台風への備えはできていますか?:雨戸やシャッターで住まいを守る

L7A4882

雨戸やシャッターで住まいを守る

Facebookで見つけた台風対策の参考投稿をシェアしました。その内容を忘備録としてブログにまとめています。SNSのおかげで貴重な情報を簡単に共有できるのは本当にありがたいですね。

その投稿を忘備録としてblogにまとめてみます。SNSのお陰でこのような貴重な情報がシェアできるようになり、ほんとうにに有難いです!

シェア元はこちら。https://goo.gl/aqdWnb

鹿児島に学ぶ台風対策

投稿主は松尾設計室の松尾代表です。建物の通気部材専門のメーカー、ハウゼコの神戸社長と松尾設計室の松尾代表が座談会を行った時の内容を松尾代表がまとめてFBに投稿されていました。

ハウゼコの神戸社長は鹿児島に勤務経験があり、鹿児島では風速50メートルの台風は毎年経験済みで、その時の経験を話されていたようです。

鹿児島の住宅において行われていた台風対策として以下のようになります。

 

  • 大窓にはすべて雨戸かシャッターをつける
  • 小窓に関しては鹿児島では準防火地域ではなくても網入りガラスを入れる
  • 飛散防止対策としてカーポートにネットをかける。
    台風に慣れてくる?と他人に迷惑をかけないように対策をすることができる。
    ネットはゴルフ場で使っているようなグリーンのネットが多かった。
  • 屋根が飛ぶのは屋根下地が腐っているから。屋根の腐食対策が必要になってくる。


台風21号の風速50メートルを超える暴風雨で被害を受けた関西地方ですが、今後はそのような災害が全国に広がっていく可能性もあります。

今後の家づくりでも、鹿児島の住宅で行われていた対策が重要になってくると思います。

千葉の建売住宅でも、2階に雨戸やシャッターが無い住宅を見かけます。比較的新しい物件のほうがその傾向があるようです。

建物の印象では雨戸やシャッターが無い方がシンプルでスッキリとした印象がしますし、予算が厳しい時には減額の対象にもなってきます。

今まで大きな被害を受けたことが無い地域ですから仕方がないとも言えます。

ですが、これからの異常気象を考えると、雨戸やシャッター無しでは建物に大きな被害を及ぼす可能性が大きくなってきますから、今後の家づくりでは雨戸やシャッターは必須です。

高性能サッシと雨戸の組み合わせは可能か?

標準仕様ではない場合も設置できます!

さんむの家ではYKKの樹脂サッシを採用したのですが、カタログでは雨戸は標準仕様にはなっていませんでした。

ですが、工務店さん、YKKさんと相談し汎用の雨戸を流用して取り付け、工務店さんに鏡板を木製で作ってもらい雨戸を取りつけることができました。

納まりも苦労しましたし、コストアップになってしまったので竣工時は悩みましたが、今年の台風の被害を目にすると、費用と手間はかかりましたが、今となっては安心材料です。

家づくりでは基本性能を重視

家づくりでは住まい手の沢山の理想と実現するための予算の関係があります。

機能満載のキッチン等の設備類に目が行きがちで、断熱材や耐震性など目に見えない部分には後回しになっていませんか?

ですが完成後に追加ですることができない家の基本性能に予算をかけるべきです。

今後は雨戸やシャッターも基本性能の一つになると思いますので、雨戸やシャッターも基本性能の一部と考え、家づくりに取り入れましょう。

まとめ

台風対策は、家づくりやリフォームの際に忘れてはならない要素です。鹿児島の知見を参考に、雨戸やシャッターを採用し、住まいを守りましょう。Facebookでも引き続き情報を発信していきます!

最後に私のFBはこちらです!https://www.facebook.com/oga.kouki

カーポートのネットで飛散防止を

神戸社長のアドバイス:
カーポートのポリカは台風時にブーメランのように飛び、凶器になることがあります。ゴルフ用ネットをかけて飛散を防ぎましょう。飛散物は災害の被害を拡大させるため、各自の注意が必要です。

台風時の飛散画像をみると紙のように屋根材が飛んでいきますが、それぞれにそれなりの重量があり凶器ですよね。

ネットをかける、ちょっとしたことで、災害は防ぐことができます。

飛散物も元をたどれば持ち主がいるわけですから、各自の注意が重要ですね。

本当に災害対策が必要な時代が到来したように思います。

追記

20190203

エコハウス大賞シンポジウム 松尾和也先生の講演より

シャッターとサッシの間に段ボールを詰めるとシャッターがバタつかないようです。

 

 

 

 

建築探訪 千葉県文化会館

千葉県文化会館&中央図書館:近代建築の魅力を探る

近代モダン建築の宝:大高正人が設計した50年の歴史

建築家・大高正人さんが設計した千葉県文化会館と千葉県立中央図書館を建築探訪してきました。
どちらも大高雅人さんの設計した築50年になる貴重な近代モダン建築です。
この建物探訪シリーズでは、設計士の視点から建築の魅力と構造的工夫を読み解きます。高性能住宅とは異なるアプローチの中にも、設計のヒントが詰まっています。

千葉県文化会館では石橋館長にお話を聞くことができました。
昨年は50周年のシンポジウムも開催され、その参加者の多さに驚いたとのこと。
オリジナルの保全に努める一方、現在のニーズに合わせた改修を施し、丁寧に運営されています。

荘厳なエントランスホールとコンクリートの表現力

エントランスホールは、まるで宗教建築のような荘厳な雰囲気を漂わせています。建物はコンクリート打放しですが、表面ツルツルの仕上げではなくて、表面を細かくはつった、はつり仕上げ等もありその表情は豊かです。柱や壁も垂直ではなくて少し斜めになっていたり、曲線を描いていて有機的。

