建物探訪 PHJ関東支部見学会レポート──現場で見た“あれこれ”について

東京23区にパッシブハウスを建てるには?

2025年3月26日、パッシブハウス・ジャパン関東支部の見学会(2025 Vol.1)に参加しました。設計はArchiAtelierMAの丸山晃寿さん、場所は東京都練馬区。
今回は、都市部──それも23区内で建てられたパッシブハウス(申請予定)ということで、設計・施工面での工夫や制約への対応に注目して見学してきました。

都市部でパッシブハウスを建てるということ

準防火地域での建築という条件の中、外壁に木材を使い、かつ高断熱・高気密を実現し、さらに構造といった複数の性能を両立させながら、快適性と意匠性のバランスも追求された設計で、都市部でのパッシブハウスの可能性を感じる住宅でした。

東京23区内 練馬区に建つパッシブハウスの外観。飫肥杉の縦張とそとん壁を組み合わせた落ち着いた外観意匠。
木製サイディングとそとん壁を組み合わせた、都市型パッシブハウスの落ち着いた外観。(東京都練馬区)

見学会では、第2部に参加。以下、私が印象に残った点をまとめておきます。


室内の体感と設計の工夫

  • 家族すべてに個室が確保されたプランで、全館空調の設計が建築設計ときれいに統合されていた
  • 見学当日は外気温が24℃まで上昇。しかし、エアコンは稼働せず、換気のみの運転。それでも室内は快適で、断熱性能によって前日までの蓄熱だけで不快感がまったくなかったのが印象的だった。

細部の工夫と素材の魅力

  • 防火の制限に対応するため、木製サッシと防火仕様の樹脂サッシを使い分けていたが、南面ファサードは自然に仕上がっていて違和感がなかった
  • 外壁は飫肥杉ファーサードラタン縦張とそとん壁かき落としという組み合わせで、とても落ち着いた表情をつくっていた
  • 室内仕上げは左官材。特に興味深かったのが、パーシモンEウォール柿渋仕上げ。消臭・抗菌など多機能性を持ち、素材としての面白さを感じた。
  • その他にも再生和紙など国産材を積極的に採用しており、こうした素材選びの工夫には強く惹かれるものがあった。わたしも天然素材素材を積極的に取り入れるようにしているが、それよりも深く研究されていてこれからの参考になった。
木製階段とモザイク調タイル壁が並ぶ空間。廊下から階段室へのつながりがスムーズにデザインされている。
廊下~階段室へのつながり。素材や仕上げの組み合わせが空間に変化を生んでいた

空間の質を高める工夫

  • 様々な種類のタイルがアクセント的に使われており、空間の質を上げていた
  • 階段上部の吹き抜け+ハイサイドライトからの光がとても印象的で、美しかった。
  • 再生和紙を使った建具、上部アーチの出入口など、和室がとても丁寧につくられていて、特に心に残った。
吹き抜け上部に設けられたハイサイドライトから自然光が差し込む室内。左官仕上げの壁面がやわらかく光を受け止めている。
ハイサイドライトからの光が、室内に静かな陰影を生んでいた

丸山さんの設計哲学と施主との関係性

この建物には、設計者・丸山さんの考えが丁寧に反映されていると感じました。性能や仕様だけでは語りきれない部分に、施主様との信頼関係や対話の積み重ねがにじみ出ていたように思います。強く主張するわけではないけれど、住まい全体に穏やかな一体感があり、印象に残る一棟でした


都市部でパッシブハウスを建てるには、さまざまな制約があります。それでもなお、こうした具体的な事例に触れることで、今後の可能性が広がっていく──そう感じさせられる見学会でした。

📎 関連記事建物探訪 パッシブハウスオープンウィークスでスズモクさんの4棟目を見学

パッシブハウスジャパン全国大会2025 参加レポート

1. はじめに

パッシブハウスジャパン全国大会2025に参加し、最新の技術・設計・市場動向について学びました。今年は特に、新築以外の事業戦略、パッシブハウスの多様化、そして施主のリアルな声が印象的でした。本レポートでは、注目したポイントを整理してご紹介します。

2. 夢建築工房:リノベーション戦略の可能性

特に興味深かったのは、夢建築工房が取り組む「買取再販リノベーション」戦略。新築にこだわらず、地域を限定してリノベーションを進めることで、街全体の価値を高めるというアプローチが印象的でした。

🔹 ポイント

✅ 1980年頃の物件を長期優良住宅認定レベルまで改修 → 買取の際に基礎の仕様をチェックし、10か月ほどで販売まで進める

✅ 設計時間の効率化 → 作業工数を記録・分析し、削減できる部分を社内で検討

✅ 地域貢献のためのマップ作成 → 居住者が推薦するお店の詳細なマップを作成し、設置後すぐになくなるほどの人気

この「地域密着型のリノベーション戦略」は、単なる建物改修ではなく、街づくりと設計を一体で考える発想として、大工仲間とも共有したい視点でした。たい。

3. PHアワード:多様なパッシブハウスの広がり

今年のPHアワードでは、より多様なパッシブハウスが登場し、「性能のその先」が問われる時代に突入していると感じました。

🏆 今年の大賞(2作品)

