自然素材で実現する快適空間:持続可能な住まいづくり

自然素材で仕上げた壁や天井は、ただ美しいだけでなく、住む人の健康と環境にも配慮した選択です。また時間とともに美しく経年変化する様子も楽しめます。

住まいの壁や天井を、環境に優しい自然素材で仕上げる選択が注目されています。中でも、日本エムテクスの「ビーナスコート」は、アップサイクル素材を使用し、持続可能な住まいづくりに貢献する製品として人気を集めています。本記事では、ビーナスコートの特性や施工例、環境面でのメリットをご紹介します。

ビーナスコートの特徴と魅力

『卵からうまれた仕上げクリーム』というキャッチフレーズが示すように、ビーナスコートの主原材料は「卵の殻」と「火山灰」です。この2つの材料が持つユニークな特性を活かし、以下のような特徴があります:

  • 美観と経年変化:
    • 自然素材ならではの質感と、時間とともに味わいが増す特徴が魅力です。
  • 意匠性の高さ:
    • 塗装でも左官仕上げでも施工可能で、ローラーやコテ、吹付けなど、施工方法を選ばない柔軟性があります。ビーナスコートを施工する際には、下地処理が特に重要です。下地が均一でないと仕上がりに影響が出るため、適切な補修を行うことが不可欠です。

「卵の殻」と「火山灰」のどちらも、本来廃棄される材料をアップサイクルして活用しており、地球環境に負荷をかけない製品と言えます。

ビーナスコートの機能として、調湿効果や臭気吸着効果が挙げられます。ただし、これらは単独で大きな効果を期待するものではなく、エアコンや換気設備を補完する役割と考えると現実的です。それよりも、自然素材の美しさや経年変化による味わいが住まい全体の価値を高める大きな要因となります。

自然素材の仕上げは初期費用がかかる場合がありますが、経年変化による味わいが生まれることで、結果的にコストパフォーマンスが良い選択となることが多いです。コストが気になる場合は、壁はビーナスコート、天井はオガファーザー仕上げといった組み合わせもおすすめです。

サンブスギのような無垢材の床仕上げとの相性も良いビーナスコートは、空間全体を調和の取れたものに仕上げます。

日本エムテクスの取り組みとアップサイクルの価値

日本エムテクスの製品開発の根底には、「資源循環型社会づくりへの貢献」という理念があります。同社は廃棄される材料をアップサイクルして製品化することを得意としており、その取り組みには深い共感を覚えます。

「新しい素材を使わず、既存の資源を活かして作る」という発想は、持続可能な社会の実現に必要不可欠な考え方です。ビーナスコートのような素材は、環境負荷を抑えつつ美しい仕上がりを実現できるため、住宅設計において重要な選択肢となります。

壁・天井を自然素材で仕上げるメリット

自然素材を選ぶことで、以下のような多くのメリットが得られます:

  1. 美観と経年変化:
    • 自然素材ならではの美しさと、時を経るごとに味わいが増す特性。
    • 例えば、リビングルームの壁にビーナスコートを使用した際、昼間の自然光を受けて壁が柔らかな光沢を放ち、落ち着いた空間を演出しました。夜間はブラケット照明の間接光が優しく写し出される影のグラデーションも美しく感じます。
  2. 意匠性の高さ:
    • 部屋全体の統一感と自然な風合いが得られます。
  3. 環境負荷の軽減:
    • 輸送距離の短縮やリサイクル材料の使用により、環境への負担を軽減。

結論: 自然素材で未来を創る住まい

自然素材を壁や天井に取り入れることで、住まいに健康的で心地よい空間を提供し、持続可能な社会にも貢献できます。

自然素材は新建材と比較をするとコストアップになりますが、工夫をすることで取り入れることも可能になりますので、是非検討してみてください。例えば、天井にはオガファーザー仕上げを採用することで、コストを抑えつつ美観を保つことができます。

