暮らしとともに育つ家──アップデートしやすい設計の考え方

住宅や建築の設計をしていて常々感じるのは、家が究極の一品製作品だということ。
家電や自動車はメーカーが巨額の開発費を投じて作る工業製品ですが、住宅は一品もののオーダーメイド。
同じ形の土地でも、敷地が変われば条件も変わり、まったく同じ家にはなりません。

暮らしをアップデートする

建物が完成して暮らし始めると、「もう少しこうしたい」と思う部分が出てくることがあります。
それを手を入れながら自分たちの暮らしに近づけていくことも、家を楽しむひとつの形ではないでしょうか。
住宅は、完成した時がゴールではなく、暮らしながら少しずつ完成に近づいていくもの。
家族の成長に合わせたり、好みに寄せたりしながら手を加えていくことが大切だと思います。

とはいえ、未完成の状態でお渡ししているわけではありません。
設計前にはしっかりヒアリングを行い、ご要望を反映します。
ただ、予算の関係ですべてが叶うわけではないのも事実です。

そこで、設計では 「後から変えにくい部分はしっかり作る」 ことを重視しています。
例えば、耐震等級や壁の中に隠れる断熱材など、建物の性能に関わる部分にはしっかり予算をかける。
一方で、内装や仕上げなど 後から変更しやすい部分は、暮らしの変化に合わせて手を入れられる ほうがいい。
そんな考え方で、アップデートしやすい設計を心がけています。

設計の工夫 〜シミュレーションの活用〜

後から変えにくい部分は、設計段階でしっかりと決める。
耐震等級や壁の中の断熱材など、建物の性能に関わる部分は後から手を加えるのが難しいため、設計時にしっかりと検討し、最適な形を追求することが重要 です。

そのために、パッシブ設計を確実に機能させるためのシミュレーション を活用しています。

まずは敷地環境を知る


最初に行うのは、パッシブデザインで大切な日射取得を左右する敷地環境の確認 です。
周囲の建物が敷地にどんな影響を与えるか、シミュレーションで確認します。
南側だけでなく、東・西側の建物の影響も大きいことがあるので、事前の予測と合わせて検討します。
「この方向なら日射を取り込めるはず」と思っていても、シミュレーションをすると意外な影響が見えてくることもあります。
数値や視覚的な分析をもとに、パッシブデザインに基づいて最適な建物配置や窓の設計を進める ことが、アップデートしやすい住まいの第一歩です。

住まいをアップデートしやすい設計を考えるためには、敷地環境を正しく把握することが大切です。
→ 詳しくはこちら『敷地と環境を活かす建築デザイン:シミュレーションの力

建物の性能を決める

次に行うのが、屋根・外壁・床・開口部などの外皮性能を決定する作業 です
ホームズ君新住協のQPex を活用し、断熱材の種類や厚さ、開口部の仕様を細かく計算。

設計の過程では、ホームズ君とQPexを行ったり来たりしながら、仕様を決めていく ことになります。
QPexは断熱材の種類や厚さ、開口部の仕様を入力すると、Ua値や暖冷房エネルギーの計算ができる ので、とても便利です。


特に、断熱性能は一度施工すると後から大きく変更できない部分 なので、設計段階でしっかりとした検討が必要です。
ここでのシミュレーションは、「将来的にメンテナンスしやすい設計」と「変えにくい性能を最適化する設計」のバランスを取る ために重要な工程になります。

室温シミュレーションで快適性を確認

次に、ホームズ君を使った室温シミュレーション を行い、計画した仕様が快適性を満たすかを検証します。
シミュレーション結果をもとに、開口部の配置や断熱仕様を微調整し、エネルギー効率と快適性を両立する最適なプラン を探ります

さらに、パッシブハウス・ジャパンの「建物燃費ナビ」も活用し、エネルギー消費量を確認。

次に 建物の性能を決定する作業。こうして 性能を数値で検証しながら設計することで、住み始めてからの快適性が確保される ことにつながります。

施工が伴ってはじめて性能が生きる

そして、どれだけ良い設計をしても、施工が適切でなければ性能は発揮されませんシミュレーション結果を現場で正確に再現できるかどうか も、住まいの性能を決定づける重要なポイントです。

このため、施工時にも適切な断熱・気密施工が行われているか確認しながら、設計の意図をしっかりと伝えることを心がけています。

家は、暮らしとともに成長する

家は、完成した瞬間がゴールではなく、暮らしとともに成長し、アップデートしていくものです。
設計の段階で 「変えられない部分はしっかり」「変えやすい部分は柔軟に」 を意識することで、住まいはより快適になります。
あなたの暮らしにフィットする家を、一緒に考えてみませんか?
まずはお気軽にご相談ください。

家を計画するなら、まずは敷地環境を知ることが重要です。
『日当たりをシミュレーションする:敷地編』を読む

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