✅ 追分宿・平屋のPH(設計:丸山さん) → 無駄のない動線計画とシンプルなプラン

✅ 長岡PH(施工:池田組) → 瓦と自然素材を活用した和風デザイン、積雪2メートル対応で耐震等級2

🔹 印象的だった受賞作品

✅ 岩村パッシブハウス(共同住宅型の社員寮) → 社会的意義のある取り組み + 大型パネルを活用した施工

🎯 注目の設計ポイント

✅ 機能性 + デザインのバランス → 「性能が良いのは当然。その先にどのような魅力を持たせるか?」が重視される傾向

✅ 大型パネルを活用した施工 → 施工の効率化と精度向上

✅ 社会的な役割を持つパッシブハウス → 省エネ住宅としてだけでなく、地域や企業の課題解決の場としての活用

海外事例では、低所得者向けの共同住宅がPHの新しい社会モデルとして採用されていますが、日本での実現にはさらなる議論が必要だと感じました。

4. 施主クロストークと認知度向上の課題:パッシブハウスの「価値」をどう伝えるか?

「PHはフルカスタム、ストレスがないのでプライスレス。」という言葉がとても印象的でした。

施主クロストークでは、パッシブハウスの施主にとって、「ストレスがない」という価値は非常に大きく、その価値はまさにプライスレスとのこと。

PHJからは、どうすればPHがもっと広まるか? PHをどうやって一般の人に伝えるか?この問題についてもアイディアをお聞きしています。

PHの認知度向上の課題

課題①:体感しないと分からない快適さ

→ 宿泊体験できるモデルハウスの提案が効果的?

課題②:どの層をターゲットにするか?

→ PHはハイエンド層向けが中心。しかし、施工可能な工務店の有無も大きな要因

課題③:PHJメンバーができること

→ SNSで施主のリアルな暮らしを発信し、「本当に快適な住まいとは?」を伝える

「パッシブハウスの価値を伝えること」は、設計者・施工者の発信に加え、住んでいる施主からの発信は大きな影響力を感じます。住んでいる施主の声は、PHの価値を伝えるうえで大きな影響力を持ちます。「実際に住んでいる人の体験談」は、設計者や施工者の発信以上に説得力があると実感しました。

5. メーカー展示ブース

全国大会では、高断熱高気密住宅に欠かせないメーカーのブースが並びました。その中でも特に注目したのが以下の2つ。

ダイナガ:防蟻基礎断熱工法

基礎断熱工法はシロアリからの被害、防蟻対策がとても大切です。ベタ基礎下に敷く防湿シートが一般的ですが、今回は防蟻効果があるオプティEXシートに注目しました。基礎断熱工法に必要な資材が一式そろっていて、中日サニオンの佐藤さんからお勧めされていたことを思い出しました。

防蟻基礎断熱工法 


Zehnder:壁掛式全熱交換器

PHI認定の壁掛式のスケルトンモデルが展示されていました。さらに、PH基準以下の性能の住宅にも使える換気+冷暖房のモデルが今後登場予定とのことです。

壁掛式全熱交換機:CA_L925 

6. まとめ:「性能のその先」を考える時代へ

今回の全国大会では、「パッシブハウスのその先は何か?」 が強く問われていることを実感しました。

・PHに暮らしている施主目線からの提案は、パッシブハウスの価値を広めるためには、「高性能住宅としての理想」を語るだけでなく、

✅ 宿泊体験できるモデルを確保し、体感できる機会を作る
✅ ハイエンド層と一般層、それぞれに合った戦略を考える
✅ PHJメンバーが施主の声を活かしながら情報発信を強化する

また、夢建築工房の「地域を豊かにするリノベーション戦略」には、設計者として学ぶべき点が多くありました。

「今ある住宅をどう生かすか?」という視点を持ち、「高断熱高気密の技術の向上」だけでなく、「その先にある住まいの価値」を探求していきたいと思います。
こうした体験を通じて 「本当に快適な家づくりとは何か?」 を考え続けながら、設計に取り組んでいます。

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住宅の電磁波対策(電場・磁場)|設計・施工の視点から考える

住宅の電磁波対策 #02 | 電場・磁場の違いと設計の視点


近年、電磁波を気にする人が増えている

最近、住宅の電磁波について気にされる方が増えています。特に、新築やリノベーションを考えている方から、「電磁波の影響を抑える設計はできますか?」と聞かれることがあります。