水底のような空間:トップライトが照らすホワイエ

大ホールのホワイエは、トップライトから差し込む水色の光と壁面の水色が相乗効果を生み、まるで水底から水面を見上げているような不思議な感覚に包まれます。

コンクリートの表面が荒々しく力強く感じます。現代の建築にはない表現力が感じられ、まさに近代モダン建築の真髄です

千葉県文化会館と共に、大高正人が設計した 千葉県立中央図書館 も近代モダン建築の代表作として知られています。プレキャスト工法の斬新な構造やワッフル状スラブのディテールに注目。建築技術の視点からも楽しめる建築です。
👉 [千葉県立中央図書館の建築探訪はこちら]

築50年を迎える建築の課題と対応

ですが築50年になる近代モダン建築なので、問題点となるのが設備面の不具合です。人間も50年の年月を重ねれば不具合が出てきますから、建築も同じです。

トイレは竣工時の数では足りなくなっていて、数回増設をしているようです。当時と違って基準も変わり、現在のホールはトイレの数が多いですからね。
ホールの空調関係は、暑さ寒さなどの室温問題で利用者さんからクレームがあるようですが、配管類が埋め込みのために設備更新が難しいようです。旧式の空調設備を運用しているようですが細かい設定ができないようで、運営者としての苦労も多いようです。現代の空調設備ではボタン一つで細かな設定が可能なため、それと比較すると温度調整が難しいようです。

建物案内のピクトサインも、オリジナルはもっとシンプルなデザインだったそうです。こちらも利用者さんの声で現在のピクトサインになったようです。

また補修部材の多くが廃版になっており、床のPタイルの補修なども苦労されています。
オリジナルの近代モダン建築の雰囲気の良さは残していきながら、建物利用者の要望をどの程度反映させていくことができるか課題となっているようです。

近代モダン建築の保存と未来

近代モダン建築は、歴史的価値だけでなく、建築技術の発展の証としても重要です。特に千葉県立中央図書館と千葉県文化会館は、千葉の文化的景観を形成する「千葉文化の森」としての価値もあります。

しかし、設備の老朽化や耐震問題により、解体・建て替えの可能性が議論されています。建築の保存と活用のバランスを考えながら、どうすれば未来へ受け継げるのか、一緒に考えてみませんか?

温熱改修のアイデアと難しさ

今回はパッシブハウスジャパンの高本さんと一緒に見学したのですが、高本さんから”この建物の温熱改修依頼がきたらどうします?”なんて問いかけが!さすがの温熱の専門家です。

コンクリート打放しが特徴の近代モダン建築。コンクリート打放しの構造が熱橋となるため、その対策が課題となります。ある程度の熱橋は我慢する、いや、カーテンウォールで覆ってしまう等アイディアが浮かびます。ファイナルアンサーは”ガラスだけは複層にしてコンクリートの熱橋問題は目をつぶる”では専門家として失格?

唯一無二の近代建築を未来へ:保存と活用の可能性

千葉県文化会館と千葉県立中央図書館は、同じく大高正人が設計した近代モダン建築です。両建築は一体的に計画され、それぞれ異なる魅力を持っています。

👉 [千葉県立中央図書館の建築探訪はこちら]

不思議ですが建物は使っていないとドンドン傷んできます。室内の空気が停滞すると湿気も停滞してカビ等で建物をむしばんでいきます。

千葉県文化会館は唯一無二の貴重な近代モダン建築。オリジナルの良さを残しながら性能面を改善して、少しでも長く利用されることを願います。

千葉県立中央図書館と千葉県文化会館を未来へ残すために

千葉県立中央図書館は DOCOMOMO Japan に選定された近代モダン建築であり、プレキャスト工法の先駆けとしても貴重な建物です。また、千葉県文化会館と共に「千葉文化の森」を形成する重要な建築群であり、一体的な保存が求められます。

現在、千葉工業大学・藤木竜也准教授による『千葉県立中央図書館保存活用検討報告書』が発表されています。 詳細はこちらのBlogをご覧ください。
🔗 [千葉県立中央図書館保存活用検討報告書]

これらの建築が今後も大切にされるよう、関心を持ち続けることが大切です。 保存活動を支援する方法として、以下のようなアクションが考えられます。

  • SNSで建築の魅力を発信する(#千葉文化の森 #近代モダン建築 などのハッシュタグを活用)
  • 保存活動を行っている団体・大学の情報をシェアする
  • 建築探訪や見学会に参加し、関心を持つ人を増やす

この文化的な財産を未来に残していくために、一緒に考えてみませんか?

 

いま見ても斬新なプレキャスト工法 千葉県立中央図書館

建築探訪:千葉県文化会館と千葉県立中央図書館

千葉県文化会館と千葉県立中央図書館を建築探訪してきました。建物は大高正人の設計。

隣接する二つの建物である千葉県文化会館と千葉県立美術館も合わせて設計されたようです。

この建物探訪シリーズでは、設計士の視点から建築の魅力と構造的工夫を読み解きます。高性能住宅とは異なるアプローチの中にも、設計のヒントが詰まっています。

近代モダン建築の名作:DOCOMOMO Japanに選定された図書館

千葉県立中央図書館はDOCOMOMO Japanに選定されている近代モダン建築の一つです。

千葉県立中央図書館はDOCOMOMO 096です。

 

カーテンウォールとワッフル状スラブの美しさ 

この建物は地下2階・地上5階建てですが、隣の千葉県文化会館側からアプローチすると敷地に高低差があるため、2階建てに見えます。

丁寧に割り付けられたカーテンウォールが、繊細で美しい印象を与えます
深い軒の張り出しにより、カーテンウォールに陰影が映り、さらに美しく見えます。

PCa・PC工法とは? その斬新さと技術的特徴

ワッフル状のPCaスラブは、まるで美味しそうなディテールです

持ち出しの梁端部を注意深く観察すると、プレキャスト工法で建設されていることに気が付きました。
エントランスの庇部分も、建物本体と同じワッフル状のスラブ材で構成されており、それがプレキャスト工法の手がかりとなります。
大高正人の設計とは知っていましたがまさかのプレキャスト工法。当時は目新しい工法だったに違い無いです。