これからの住まいづくりを考える際には、環境にも住む人にも優しい選択肢として、自然素材を取り入れるアイデアをぜひ取り入れてみてください。

厳しい規制の中で生まれる創造性:カウフマン建築が教えること

先日投稿しました建築家ヘルマンカウフマン氏の講演会の続きになります。
今回の記事では、竹中工務店との協力による日本の施工現場での実践例に注目しました。

一方、前回の記事では、ウッドステーションやモックの技術進化について触れています。それらの技術が背景にあることで、本記事で取り上げるパッシブタウン第5期街区の事例にも、さらに深い意義が生まれています。


(※前回の講演記事はこちら

施工技術と設計哲学:パッシブタウン第5期街区

 YKK不動産が推進する「パッシブタウン」プロジェクトの最終街区が公開されました。このプロジェクトは、富山県産材を87%使用し、脱炭素建築を目指しています。RCコア構造により地震力を軽減し、耐火性を備えた木質ハイブリッド構造が特徴。Power to Gas技術やプレファブ工法の活用による効率的な省エネ設計が、持続可能な社会への一歩として注目されています。 

記事のリンクはこちらから

木質ハイブリッド構造でつくる最先端の脱炭素建築(※日経クロステックより要約)」

YKK Passivetown, Kurobe Hermann Kaufmann + Partner ZT GmbHより


環境と技術の最適解を求めて

カウフマン氏の日本の地震に対する法規や消防法への対応は、非常に大変だったとのことでした。(通訳の方が訳した「消防法」という言葉は、おそらく「防火規定」を指しているのでしょう)

講演中にカウフマン氏の基本図面と実施図面を比較する機会がありました。センターコアの占める割合や厚さ、カーテンウォールの厚さなどが大きく異なり、これらを比較することで、日本の規制が建築デザインに与える影響を具体的に理解することができました。またオーストリアのフォアアールベルク州にあるLifeCycle Tower (LCT ONE)との比較も行われ、コア(LCT ONEでは片側偏心コアでしたが)の割合の違いは一目瞭然でした。


カウフマン氏の設計では、スラブの薄さやカーテンウォールの軽やかさがとても魅力的ですが、日本の厳しい耐震・防火規定により、設計の見直しが必要となりました。その中で、竹中工務店と協力し、RCコアを増強しつつも木材の活用を最大限に引き出したハイブリッド構造という革新的な解決策が生まれました。


建築設計において、与えられた条件の中で最適解を導き出すプロセスは、単なる制約への対応ではなく、新たな価値を創造する機会となります。このパッシブタウン第5期街区プロジェクトは、まさにその典型例といえるでしょう。このような厳しい制約の中から、新しいアイディアを生み出している姿勢がとても印象的でした。


施工中の雨とプレファブ工法の役割

また、カウフマン氏は講演では、施工中の雨による木材の濡れを極力避けることの重要性についても触れていました。木材は湿気を含むことで品質が低下する可能性があるため、建材の搬入スケジュールや現場の雨対策が設計と同じくらい重要だと強調しています。

オーストリアと比較し、『施工途中で雨が降っても雨漏りしない』という竹中工務店の施工技術を高く評価していました。この点は、日本の施工現場における優れた管理体制と技術力を象徴していると言えます。日本の施工現場では、雨のリスクを避ける工夫が投稿などで話題になるように、雨対策は日本の施工現場において、重要な管理項目の一つです。日本の施工体制の素晴らしいポイントの一つです。

迅速施工を実現するため採用されたプレファブ工法には、木材を湿気から守りながら作業効率を上げるという、カウフマン氏の哲学が反映されています。

持続可能な技術としての可能性


カウフマン氏の設計は、シンプルなデザインと精緻なディテールなど、その意匠面に注目が集まりがちです。ですが、その設計を実現するために、直面した条件から逃げず、粘り強く問題解決を重ねるカウフマン氏の姿勢に強い印象を受けました。

竹中工務店の雨対策や迅速施工の技術は、プレファブ工法の可能性をさらに広げ、日本独自の建築価値をさらに深化させました。また、カウフマン氏が示した厳しい規制の中で創造性を発揮する設計哲学は、私たちの未来の建築を導く重要な示唆に満ちています。この技術の進化は、単なる効率化ではなく、持続可能な社会に向けた新しい価値創造の一環です。こうした建築の可能性を、私たちの生活や環境にどのように活用できるのか、一緒に考え続けたいと思います。