電磁波の影響は、住宅の構造や電気の配線によって大きく変わるため、設計段階で意識することが大切です。

とはいえ、「電磁波対策」と一口に言っても、漠然としていて何をすればいいのかわからない…という方も多いのではないでしょうか。

この記事では、電磁波の中でも「電場」と「磁場」 に分けて、設計・施工で気をつけるポイントをまとめました。

電場と磁場によって対策が異なります

電場・磁場の違いについてはこちら→電磁波の基本とその影響

1. 電磁波には「電場」と「磁場」がある

電磁波は、「電場」と「磁場」 に分かれ、それぞれ影響の受け方や対策方法が異なります。

種類発生源影響を受ける要因主な対策
電場(低周波電場)家電や配線壁・床を伝って広がるアース(接地)で低減
磁場(低周波磁場)電流が流れることで発生特に幹線ケーブルが影響発生源から距離をとる

つまり、

  • 電場は「アースを取る」ことで対策が可能
  • 磁場は「発生源から距離をとる」ことで影響を軽減できる

これらを踏まえ、住宅設計における具体的な対策を見ていきましょう。

2. 住宅の構造による電磁波の影響

住宅の構造によって、電場・磁場の影響は変わります。設計段階で適切な選択をすることが重要です

■ 鉄骨造・RC造(鉄筋コンクリート造)

✅ 鉄骨や鉄筋に電場がアースされるため、電場の影響が少ない
✅ただし、家電や配線からの電場は発生するので、アースの有無に注意

■ 軽量鉄骨(プレハブ系住宅)

✅ ほとんどのメーカーで電場の影響は少ない構造になっている
✅ ただし、床を伝って電場が広がる可能性があるため、電源周りの対策は必要

■ 木造住宅

✅ アースが取れないため、電場の影響を受けやすい
✅ オールアース構法を採用すれば電場を抑えられる
✅ 磁場の影響も受けやすいため、配線計画が重要

3. 電場対策:アースを考える

電場の影響を抑えるための基本は、アース(接地)を取ることです。

🔹 電場を抑えるポイント

✅ アース付きのコンセントを採用する
✅ 床に電場が広がらないように、家電の配置や配線を工夫する
✅ 木造住宅の場合、オールアース構法を検討する

4. 磁場対策:配線計画がカギ

磁場は「アースでは防げない」ため、距離を取ることが重要です。

住宅内で特に注意すべきポイントは、電気の引込ケーブル(幹線)です。

✅ 磁場の影響を受けないためには 60cm以上の距離を確保 する
✅ 幹線ケーブルの位置を設計段階で把握し、寝室やリビングに影響しないように配置
✅ 幹線の位置は、現場で変更されることもあるため、施工時にチェックする

5. 手軽にできる電場対策:「プラグインアース」の活用

電場の影響を減らす手軽な方法として、プラグインアース を利用できます。
✅ 工事不要で簡単に導入可能
✅ 寝室やデスク周りなど、ピンポイントでの電場対策に最適
✅ アースリネンやアースベースと組み合わせると、より効果的

ただし、注意点として、
⚠ 住宅全体の電場を低減するものではなく、補助的な対策

千葉で電磁波対策を検討している方へ

「プラグインアースは電磁波測定士のみが販売可能です。詳細な測定・相談をご希望の方は、お問い合わせください。」

6. まとめ:住宅の電磁波対策は「知識」と「計画」がカギ

🏡 住宅の電磁波対策は、設計段階での計画が重要!

✅ 電場はアースで低減できる(木造住宅は特に注意) ✅ 磁場は「発生源から距離を取る」ことが対策の基本 ✅ 幹線ケーブルの配置を慎重に計画し、60cm以上距離を確保 ✅ プラグインアースは手軽な対策として活用可能

これから新築・リノベーションを検討している方へ 電磁波対策を設計段階で取り入れることで、より快適で健康的な住環境を実現できます。気になる方は、専門家への相談を検討してみてください。

✅ 千葉で電磁波対策の相談受付中!

設計段階での電磁波リスクの診断や、具体的な対策をご提案できます。 オンライン無料相談も実施中。お気軽にお問い合わせください!
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建物探訪 新住協 関東・東京合同住宅見学会に参加しました

先日、新住協 関東・東京合同住宅見学会に参加しました。今回は、北村建築工房さん、鈴木アトリエさん・山田建設さん、あすなろ建築工房さんが手がけた住宅を訪問。大型バスで移動しながら、4件の住宅をじっくり見学させていただきました。

北村建築工房さんの住宅 急傾斜地をうまく使っています

新住協の住宅見学会とは?