PCa・PC工法とは何か?
工場で製作された柱・梁などのプレキャスト部材を、プレストレスにより一体化し建築物を構築する工法です。
柱梁接合部を場所打ちコンクリートで施工する場合や、柱を鉄筋コンクリート造にするなど、敷地や工期・コストなどの条件により様々なバリエーションがあります。

参照:株式会社建研HP

図書館内部の雰囲気と設備の更新

2階の閲覧室から隣の文化会館へつながるブリッジ。文化会館と一体に計画されていたんですね。残念ながら通行禁止。

千葉県立中央図書館は、大高正人の設計によるDOCOMOMO選定の近代モダン建築。その隣にある 千葉県文化会館 も同じく大高正人が手掛けた名建築です。エントランスの荘厳な空間やコンクリートの力強い表現は必見。
👉 [千葉県文化会館の建築探訪はこちら]

建物内部に入ってみると天井のワッフル状のスラブ材が目に飛び込んできます。
現場打ちのコンクリートと違いプレキャストのコンクリート表面は美しいです。
2階の閲覧室も落ち着いた雰囲気。
閲覧用の机や椅子も、建設当時からのものが使われており、当時の雰囲気を感じられます。

ですが設備更新が難しいようで後付けの配管類がいたるところに見えています。
照度も足りないようで照明も追加されていたり、検索用のPC周りも配管だらけ。当時は検索用のPCなどありませんから仕方がないですね。

近代モダン建築の保存と未来

近代モダン建築は、歴史的価値だけでなく、建築技術の発展の証としても重要です。特に千葉県立中央図書館と千葉県文化会館は、千葉の文化的景観を形成する「千葉文化の森」としての価値もあります。

しかし、設備の老朽化や耐震問題により、解体・建て替えの可能性が議論されています。建築の保存と活用のバランスを考えながら、どうすれば未来へ受け継げるのか、一緒に考えてみませんか?

プレキャスト工法がもたらす耐震の課題と保存の可能性

「千葉県立図書館基本構想案」p23より
平成24年に実施した改修計画事前調査の結果、耐震改修が技術的に難しい
問題を抱えていることが判明しており、他にも改修に伴う工事費の不経済性、建物の
老朽化やバリアフリー不足、書庫不足などの様々な問題点を考慮すると、建物自体の
建替えを最も現実的な選択肢として検討する段階にあると言えます。

さらに耐震診断で危険と判断された箇所は立ち入り禁止になっていました。

千葉県文化会館と千葉県立中央図書館は、同じく大高正人が設計した近代モダン建築です。両建築は一体的に計画され、それぞれ異なる魅力を持っています。

👉 [千葉県文化会館の建築探訪はこちら]

残念ながら、この建物の特徴となっているプレキャスト工法が耐震改修を難しくしているようです。
貴重な建築ですが設備の老朽化、耐震性からは目を背けることができません。
ですが、この建物は、やはり貴重な文化遺産です。保存されることが望まれます。

千葉県立中央図書館と千葉県文化会館を未来へ残すために

千葉県立中央図書館は DOCOMOMO Japan に選定された近代モダン建築であり、プレキャスト工法の先駆けとしても貴重な建物です。また、千葉県文化会館と共に「千葉文化の森」を形成する重要な建築群であり、一体的な保存が求められます。

千葉県立中央図書館は耐震改修が困難であるため、建て替えの可能性も議論されています。しかし、近代建築の歴史的価値や、プレキャスト工法の貴重な事例であることから、保存の可能性も模索されています。現在、千葉工業大学・藤木竜也准教授による『千葉県立中央図書館保存活用検討報告書』が発表されています。 詳細はこちらのBlogをご覧ください。
🔗 [千葉県立中央図書館保存活用検討報告書]

これらの建築が今後も大切にされるよう、関心を持ち続けることが大切です。 保存活動を支援する方法として、以下のようなアクションが考えられます。

  • SNSで建築の魅力を発信する(#千葉文化の森 #近代モダン建築 などのハッシュタグを活用)
  • 保存活動を行っている団体・大学の情報をシェアする
  • 建築探訪や見学会に参加し、関心を持つ人を増やす

この文化的な財産を未来に残していくために、一緒に考えてみませんか?

里山と板倉建築

IMG

神社が近くにある里山の一角に、昔ながらの建て方、板倉工法で建てられた建物を見学してきました。板倉工法で建てられた建物を実際に見学するのは初めて。

一般的な在来工法と違う建て方なのだから、きっと住まいや暮らし方もきっと違うはずです。そんなことを考えながらの見学です

伝統工法から進化

板倉工法は柱の間に溝を掘ってそこに厚板を落とし込んで壁をつくる工法です。4寸角の柱と一寸厚の板で基本構造をつくります。柱と柱の間に筋交いや構造合板で耐力を確保する、在来工法や2×4と違い主要構造部には接合用の構造金物をつかわずに、大工さんによる木組みの継手で建てられています。

 

柱と横架材の接合も大工さんの手仕事による仕口に込栓と呼ばれる木製のピンを打ち込んで接合しています。板倉工法は落とし込んだ厚板の室内側がそのまま仕上げとなってくるので、構造と仕上げが一体になった無駄の無い仕組みが魅力的です。

 

 

里山の暮らしを再現する

見学した住宅は土間を中心とした吹き抜けが中心となっていて、丸太を加工した事がわかる太鼓梁や登り梁を見事にくみ上げた小屋組も見応えがありました。在来工法のような定形材を使ったリズミカルな小屋組も美しいですが大工さんの手仕事がわかる小屋組も見応えがあって良いですね。

 

室内建具には一部古い建具が使われていて新築なのにまるで古民家のような雰囲気。土間にはマキストーブ、給湯はマキやペレットを燃やしてお湯を沸かす給湯器が使われています。この建物が建てられているのは里山の一角です。燃料としてマキを調達することができれば、まるで昔ながらの里山の暮らしが実現出来そうです。

