしょう。

 前編記事とのリンク

座面の張り替えを考える前に、椅子の修理や経年変化の魅力についてもっと知りたい方は、前編の「ヴィンテージチェアーのリペア:愛着を持って家具を使う」もぜひご覧ください。

台風への備えはできていますか?:雨戸やシャッターで住まいを守る

L7A4882

雨戸やシャッターで住まいを守る

Facebookで見つけた台風対策の参考投稿をシェアしました。その内容を忘備録としてブログにまとめています。SNSのおかげで貴重な情報を簡単に共有できるのは本当にありがたいですね。

その投稿を忘備録としてblogにまとめてみます。SNSのお陰でこのような貴重な情報がシェアできるようになり、ほんとうにに有難いです!

シェア元はこちら。https://goo.gl/aqdWnb

鹿児島に学ぶ台風対策

投稿主は松尾設計室の松尾代表です。建物の通気部材専門のメーカー、ハウゼコの神戸社長と松尾設計室の松尾代表が座談会を行った時の内容を松尾代表がまとめてFBに投稿されていました。

ハウゼコの神戸社長は鹿児島に勤務経験があり、鹿児島では風速50メートルの台風は毎年経験済みで、その時の経験を話されていたようです。

鹿児島の住宅において行われていた台風対策として以下のようになります。

 

  • 大窓にはすべて雨戸かシャッターをつける
  • 小窓に関しては鹿児島では準防火地域ではなくても網入りガラスを入れる
  • 飛散防止対策としてカーポートにネットをかける。
    台風に慣れてくる?と他人に迷惑をかけないように対策をすることができる。
    ネットはゴルフ場で使っているようなグリーンのネットが多かった。
  • 屋根が飛ぶのは屋根下地が腐っているから。屋根の腐食対策が必要になってくる。


台風21号の風速50メートルを超える暴風雨で被害を受けた関西地方ですが、今後はそのような災害が全国に広がっていく可能性もあります。

今後の家づくりでも、鹿児島の住宅で行われていた対策が重要になってくると思います。

千葉の建売住宅でも、2階に雨戸やシャッターが無い住宅を見かけます。比較的新しい物件のほうがその傾向があるようです。

建物の印象では雨戸やシャッターが無い方がシンプルでスッキリとした印象がしますし、予算が厳しい時には減額の対象にもなってきます。

今まで大きな被害を受けたことが無い地域ですから仕方がないとも言えます。

ですが、これからの異常気象を考えると、雨戸やシャッター無しでは建物に大きな被害を及ぼす可能性が大きくなってきますから、今後の家づくりでは雨戸やシャッターは必須です。

高性能サッシと雨戸の組み合わせは可能か?

標準仕様ではない場合も設置できます!

さんむの家ではYKKの樹脂サッシを採用したのですが、カタログでは雨戸は標準仕様にはなっていませんでした。

ですが、工務店さん、YKKさんと相談し汎用の雨戸を流用して取り付け、工務店さんに鏡板を木製で作ってもらい雨戸を取りつけることができました。

納まりも苦労しましたし、コストアップになってしまったので竣工時は悩みましたが、今年の台風の被害を目にすると、費用と手間はかかりましたが、今となっては安心材料です。

家づくりでは基本性能を重視

家づくりでは住まい手の沢山の理想と実現するための予算の関係があります。

機能満載のキッチン等の設備類に目が行きがちで、断熱材や耐震性など目に見えない部分には後回しになっていませんか?

ですが完成後に追加ですることができない家の基本性能に予算をかけるべきです。

今後は雨戸やシャッターも基本性能の一つになると思いますので、雨戸やシャッターも基本性能の一部と考え、家づくりに取り入れましょう。

まとめ

台風対策は、家づくりやリフォームの際に忘れてはならない要素です。鹿児島の知見を参考に、雨戸やシャッターを採用し、住まいを守りましょう。Facebookでも引き続き情報を発信していきます!

最後に私のFBはこちらです!https://www.facebook.com/oga.kouki

カーポートのネットで飛散防止を

神戸社長のアドバイス:
カーポートのポリカは台風時にブーメランのように飛び、凶器になることがあります。ゴルフ用ネットをかけて飛散を防ぎましょう。飛散物は災害の被害を拡大させるため、各自の注意が必要です。

台風時の飛散画像をみると紙のように屋根材が飛んでいきますが、それぞれにそれなりの重量があり凶器ですよね。

ネットをかける、ちょっとしたことで、災害は防ぐことができます。

飛散物も元をたどれば持ち主がいるわけですから、各自の注意が重要ですね。

本当に災害対策が必要な時代が到来したように思います。

追記

20190203

エコハウス大賞シンポジウム 松尾和也先生の講演より

シャッターとサッシの間に段ボールを詰めるとシャッターがバタつかないようです。