新住協(新木造住宅技術研究協議会)は、快適な省エネ性能の高い木造住宅をローコストで普及を目指している団体です。見学会では、実際の住宅を訪問しながら、設計や施工の工夫、省エネ性能の検証方法について学ぶことができます。

横浜の住宅設計と敷地の活かし方

横浜は高低差のある敷地が多く、傾斜地に建つ住宅も珍しくありません。このような敷地では、設計だけでなく施工のノウハウも必要となります。今回の見学会では、横浜で活躍する設計者や工務店ならではの敷地の活かし方を見ることができ、とても勉強になりました。

高低差を活かした設計は流石でした。ガルバの小波板の外壁も雰囲気良いです

エコハウスの本質は性能計算にある

今回の見学会では、各社が物件概要を作成し、新住協のQpexによる冷暖房エネルギーの性能計算結果も添付されていました。これは、単なる数値比較ではなく、実際の住まいのエネルギー消費を予測するためのものです。

QPEXでは、断熱材の種類や厚さを入力すると、即座にその部位の熱貫流率や暖冷房エネルギーが計算され、設計中のシートに反映 されます。
そのため、設計のある段階で、住宅の暖冷房エネルギーを想定しながら、省エネ性能を調整することが可能 です。
こうした試算を行うことで、予算の許す範囲で、最適な省エネ性能を設定 できます。

QPEXを使うことで分かること
✅ 熱交換換気設備を採用してもUA値は変わらないが、暖房エネルギーは大きく削減される
✅ 南の窓を大きくするとUA値は上がるが、日射取得が増えるため、陽当たりの良い窓なら暖房エネルギーは減る

このような設計上の影響は、QPEXを使って試算しないと見えてこないもの です。
勘や経験だけではなく、数値で根拠を持って設計することで、より最適な住宅性能を実現 できます。

施工中の現場も見学できます。あすなろさんの現場は施工もそうですが、現場も環境も工夫されていて流石。キムラの調湿気密シートを採用されてました。

換気設備の工夫

換気方式についても、それぞれの住宅で異なるアプローチが取られていました。

特に3階建ての住宅では、デマンド換気を採用することで、各フロアの空気の流れを最適化している点が興味深かったです。

唯一傾斜地では無かったけど、横浜の地価を感じる建築でした。木造3階、やはり空調計画が難しいです

暮らしながら住宅を育てる

鈴木アトリエさん・山田建設さんの住宅では、実際に住まわれているお宅を見学できました。

特に印象的だったのは、月見台の増設や建具の改良など、住みながら少しずつ住まいを改善していること。 住まい手が手を加えながら暮らしを楽しんでいる姿から、設計者・工務店との良好な関係が見えるようでした。

「住宅空調設計講座」では、暮らしを予測する設計を目指しましたが、やはり実際の暮らし方によってその「予測」は変わります。住宅は完成した時点で100%になるものではなく、暮らしの中で育てていくもの。そのため、住み手のライフスタイルに合わせて柔軟にアップデートできる設計がとても大切だと感じました。

スキップフロア+カラーコーディネートで豊かな空間。施工も丁寧でウットリ

最後に

移動中も設計の話で盛り上がり、濃密な一日でした。今回の見学会を企画・運営してくださった幹事・関係者の皆様、ありがとうございました!

関連記事
✅ [暮らしをアップデートする設計]
住まいは完成時が100%ではなく、暮らしながら少しずつ改善していくことが大切。リノベーションや修繕の考え方を詳しく解説しています。

建物探訪 パッシブハウスオープンウィークスでスズモクさんの4棟目を見学

茨城・坂東でパッシブハウス(PH)を手がけるスズモクさんの4棟目のPHを見学してきました。
今回はPHオープンウィークスの一環としての訪問。実際に体感してみて、設計の工夫や空調の調整など、改めて学びがありました。

スズモクPH外観

建物概要

・延床面積 29.80坪
・UA値 0.16(W/㎡K)
・C値 0.1(cm²/m²)
・換気システム:1種換気(ローヤル電機)
・空調:ルームエアコン2台(壁掛け+床下エアコン)
・キッチン:循環式

開口部の設計と日射コントロール

・LDKの開口部は、南側にスマートウィン(佐藤の窓)+外付けブラインド(ヴァレーマ)を採用。
 → 敷地が西側に振れているため、日射取得のために南面の窓を活かす工夫。
西側には開口部なし。
 → 直射日光による室温上昇を抑える、パッシブデザインの考え方。

LDK全景:外付けブラインドでコントロールされた室内環境

設計時のシミュレーションが重要

こうした日射コントロールを適切に行うには、DesignPHを使ったシミュレーションが必須になります。
特に南西や北東からの日当たりは、シミュレーションを行って初めて具体的な影響を確認できます。
設計段階で正確な日射取得量や影の動きを把握することで、冬の日射取得を最大化し、夏の日射を適切に遮る設計が可能になります。

4棟目の経験がもたらす判断力

敷地を見ただけでPH認定が可能か、だいたい分かるようになってきた」とのこと。
4棟目ともなると、土地の形状や周辺環境を考慮しながら、PHの条件を満たせるかどうかが直感的に判断できるようになるらしい。経験の積み重ねが活きる部分ですね。