国内材の流通をデザインする

また板倉工法の材料は主にスギが使われてます。国内で調達しやすい材料を選んでいるそうです。スギは日本各地で植樹されていて調達のしやすい材料。

ですが安価な輸入材に押されて国産材のスギの需要が低迷。森林の手入れができずに荒れているニュースを見かけます。日本の森林から伐採されて木材となり建物になる。こんなサイクルを取り戻す事ができれば輸入材を減らすことができます。

板倉工法のようにスギ材を有効利用できる工法が一般化して、使用量が増えれば森林の荒廃を食い止める1つの方法になりそうです。

今回の建物は千葉のサンブスギを使って建てられていました。地元の良い材料を集め、大工さんが腕を振るったようです。職人不足で大工さんも減っている建設業界。腕のたつ経験豊富な大工さんも減っていますが、施工会社の石井工業(株)さまは板倉工法のような仕事ができるように様々な取り組みをされているようです。

板倉工法と復興住宅

また板倉は復興用の仮設住宅にも使われています。他工法のプレファブの住宅と比較すると板倉工法では無垢の木が仕上げに使われているので生活をしていると気持ちが安らぐようです。災害時の緊急用の仮設住宅の役目を終えた後も、解体をされて復興住宅として再利用されているようです。このような再利用ができる事も板倉工法の特徴の1つです。

板倉工法は金物を使わないので古民家の改修にも適していそうです。古民家を改修するときも耐力壁の追加が必要になるのですが、古民家のような金物を使わない構造に板倉工法は馴染みそうにです。施工方法の検討が必要ですが機会があれば採用してみたい工法です。

見学会を開催してくださったお施主様、板倉工法を詳しく説明していただいた(株)里山建築研究所さま、施工の石井工業(株)さま、貴重な機会をありがとうございました。

建物探訪 秩父の高橋建築さんの高性能住宅を体感してきました

IMG

埼玉・秩父で数多くの高性能住宅を手がける 高橋建築(株) のオープンハウスに参加しました。
猛暑の中でもエアコンの風を感じない快適な室内環境、秩父の風景に馴染む美しいデザイン、そして“ハワイの木陰”を目指した設計思想…。
見学を通じて、高橋建築の 確かな技術と設計哲学 を実感しました。
今回のオープンハウスで得た気づきや設計の工夫について、詳しくレポートします。

秩父の自然に溶け込むパッシブハウス

オープンハウスが開催された建物と遠くに見える名物の断層「ようばけ」

高橋建築(株)の代表高橋さんは数多くの高性能住宅を建てられているので高気密高断熱への知識や経験が豊富です。今回のオープンハウスも今まで高橋さんが積み上げてきたパッシブハウスのノウハウがつまった住まいとなっていました。

当日はクルマで伺ったのですが、遠くから見えてきた建物が秩父の山の稜線や名物の断層「ようばけ」をバックに景観になじんでいます。

これは建物に付属するカーポートも木の外壁できれいにつくられているのがその理由の1つでしょう。アルミのカーポートだとどうしても景観となじまな雰囲気になってしまいます。

猛暑でも快適な室内環境

当日の外気温は36度。ですが室内に入ると、冷房で急激に冷やされる嫌な感じでは無くジンワリと汗が引いていきます。普通の性能の家だとエアコンに扇風機を追加して身体に当たる風で涼しさを得ることが多いのですが、この建物では身体に風が当たる感覚がほとんど無しで心地良い涼しさを感じます。

高性能住宅では夏になると湿度が上がってしまい蒸した感覚を感じることもあるのですが、そんな感覚も全く感じません。

天井面を冷やす画期的な手法

後日、高橋さんからサーモ画像が送られてきました。2階の室内を撮影した画像ですが青→赤の順で温度が高くなっています。よく見ると天井面が青くなっていますね。天井と壁の隅の部分が一番温度が低くなっていて、まるで冷気のカーテンが降りているようです。しかもエアコンが見えません。この仕組みは高橋さんのblogで!
普通の性能の家の2階天井面は直射日光で温められた屋根の熱で熱くなってしまいます。その熱くなった天井面が室内を温めてしまうのです。ですが、この建物は天井面を冷やすことに成功しています。冷気は暖気と比べると重いので冷気が自然落下してくるので涼しく感じる仕組みになっています。説明するのは簡単ですがこれを実現するのは大変だったみたいです。その苦労話は直接高橋さんへ!

ハワイの木陰を目指した快適設計

高橋さんはこの建物を設計するときに”ハワイの木陰”を目指したと話されていました。実は高橋さんも私もハワイの木陰を経験したことがないのですがきっとこんな感じに違いないと思います。

景色を楽しむ設計の工夫

屋根勾配が「ようばけ」の勾配とほとんど同じ!

この建物は大きな吹き抜けがあるリビングからの景色が最高に美しく、吹き抜けの東側の窓からは名物の「ようばけ」を観ることができます。

ですが、パッシブハウスの設計では建物の東側の窓は小さめがセオリーとなっていて、この建物ではあえてセオリーに従っていません。

この事を高橋さんにお聞きすると、今回の敷地は東側には化石が発見される有名な断層「ようばけ」が位置しているので、あえてセオリーを無視して、「ようばけ」が見えるように東面に大きな窓を設けたそうです。

性能と暮らしのバランス

設計にあたって、セオリーを守って建物性能の為に暮らしの楽しみを奪ってしまうようなことをせずに、2つの要素を比較検討して、必要ならば建物性能をむやみに追求しないようなバランスを保っているように感じました。これも数多くの高性能住宅を作ってこられた高橋さんならではの技術だと思います。

職人技が光る室内の造作

室内の造作家具や建具も高橋さん自ら造作されているので落ち着いた雰囲気が心地良いです。杉の無垢材でつくられているので経年変化が楽しみな雰囲気です。造作カウンターも厚板の杉の無垢材で造られているので、お客さんも喜ばれるそうです。