前回の記事はこちらからどうぞ

プレファブシステムの実践:モック千葉工場での経験とサンブ杉の可能性

1年前にFacebookでプレファブシステムについて投稿しましたが、あれからの経験や考えを少し更新しつつ、改めて振り返りたいと思います。特に、モック千葉工場での実践を通じて、プレファブ工法の可能性と現場での課題を深く実感しました。

モック千葉工場では、親会社である山長グループの紀州材を使用しています。その品質管理の高さには非常に感銘を受けました。プレファブ工法における安定した材質の提供は、施工の精度と効率に直結し、大きなメリットをもたらします。しかし、私は地元千葉県のサンブ杉をもっと活用できないかと考えています。

そこで、サンブ杉をプレファブ工法に適用するための方法を模索してきました。特に、山長の紀州材と同等の品質管理を実現できる千葉県内の製材所を見つける必要があると感じています。もしサンブ杉がその基準を満たせば、地元資源を使ったサステナブルな建築の可能性がさらに広がります。

この取り組みが、地域経済の活性化にも貢献することは間違いありません。今後も地元の工務店や職人との連携を深め、地域資源を最大限に活かした建築に取り組んでいきたいと思います。

詳しくはこちらの記事もご覧ください:
1年前の記事ですが、今でも大切な経験です) Facebook投稿リンク

6月のニュースレター バウビオロギー講座受講中です

2024年から始めた月の振返り、しばらく下書きのまま放置してしまいまして、月末の投稿です。こんにちは、Koukiです。

数か月前のお話、バウビオロギー講座のスクーリングに参加しました。現在は全講座の1/3まで受講している段階で、今後はオンラインにてスクーリング講座が開催されるようです。

日本バウビオロギー研究会の通信講座を受講しています。

日頃の活動として、PHJメンバーの設計した建物を見学したり、昨年はミライの住宅さん主催の住宅空調講座@埼玉に参加しています。当然ながら、高性能住宅では全館空調が多く、エアコンなどの機器を利用した考え方が主流になっています。

しかしながら、夏季の高温多湿の外気を取り入れて通風でどうにかしようという考えは今さらありませんが、一方で性能や効率に特化した設計や思想だけではバランスが悪いと考える機会も増えてきました。さらに、EMFA(日本電磁波協会)の2級測定士の試験でもバウビオロギーについて軽く触れていまして、そこからバウビオロギーへの興味が広がっていきました。

バウビオロギーを学び始めて分かったことは、その名が示す通り、建築・生命・論理を包括するビジョンと範囲の広さです。つまり、”ホリスティックに考え行動する”という目標のためには、幅広い知識が必要不可欠なのです。そのため、講座テキストも多岐にわたり、建築技術だけでなく、生態学、環境科学、心理学、さらには哲学的な要素まで含まれています。

バウビオロギーの考え方は、単に建物の性能や効率を追求するだけでなく、人間と自然環境との調和を重視します。言い換えれば、これまで学んできた高性能住宅の設計とは異なる視点を提供してくれたのです。例えば、自然素材の活用や室内の空気質、電磁波の影響など、従来の設計では見過ごされがちな要素にも注目します。

また、バウビオロギーは持続可能性にも重点を置いています。すなわち、エネルギー効率だけでなく、建材の生産から廃棄までのライフサイクル全体を考慮することで、真の意味での環境負荷の低減を目指しているのです。

まだまだ講座の半ばですが、今までの学びを通じて、私は設計者としての視野が大きく広がったと感じています。高性能住宅の技術的な側面と、バウビオロギーの全体論的なアプローチを融合させることで、より豊かで持続可能な住環境を創造できる可能性が見えてきました。

今後は、これらの新しい知見を自分の設計実践にどのように取り入れていくか、具体的な方法を模索していきたいと思います。同時に、クライアントにもこの新しいアプローチの価値を伝え、共に理想的な住まいづくりを進めていければと考えています。講座の終了までにしばらく時間が必要ですが、今後の受講がとても楽しみです。

バウビオロギーの学びは、私にとって単なる知識の獲得以上の意味を持ちました。それは、建築実務者としての責任と可能性を再認識する機会となったのです。