訪問時の体感 – 輻射熱の心地よさ

・PH申請予定の建物だったので、断熱仕様の詳細は聞いていませんが、室内に入った瞬間の快適さが別格でした。
・午後の訪問でしたが、外付けブラインドで日差しを調整し、室温が上がりすぎない工夫。
・床下エアコンの稼働音はほぼ感じず、運転しているかどうかも分からないくらい静か。
・シャツ1枚で十分暖かく、椅子に座っていても足元からじんわり伝わる輻射熱。
「十分断熱された部位が輻射暖房になる」という宿谷先生の話を実感する空間でした。

この「足元からじんわり伝わる暖かさ」が、まさにパッシブハウスの特徴。
エアコンの風を感じることなく、壁や床から伝わる輻射熱のおかげで、自然な暖かさに包まれる感覚 でした。
特に印象的だったのは、部屋全体の温度が均一だったこと。立っていても、座っていても、寒さを感じる場所がほとんどない。
これが適切な断熱・気密・日射取得のバランスが取れた空間 なんだと実感しました。

LDK全景

PHレベルの建物だからこその注意点

北側・西側の壁面でも、日射による室温上昇が起こる点に注意が必要。
・PHレベルの高断熱性能だと、直射日光が当たるだけで壁が蓄熱し、輻射熱の影響が大きくなる。
・窓だけでなく、壁の蓄熱や日射調整も含めた設計が重要になる。

👉 こうした問題を未然に防ぐために、DesignPHを活用したシミュレーションが不可欠。
シミュレーションを通じて、南西・北東からの日射がどれだけ影響を与えるかを確認し、適切な日射遮蔽計画を立てることができる。

北側窓:APW430+ブラインド

設計だけでなく、運営や経営の話も

スズモクさんとは、建物の話だけでなく、HPやYouTube運営、会社経営の話も。
私の悩みも聞いていただき、たくさんの気づきをもらいました。こういう対話が、次の設計や活動につながるのを実感。


私自身、パッシブハウスの可能性を探求しながら設計に取り組んでいます。住まいの快適さや省エネ設計に興味のある方は、ぜひ一度ご相談ください。

パッシブハウスの設計には、土地の特性や日射のシミュレーションが欠かせません。
私自身、こうした体験を通じて「本当に快適な家づくりとは何か」を探求しながら、設計に取り組んでいます。

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また、パッシブハウス設計のシミュレーションについて詳しく知りたい方は、以下の記事もおすすめです。

📖 関連記事
🔹 日当たりをシミュレーションする
🔹 パッシブハウス設計のためのDesignPHとSketchUp活用ガイド

🔹 2017年にPHを初体験した時の記事:パッシブハウス体験しました 第5回国際パッシブハウスデー

🔹 PHJ高橋建築さんのPHを見学した時の記事:建物探訪 秩父の高橋建築さんの高性能住宅を体感してきました

ご興味のある方は、お気軽にご相談ください!

エクセルギーで考える温熱環境:宿谷昌則先生の講演から

先日、PHJ関東支部のサブリーダーとして企画・運営した宿谷昌則先生の『人・建築・地球とエクセルギー』発刊記念セミナーを開催しました。新刊のコンセプトと同様に、講演でも数式を使わず、直感的に理解できる形でエクセルギーの視点が紹介されていました。

特に印象的だったのは、パッシブ型技術とアクティブ型技術の役割分担と、エクセルギーの原則から見る「断熱の新しい捉え方」です。

パッシブ技術の重要性:建築の基本性能を確保する

宿谷先生が強調されていたのは、建築の基本性能(パッシブ型技術)をしっかり確保することが最優先であり、アクティブ型技術はそれを活かす役割であるということ。

これは、まさにパッシブハウスの利点そのものです。

✅ 断熱・気密をしっかり確保することで、エアコンや空調の電気代を大幅に削減できる。

✅ 逆に、建築の基本性能が低いと、いくら設備を高性能にしても無駄が多くなる

例えば、エアコンの効率を上げるより、まず断熱・気密を整えたほうが、トータルで見て省エネルギーになるのです。

パッシブ型技術(断熱・気密)とアクティブ型技術(設備機器)の関係

パッシブ型技術を強化することで、アクティブ型技術の使用を最小限に抑えることができ、結果として一次エネルギーの消費を削減できます。
例えば、断熱・気密が優れた家では暖房・冷房の必要量が減り、電力やガスの消費が抑えられます。これは、エクセルギーを無駄にせず、エネルギーを最も有効に活用する設計アプローチと言えます。

エクセルギーとは?