高橋建築のこだわりと実力

”有名ハウスメーカーさんと競合しても大丈夫”と笑って話す高橋さん。建物を体感してみると、高橋さん以外に頼む理由が見つかりません。

一般公開に前日に伺ったので高橋さんはエアコンのセッティングの真っ最中。そんな忙しい中いつもの笑顔で迎えてくださいました。PHJの仲間と言うことで質問にも丁寧に答えていただき感謝しています。

オープンハウスで体感した価値

高橋建築の家づくりを体感し、ただ数値が高いだけではない「本当の快適さ」を知ることができました。

私も高橋さんが目標とされている”木陰のような涼しさ”を目標にしたいと思います。

オープンハウスを開催してくださったお施主さま、高橋建築(株)さま、貴重な機会をありがとうございました。

ヴィンテージチェアーのリペア:愛着を持って家具を使う

IMG
撮影:FULL SPECTRUM

家族で大切にしてきたダイニングチェアーの具合が良くありません。なんとなく椅子がギシギシときしむ感じがします。家にやってきて10年、生産されてから30年経つかも。

メーカーは不明で、ヴィンテージのデンマーク製だと推測できます。背もたれや座面の固定ビスがマイナスなので古いものでしょう。

名作椅子ではありませんが、背もたれのプライウッドや真鍮製の固定ビスの雰囲気が大好きで丁寧に使っていました。

丁寧に使っていても、寄る年波には勝てないようでフレームの接合部分にゆるみが出てきているようです。多分フレームのゆるみがギシギシする原因でしょう。ここで新品に交換するのも良いのですが、もうひと頑張りしてもらおうと考えて家具屋さんに修理の相談をすることにしました。
まるで海外の家具屋さんの雰囲気

修理を相談したのは、柏にあるchair-chairさん。

椅子やソファをメインに取り扱い、ご覧の通り沢山のアイテムが展示されています。アメリカのヴィンテージプロダクツを得意として、店長自ら海外へ買い付けに行きます。特にイームズコレクションはかなりの充実ぶりです。
 
大竹さんは椅子を見て一言。

”この椅子、座面のクッションが全くありません!ウレタンがダメになっていると思います”

そうなんです。座面のクッションになるウレタン製の下地が経年劣化でつぶれてしまい、クッションがまるで効いていない状態だったのです。板の上に直接座っているような感じですね。
 
”経年変化で使っている人は気が付きづらいんです。ですがウレタンを交換すると座り心地がとても改善しますよ”
 
椅子のゆるみを相談する前に大切な部分を見抜いてくれます。椅子は座り心地が大切ですから我慢するところではありません。せっかく椅子の修理をお願いにきたのですから、アドバイス通りに座面のウレタンも交換してもらうことにしました。

ちなみに、大竹さんは新品の椅子を購入するときにもイメージが違ったら気軽に張り替えることをお勧めしています。気軽にイメージチェンジを楽しんで欲しいとのことなんです。

張替に使う生地もヘリボーン織やチェック織など数種類あります。サンプル生地を張った椅子もあり悩んだ末にこの生地に決定しました。遠くからみるとカスリ生地のような和の雰囲気が気にいりました。肌触りも気持ちが良いです。色も悩みましたが、椅子の濃いブラウンに合いそうなグリーンに決定。

気になる金額は分解手間等によって異なるけど一万円以下で仕上がるそう。古いデンマーク製の椅子に似合うかどうか今から楽しみにしています。
原因の一つは、間違った座り方。踏ん反り返るような姿勢で背もたれに余計な荷重をかける姿勢などはご法度です。
 
新しい椅子ならば強度もあるので壊れないと思うのですが、古い椅子なので仕方が無いと思います。間違った座り方は壊れないにしても新しい椅子でもそれなりにダメージがあると思うので正しい座り方は必要です。
 
椅子に浅く腰かけて背もたれにもたれかかるのはとても楽な姿勢ですが姿勢には悪いそうで腰痛の原因にもなります。ですから椅子に座るときは、背筋を伸ばして座ると骨盤が直立して姿勢にも良いですし、椅子に変な力を加えることがありません。
古い物、経年変化が美しい素材を使ったの物は、手入れとともに扱い方が大切です。

正直、面倒くさいと思うこともありますね。

住まいでも同じで、天然素材を使ったところには少し使い方に気遣いをすると長持ちします。無垢の床板と付き合う時も、重い物や堅い物は引きずらないように少し気遣うだけでも随分違うと思います。でも大らかな気持ちで大丈夫、細かい傷は美しい経年変化になります。

経年変化を楽しめる素材は少し手間がかかります。だけど、そんな手間も許せるような素材を選んで暮らしていけたら幸せですね。

ダイニングチェアーの修理は1か月ほど。どのような姿で戻ってくるのか今から楽しみです。

椅子の修理が完了し、張り替えられた座面で快適さが蘇った様子を新しい記事でご紹介しています。修理前後の比較や、張り替え作業で得られた気付きについて詳しくお伝えしていますので、こちらもぜひご覧ください!

👉 ヴィンテージチェアの座面張り替え:経年変化を楽しむリペアの魅力

経年変化を楽しむ椅子のリペアストーリー、あなたも一緒に体感しませんか?

「目黒本町の家」の内覧会に参加しました

IMG

建物は住まい手さんに引き渡される前に行われる内覧会はとても貴重な体験です。建物は体感してみて解ることも多くてとても勉強になります。

今回は「目黒本町の家」の内覧会に参加してきました。
設計・監理は戸田晃建築設計事務所さんです。
戸田さんは、新築の建物に古い建具や建材を上手に組みこんで設計されていて、古い住まいが持っている思い出を上手に引継いでいます。

 

私も古い建具や建材を取り入れますが、現場では大変なことが多いです。古い部材を再利用するために壊さないように丁寧に解体するのはとても大変で大工さんに丁寧に解体をお願いしたりします。どうにか解体したのはいいのですが、解体した部材の保管場所を探したりするのもひと手間です。最後に部材を取り付ける段階になっても苦労が続きます。部材の痛みが激しかったり、反ってしまったりと簡単に取り付けができなかったりと大変なことばかり。工務店さん、大工さんに申し訳がありません。。。でも、そんな苦労を乗り越えて新しい部材の中に古い建具がさりげなく納まっている姿はとても雰囲気が良いと思っています。

さて、「目黒本町の家」では新旧の部材の組み合わせが絶妙でした。また古い部材が張りぼてに見えないような見事な設計で上手に建物に組み込んでいるところが見どころです。各職方さんの仕事も丁寧で息のあった仕事は不思議と見ているこちらがと楽しくなってきます。

また新しい建具類も無垢の木からつくられていて、こちらも経年変化でどんどん美しくなっていくはず。古い物と新しい物の境界がわからなくなっていくのも天然素材を使う楽しみだと私も思います。

 

古い建物の壁材を腰壁として再利用

新しい部材をバックにして古い板壁と障子が生えます

スイッチも雰囲気があります

 

 

 

 

 

 

遊び心もたくさん

 

 

 

 

 

 

 

やはり古い建具や部材は新しい部材にない魅力をもっていて、上手に組み合わせるとさらに魅力を増すことを感じました。その魅力は時間を重ねたきれいな経年変化です。そこには新建材の組み合わせでは決してできない魅力がありますね。ギャップ萌えです。大工さんの手わざも見事なもので、ホントほれぼれしました。

戸田さんとお話しする中でも、新旧を組み合わせるスタイルは苦労することが多いけれども古い部材の魅力は変えるものが無いと話されいたのが印象的で、私も全面的に共感します。

また、この建物はスキップフロアになっていて、建て方も随分苦労したとのこと。プレカット業者さんにもお会いしましたが相当悩んだようです。現場担当の監督さんも笑顔を見せながらの苦労話をしていました。ですが、その笑顔は素晴らしく「目黒本町の家」の出来栄えを象徴しているように思えました。

「目黒本町の家」の住まい手さんは、過去のオープンハウスに参加されて、戸田さんの設計思想に触れ設計が大きく前進したお話を聞きました。住まいが完成するまでは長い時間が必要ですから、住まい手さんと設計者の付き合う時間は必然的に長くなってきます。そんな長い時間を一緒に走り切るには深い部分での共感が大切だと改めて感じます。

「目黒本町の家」のお施主さま、戸田晃建築設計事務所さま、森屋建設株式会社さま、改めて貴重な体験をありがとうございました。

 

[amazon_link asins=’4899771754′ template=’ProductGrid’ store=’sachisogo-22′ marketplace=’JP’ link_id=’2458b09b-834e-11e8-a337-6986b59ea822′]

 

 

 

 

 

 

 

「阿佐ヶ谷書庫」の内覧会に参加しました

Pht shoko03
「6坪の敷地に一万冊の蔵書と実家にある一族の仏壇がおさまる書庫を設計してください。」
もしあなたが建築家だったら、こんな依頼がきたらどんな設計をしますか?

内覧会に参加することができた「阿佐ヶ谷書庫」は社会経済学者の松原隆一郎さん夫妻がオーナー、建築家の堀部安嗣さんが設計を手がけた建物です。

扉の向こうは別世界

画像 阿佐ヶ谷書庫プロジェクト より

「阿佐ヶ谷書庫」は地上2階建、地下1階の建物。

扉を開けて中に入ると建物の真ん中が円柱の吹抜になっています。

建物3階分の高さの円柱の吹抜内部が全て本棚になっていて、一万冊の蔵書と仏壇がきっちりと納まっています。

吹抜の頂上には円形のトップライトがあり、そこから自然光が降りてきます。吹抜の最下部、建物の一番下に座っても、トップライトからのやわらかい光を感じることができます。井戸の底から見上げた景色はきっとこんな感覚なんだろうなと思うけど、井戸の中より居心地が良いと思います。小さなトップライトから10メートル下まで降り注ぐ自然光を視ていると、太陽光の力強さありがたみを感じます。

本棚の内側にはらせん階段が取りついていて本を手にすることができます。
本の背表紙を眺めなが進んでいくと螺旋状に上下して自分の立ち位置がわからなくなってきます。
加えて平面も円形なので方向もわからなくなります。

しかも本棚に切れ目が無いので永遠に連続するような不思議な感覚です。

1万冊の蔵書と仏壇の関係

画像 ozonestaff blogより

ですが、唯一区切りとなる場所があります。

それは本棚の一部をくり抜くように設置された仏壇です。

内覧会の冒頭、松原先生は”堀部さんが設計した「阿佐ヶ谷書庫」は、一万冊の蔵書が収まった本棚と仏壇で松原家の歴史や記憶を再構築しているようだ”と話されていました。

一万冊の蔵書が連続する本棚のなかで切れ目なく続いているのは、歴史や記憶が続いてることと同じように思えます。
仏壇は暮らしの中でご先祖様を意識する場所。人の死を意識する場所。
歴史の中で時折訪れる人の死。人生の歩みのなかで一度立ち止まる場所です。
本棚の中で区切りとなる仏壇が、「阿佐ヶ谷書庫」で再現された松原家の歴史の中で死を表しているのでしょう。

「阿佐ヶ谷書庫」の中に仏壇があることが大きな意味を持っているように思えます。

アーティスト作品がキラリと光る

貴重な体験がもう一つ、アーティスト前川秀樹さんが制作した像刻にも出会えましたした。
それもそのはず、松原夫人は阿佐ヶ谷のにある器とカフェ”ひねもすのたり”のオーナーさんで、お店にも前川秀樹さんの像刻が飾ってあります。玄関の扉や表札もアーティストが作ったのでは?と感じる仕上がりで、これも松原夫人のアーティスト人脈ならではと思います。