エクセルギーとは、「エネルギーを有効に使える度合い」を示す概念です。エネルギーそのものは保存されますが、時間が経つとエネルギーの質(エクセルギー)が低下し、最終的には使えなくなります。

エネルギーとエクセルギーの違い

  • エネルギー(Energy) は変換しても消えません。(例:電気を使ってお湯を沸かす)
  • エクセルギー(Exergy) は「役に立つエネルギーの質」。エネルギーが広がるほど使えなくなります。(例:お湯が冷める)

エクセルギーの消費とエントロピー

エネルギーが使われると、エクセルギーが減少し、エントロピー(エネルギーの拡散・無秩序度)が増加します。

  • 例えば、熱いコーヒー(高エクセルギー)は冷めるとエクセルギーを失い、周囲の空気に拡散(エントロピー増加) します。
  • 建築でも、断熱が不十分だと、暖房のエネルギーがすぐに外へ逃げてしまい、エクセルギーの無駄が大きくなる

建築におけるエクセルギーの活用

🏡 断熱・気密を強化することで、エクセルギーの無駄を防ぎ、少ないエネルギーで快適な住環境を維持できる。
🏡 断熱材の役割は、熱エネルギーを有効に使うことで、エクセルギーの消費を抑えること。
🏡 建築設計の目的は、エクセルギーを最大限活用し、エネルギーの効率的な使い方を考えること。

エクセルギーの原則から見る「断熱の新しい捉え方」

講演の中で、宿谷先生が示したエクセルギーの原則に基づく考え方の転換が非常に印象的でした。

通常、私たちは壁の断熱性能を「熱を通しにくくする」ものと捉えることが多いですが、エクセルギーの視点では「加熱パネルを取り付けた状態」と考えることができるのです。

エクセルギーの原則

  • 断熱された壁は、壁からの放射熱によって室内を暖める役割を果たしている。
  • つまり、室内の人は、断熱壁からの熱放射を受けていることになる。
  • 断熱性能が低いと、熱が外に逃げるため放射も弱まり、室内の体感温度も下がる。

この考え方を理解すると、

✅ 断熱の目的は「熱を逃がさない」ことだけでなく、「壁そのものを放射熱源にする」ことでもある。

✅ 壁の断熱性能を上げることは、室内環境のエクセルギー効率を高めることにつながる。

これは、従来の「断熱=熱を遮る」という考え方から、「断熱=エネルギーを有効に活用する」という発想の転換になります。

まとめ & 今後の展望

今回の講演を通じて、エクセルギーの視点を取り入れることで、建築環境をより深く理解できることを再確認しました。

  • パッシブハウスの本質は、エクセルギーの考え方と親和性が高い。
  • 断熱気密をしっかりすれば、設備のエネルギー負荷を最小限に抑えつつ、快適な環境を維持できる。
  • エクセルギーの視点を取り入れることで、「断熱は加熱パネルである」という新たな捉え方が生まれる。
  • エネルギーは保存されるが、使える能力(エクセルギー)は消費され、最終的に使えない形(エントロピー)になり地球外へ放出される。建築設計においては、このエクセルギーの消費を最小限に抑えることが重要となる。
  • 今後も、エクセルギーの視点を設計や実務にどう活かせるか探求したい。

さらに、今回の講演をもって、PHJ関東支部のサブリーダーとしての役割を終えることになりました。これまで関わってくださった皆さまに感謝いたします。今後もパッシブデザインやエクセルギーの視点を大切にしながら活動を続けていきます。

過去にもPHJの仲間と「森のカフェ 軽井沢南ヶ丘」でエクセルギーを学ぶ機会がありました。パッシブ認定を受けた実際の建物でエクセルギーを体感しながらの学びは、まさに「理論と実践が一致する」経験でした。

➡ その時の建物探訪の様子はこちら

🏡 エクセルギーを活かした住まいづくりを考えている方へ 🏡

「パッシブ設計を取り入れたいが、どう進めればいいのか?」とお考えの方へ、エクセルギーの視点を活かした設計相談を受け付けています。

➡ 設計相談の詳細はこちら

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地域材とプレファブ建築の未来: モック工場の見学から考えるカウフマン流の可能性

1. 見学を重ねて気づいた、大型パネル建築の可能性

(1) これからの住宅設計に求められるもの

近年、高性能住宅の需要が高まり、施工の精度や効率化がますます重要になっています。
そんな中、大型パネルを活用した「高断熱・高気密住宅の効率的な建設手法」が注目されています。

先日、私はモック工場を訪れ、大型パネル工法の最前線を見学しました。
ここでは、建築家の丸山弾さんと大工の天野さんが、木製サッシの造作と大型パネル施工を組み合わせる試みを行っており、設計と施工の連携がどのように進められるのか を間近で学ぶことができました。

この見学を通じて、大型パネル工法が単なる施工の効率化にとどまらず、「設計の自由度」や「地域材の活用」にも適応できる技術であることを改めて実感しました。

(2) 大工不足の地域でも可能性を広げる大型パネル建築

以前見学した丹波山村の村営住宅では、大型パネルを活用し、大工不足の地域でも短期間で高性能な住宅を建設する事例が実践されていました。

このプロジェクトでは、現場作業を最小限に抑えながら、施工精度の高い省エネ住宅を実現する仕組みが導入されており、
地域の職人不足という課題に対応する手法として、大型パネル工法の可能性が示されていました。

これは、全国的に大工不足が進む日本の建築業界にとっても大きな示唆を与えるものです。
特に、都市部だけでなく、地方の住宅建設にも大型パネルを活用することで、設計の柔軟性を損なわずに持続可能な家づくりが可能になると考えられます。

丹波山村村営住宅見学会レポート:大型パネル工法と地域材の未来

(3) 地域材と大型パネル建築の融合

今回の見学で印象的だったのは、モック工場では紀州材を活用した大型パネルが製造されていたことです。
しかし、千葉県にはサンブスギという地域材があるにも関わらず、まだ十分に活用されていないことに課題を感じました。

日本では、地域材の活用が進みにくい要因の一つとして、規格化されていない木材の安定供給の難しさが挙げられます。
しかし、大型パネル建築の技術が進化することで、地域材を標準化し、適切な品質管理のもとでプレカット・加工する仕組みが可能になるかもしれません。

過去のセミナーで学んだヘルマン・カウフマンの建築では、地域材を活用しながら「設計の柔軟性」と「施工効率の向上」を両立する手法が実践されていました。
この視点から考えると、日本の住宅設計においても「地域材 × 大型パネル建築」の組み合わせをもっと積極的に活用できる可能性があると感じました。

2. モック工場で得た知見

(1) 大型パネルの製造プロセスとそのメリット

私が訪れたモック工場では、大型パネルが工場内で精密に製作されています。工場という安定した環境で作業するため、現場での天候や施工状況の影響を受けず、高い品質が維持されています。
例えば、高断熱住宅では、従来の現場施工だとサッシの重量増や断熱材の追加により工事の負担が大きくなることが問題でした。しかし、ここで製作される大型パネルは、均一な品質と精度を実現し、現場での作業時間や労力を大幅に削減します。これは、住宅の省エネ性と施工効率の向上に直結する大きなメリットです。

(2) 建築家と大工の協働で生まれる設計の柔軟性

また、現場では建築家と大工が直接コミュニケーションをとりながら、外部の木製サッシを造作するプロセスが行われています。
例えば、丸山さんの設計図面に基づき、天野さんが実際の施工で最適な木取り方法を提案するなど、単なるマニュアル通りではなく、現場ならではの柔軟な対応が見受けられました。こうした協働は、規格化された大型パネル施工でも個性的な家づくりを実現する鍵となります。実際に、この手法を取り入れることで、住まいのデザインに自由度が生まれ、将来的には施主のニーズに合わせたカスタマイズも可能になると感じました。

(3) 地域材の活用と未来の建築への展望

さらに、塩地さんのレクチャーから、今後全国に大型パネル工場を展開し、地域の森林資源を活かすという先進的な取り組みを知りました。
この技術は、地域材(例えば、紀州材など)を利用することで、地元の林業を活性化しながら、同時に輸送距離を短縮してトラック輸送の問題を解消するというものです。実際、輸送距離が8時間以内であれば、物流の効率が大幅に向上し、現場での人手不足や施工の遅延にも対応できるとのことです。
こうした取り組みは、従来の工法とは一線を画し、将来の住宅づくりに大きな影響を与える可能性を秘めています。これからの住宅設計では、単に技術的な側面だけでなく、地域全体を巻き込んだ持続可能なアプローチが求められるでしょう。

3. カウフマン流プレファブ建築の分析

(1) 持続可能な建築の考え方

カウフマンが活動するフォアアールベルク州では、地域材の活用を前提にしたプレファブ建築が普及しています。
この地域では、工場で精密に加工された木材を用いることで施工精度を向上させ、同時にエネルギー消費を抑える というアプローチが進められています。

この手法は、地域経済の活性化にもつながるという点で注目されています。
たとえば、地域の森林資源を適切に管理しながら活用することで、環境負荷を減らしつつ持続可能な家づくり を実現できます。
これは、地域の木材を活かした省エネ住宅を求める日本の施主にも、非常に参考になる考え方です。

出典:Hermann Kaufmann Architekten: Architecture and Construction Details

(2) モック工場の取り組みとの共通点

現在の大型パネル工場では、施工精度の向上や現場での作業軽減 が実現されています。
この技術を全国に広げることで、輸送コスト削減・地域材の活用・職人不足の解消といった、日本の建設業界が抱える課題にも対応 できる可能性があります。

特に、日本ではトラックドライバーの労働規制強化によって、長距離輸送の負担が増えています。
大型パネルの生産を各地に分散させることで、輸送距離を短縮し、工期の安定化につなげることができるでしょう。

これは、フォアアールベルク州の成功モデルに近づく第一歩とも言えます。

出典:Hermann Kaufmann Architekten: Architecture and Construction Details

4. 新たな視点: 地域材とプレファブ工法の未来

今回の見学では、建築家と職人が協働しながら、新たな建築手法に挑戦している姿が印象的でした。
従来のプレファブ工法と違い、設計と施工がより密接に連携し、柔軟な対応が可能になることを実感しました。