「阿佐ヶ谷書庫」では、前川秀樹さんの像刻は螺旋階段の頂上部にが飾ってありトップライトのやわらかい光の中で見る作品は、ギャラリーで見るときよりも神秘的に感じました。

前川秀樹さんの像刻作品集です→Vōmer : 前川秀樹像刻作品集

ご縁から、前川秀樹さんの土浦の倉庫/アトリエDALDAの基本設計をさせていただきました!
リンクはこちらです→たかが倉庫、されど倉庫 DALDA

建物完成後もプロジェクトが続く

「阿佐ヶ谷書庫」の内覧会に参加するにあたって、建物が完成するまでの全過程をまとめた書籍を読みました。
「阿佐ヶ谷書庫」が完成するまでの過程をまとめた物語なのですが、内覧会に参加してみると、その物語がまだまだ続いているように感じました。
今回の内覧会に合わせるように、松原隆一郎さんは祖父の松原頼介さんの生涯を追いかけた頼介伝を出版されました。
住宅は施主の個人的な思いを建物にしたものなのでそれぞれが個性的になります。
”二度と建てることができない建物”というぐらいの個性的な「阿佐ヶ谷書庫」は松原隆一郎さん夫妻、堀部安嗣さんだからこそ建築することができた建物だと強く感じました。そしてまだまだ続いていくプロジェクトのように思えます。

今回の内覧会は「堀部建築建」を体験できるだけでなく、「阿佐ヶ谷書庫」物語の一部に触れる貴重な体験となりました。

温かい家と「脳年齢」「健康寿命」の関係 -日経アーキテクチャ 2018/06/14号より

アーキ表紙

省エネ住宅って性能が良いのはわかるけど何が良いのでしょうか。省エネですから エネルギーの使用量が少ない=お財布にやさしい 事はもちろんです。

省エネ住宅は冬の室内が暖かいので健康のためにも良い関係があるようなのです。

今回は日経アーキテクチャ 2018/06/14号 の記事を紹介します。この雑誌は建築の専門誌なので本屋さんでは目にする機会がないと思います。その中の特集記事で省エネ住宅と健康についての内容です。

慶応義塾大学の伊香賀俊治教授と「省エネNext」編集長の小原隆編集長の対談記事になります。

温かい家と「脳年齢」「健康寿命」の関係

伊香賀俊治教授の研究によると住環境の改善が住まい手の健康寿命を左右することが少しずつ解ってきているようなのです。以下記事から抜粋します。

  • 住まい手の死亡件数が冬季に多いのは国別を問わない。
  • 断熱住宅(二重サッシまたは断熱ガラスを備えた住宅)の普及率と冬季の死亡率は関係がある。その割合いは北海道や東北などの外気温が低い地方ほど少ない傾向がある。つまり断熱住宅の普及率が高いほど死亡リスクが低い傾向がみられる。
  • 深夜零時の室温が18℃以上を保つ住宅と18℃未満の住宅では、高血圧の発症率は後者のほうが対象人数ベースで6.7倍
  • 足元の温度が3℃暖かい家に住む人の方が脳年齢が6歳若い状態に匹敵する

なるほど、特に冬の室内温度が大切で、冬に温かい家と「脳年齢」や「健康寿命」に関係性が見えるとのことです。

断熱住宅と死亡率の関係は意外でした。東北に住んでいる人が関東に遊びにくると、”関東の家は寒くて大変”という愚痴をよく聞きますが、寒い家は死亡率も高めてしまう危険があるわけです。

実際、海外では室内の温度の最低基準が決められている国もあるくらい冬の室内温度は健康に重要です。伊香賀俊治教授によると総合的なエビデンスを確立するまでには調査研究が必要なようですが、断熱性能を備えた冬に温かい家が健康に良いことは間違いないです。

断熱リノベーションで健康に

新築住宅や、最近建てられた住宅は断熱住宅であることが多いです。ですが国内の古い住宅では断熱効果が低いものや、断熱材が入っていないものが多いとする調査結果があります。
古い建物では冬の住まいを効率よく温かくするために断熱リフォームが必要になってきます。
寒い冬、無断熱の家で一部屋だけ石油ストーブで暖房をしていては効率が悪いですし、お風呂やトイレでの温度差も気になります。
一人暮らしになってしまったご両親にセコムが安心だけど、健康のためにも暖かい住まいになるように断熱リノベーションを計画してみたらいかがでしょうか?
断熱リノベーションは暮らし方や予算に合わせて計画することができます。
家全体を断熱する大規模なものかから、生活する部分を想定して断熱する「ゾーン断熱」まであります。

長生きのために生活習慣、食事習慣を改善する指導もあるけれど、住まいの改善指導ができる時代がやってきて欲しいです。

健康になる食事についてはこの本が参考になりました

[amazon_link asins=’4492046240′ template=’ProductGrid’ store=’sachisogo-22′ marketplace=’JP’ link_id=’e8592b82-71b4-11e8-aa69-653f8c5a081e’]

持続可能な木造建築とは? ヘルマン・カウフマン氏講演会

Bigセミナー2018

木造建築でここまで出来る驚きがありました

先日、建築家ヘルマン・カウフマン氏の講演会に参加してきました。

建築実務者としても向上心を抱くこともできた素晴らしい講演でしたので、自分にとっての忘備録としても残しておきたいと思います。

Big セミナー2018 「持続可能な省エネ・木造建築自然と調和する建築デザイン」

フォアアールベルク州の建築システムとプレファブ技術

講演内容はカウフマン氏の実例からの紹介がメイン。どの実例も素晴らしい建築でした。シンプルなデザインですがそれを実現する納まり、ディテールが丁寧に練られています。

また、フォーアベルク州の建設システムがカウフマン氏設計のプレファブシステム木造建築を建設可能にしているようです。日本のプレカットとは違う、大型パネルを制作できる仕組みです。紹介された映像からは、屋根のついた工場で温かい環境でビルダーさんが作業をしている様子が紹介されてました。

シンプルで美しいデザインと経年変化の価値

カウフマン氏の建築のデザインはとてもシンプル。表面を化粧材で仕上げることなく木材、ガラスなどを素材そのままにあらわしています。木部も特に塗装をしていないようです。

このため建物全体が自然の色合いのままでとても美しいと感じます。また使用する建材を素材・形についても極限まで絞り込んでいるので、余分な線がほとんど無いシンプルなデザインになり建築全体の美しさを際立てます。

ディテールがアップになっても美しく、さらに徹底したプレファブ工法がその美しさをさらに高めているようです。落ち着いた作業環境で作業の精度が高まり、さらに設計が極限まで精度を高める好循環が働いているように思えます。

オーストリアの美しい景観に建てられてる建築のどれもが景観に見事に溶け込んでいるようにみえます。日本でも景観保護で外装の色が決められている地域もありますが、それともまた違う雰囲気。コンビニとかガソリンスタンドの看板がブラウンに塗られているあの景色。シルバーグレーに変色した外壁が山間部の岩肌になじんでいる様子は一味違う雰囲気。その理由の一つとして部材への経年変化への意識がありそう。

日本では完成直後の美しさを求めてしまいがちですが、経年変化によって色あせていく事を良しとしているようなのです。外壁仕上げの無垢の木材にも、表面に塗装仕上げをしていないのです。ですから年月が経つと木材がシルバーグレーに変色しますがそれを良しとしています。この点はカウフマン氏だけでなくフォーアベルク州全体でのデザインコードへの認識のようでした。

設備を裏方に徹し、建築の美しさを引き立てる

もう一つの特徴は、設備の設計です。空調等の設備類は裏方として緻密に隠されて表にはほとんど現れません。これは、建築の美しさを最大限に保つための設計思想です。

実例では相当規模な設備システムを必要としていましたが建物内部の見える部分ではその存在を感じません。このような設備面などの工夫が、さらに建物をシンプルに美しく見せているようです。

持続可能な木造建築とパッシブハウスレベルの高性能

建物性能についてもエネルギー消費量を少なくする設計で、パッシブハウスレベルの高性能なものです。公共建築においてもトリプルサッシが使われていて一次エネルギの削減に効果を上げているようです。

*パッシブハウスレベルとは、ざっくりですが窓ガラスがトリプルガラス、断熱材の厚みが30センチ位のレベルです。

 

こちらのパンフレットは「フォーアールベルク州における持続可能な建築」の日本語翻訳版 です。 Dotプロジェクトさんが会場で販売してくれました。 フォーアベルク州の取り組みが詳しく紹介されているので今回の公演内容をさらに理解できる内容でした。¥500で販売されています。

地域材とプレファブ建築の未来

またフォーアベルク州の建築は、工務店や大工さんと共働して地域活性に取り組み効果を上げている点も見逃せません。

プレファブ工法も建築家と工務店・大工さんなどの職工さんとの共働によるもので、工事の精度・工期の短縮・作業環境の安全など全ての面で成果を上げています。

フォーアベルク州の建築が、住まいとしての成果をあげるのはもちろんですが、地域経済を牽引していく一つの原動力になることはとても望ましい事だと思います。

日本でもできる事がある

現在、私達がとり組んでいる高断熱・高気密の住まい作りを積極的に進めていく事はもちろんですが、性能を少しでも高めるためにも工務店・大工さんなどの職工さんと一緒に知識や理解を深める勉強が必要になってきます。

また千葉県はフォーアベルク州と同じような豊かな山林があります。先日もBlog記事でスギ材の良さを紹介したばかりですが、千葉県はスギの産地では有名ですのでスギ材を積極的に活用してその良さを広めていきたいところです。まず、私にできることは情報を発信することですね。

『DETAIL JAPAN』2008年8月号との出会い

”ヘルマン・カウフマン”をキーワードにしてカウフマン氏について調べていた際に偶然手元にあった『DETAIL JAPAN』2008年8月号に彼の建築が特集されていたことに気づきました。10年前の私は、その記事を読んだものの、内容を深く理解することはできませんでした。

しかし、2018年の講演会に参加し、実際のプロジェクトや技術的な解説を聞くことで、ようやくその一部を実感できるようになりました。カウフマン氏の建築が「デザイン」だけでなく、「プレファブ技術」や「持続可能な地域材の活用」を含むシステムとして機能していることが明確になりました。

カウフマン氏が中心となってフォーアベルク州では木造建築が地域をけん引しています。同じように日本では豊かな森林があり木造建築が作られています。一朝一夕ではカウフマン氏のような、フォーアベルク州の活動はできないと思います。

ですが木造建築の可能性がまだまだ広がっていることに気が付くことができました。その技術を住まいづくりに還元していけば10年後に何か変わっているはずです。

このように、一つのテーマを時間をかけて理解していくことは、建築実務者にとって重要なプロセスであると改めて感じています。

10年後の木造建築の未来へ

木造建築の未来は、単なる設計や技術革新だけでなく、地域の資源を活かしながら、持続可能な仕組みを築くことが鍵となります。カウフマン氏の建築哲学が示すように、地域材・プレファブ技術・エネルギー効率の向上を掛け合わせることで、よりよい未来を創ることができるでしょう。

10年後、日本の木造建築がどのように進化しているのか。その可能性を探りながら、引き続き学び、実践していきたいと思います。


 

関連本記事の内容は2018年時点のものですが、関連する新しい情報として以下のリンクを追加しました。記事・参考リンク(2024年追記)

Facebook投稿: モック工場のプレファブ実践

プレファブシステムの実践:モック千葉工場での経験とサンブ杉の可能性

千葉県の地域材活用の可能性:千葉県産サンブスギを活かした住まいづくり