また、フォアアールベルク州のカウフマン建築と比較すると、
日本の地域ごとの特性を活かしたプレファブ建築のあり方を考える必要があると感じました。

  • 千葉県における大型パネル工場の活用
  • JAS製材の品質管理と流通体制の整備
  • 地域材の供給網の確立

など、まだ多くの課題はありますが、地域材×プレファブ工法が日本の建築業界に与える影響は大きいと確信しています。

5. これからの建築と地域材の可能性

(1) これからのプレファブ建築

気候変動や地球温暖化への対応として、住宅の省エネ化と高性能化は今後さらに求められるようになります。
その一方で、断熱性能の向上や高性能サッシの採用により、住宅の重量が増加し、大工の負担も増しているのが現状です。

この課題に対して、プレファブ建築(大型パネル工法)を活用することで、施工負担を軽減しつつ、高い品質を維持する という解決策が考えられます。
具体的には、工場で高精度に加工された大型パネルを使用することで、断熱・気密性能を確保しながら、現場での組み立て作業を効率化することが可能になります。

つまり、大型パネル工法は、「省エネで快適な住まいを実現するだけでなく、施工の効率化や品質向上にも貢献する」 新しい家づくりの形として注目されているのです。

大型パネルの建て方

(2) 日本での活用のヒント

日本の建築業界においても、地域材×プレファブ技術の融合 は、今後の住宅設計の大きなテーマになり得ます。
すでに、ウッドステーションの塩地さんが全国に大型パネル工場を展開し、地域材の活用を促進する計画 を進めています。

この動きが広がることで、以下のようなメリットが期待できます。

  • 地域材の活用が進み、林業の活性化につながる
    → これまで利用されにくかった地域の森林資源を有効活用できる
  • JAS製材などの品質管理が標準化され、流通がスムーズになる
    → 一定の品質基準を持つパネルを安定供給しやすくなる
  • 施工効率が向上し、工務店や職人の負担を軽減できる
    → 施工の均一化により、作業の負担を軽くし、工期の短縮にもつながる

特に、「地域材を活かしつつ、設計の自由度を損なわない家づくり」が実現できる点は、今後の住宅設計にとって重要なポイントです。

(3) 設計にどう活かすか

今回のモック工場での見学では、大型パネル工法は設計の自由度を損なうものではなく、むしろ柔軟なデザインを可能にする技術であることを改めて実感しました。

特に、大工による造作建具の取り付けプロセスを大型パネルと組み合わせる試みを目の当たりにし、「工業化された建築」ではなく、「職人の技術と組み合わせた新しい住宅づくり」が可能であることがわかりました。

この技術を設計に活かすことで、以下のようなメリットが考えられます。

大型パネル+造作サッシ

地域材の活用 × 施工精度の向上

工場で加工された精密な大型パネルを使用することで、施工誤差を減らし、現場の負担を軽減できます。さらに、地域材を活かしたパネル設計により、木の質感や断熱性能を最大限に活かした住宅が実現できます。

建築家と大工の協働によるデザインの柔軟性

今回の取り組みでは、建築家の設計意図を大工が適切に解釈し、大型パネル化して施工するという流れが印象的でした。これにより、従来のプレファブ住宅のように「決まった形の家を作る」のではなく、施主の要望に応じた自由なデザインが可能になります。

高性能住宅と効率化の両立

大型パネル工法では、高断熱・高気密な住宅を、工期を短縮しながら高精度で建設できます。施工のばらつきを抑え、現場の負担を減らしながら、快適な住まいを実現することが可能です。

地域材を活かしながら、高性能かつ自由な設計を実現できる大型パネル工法。
今後の設計では、これらの技術をどのように活用するかが重要な鍵となります。

とめ

大型パネル工法は、単に施工効率を上げるためのものではなく、地域材を活かしながら、省エネ住宅の可能性を広げる手法として、今後の住宅設計に大きく貢献できる技術です。

今回の見学を通じて、施工精度の向上や現場での作業軽減だけでなく、設計の自由度を確保しながら、将来的には地域材を活用する方法もある ことが分かりました。

また、地域ごとに異なる木材やデザインを活かした大型パネル工法が可能になれば、これまで「工業化された建築」として見られていたプレファブ建築のイメージが変わり、より柔軟で持続可能な住宅設計が実現できる可能性があります。

もし、地域材を活かした高性能な家づくりに興味がある方 は、ぜひ一緒に最適な設計を考えていければと思います。

👉 大型パネル工法と地域材の活用について、詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。

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住宅の電磁波対策|住まいの健康を守るために

01 住宅の電磁波対策

住環境における電磁波対策の重要性

現代の住環境は、空気、温度、湿度、そして電磁波という4つの要素が健康を大きく左右します。特に海外では、電磁波対策が重要視されており、対策が進んでいるのが現状です。しかし、日本ではまだ普及が進んでおらず、住環境改善の一環として取り組むべき課題といえます。
このたび、当HPに「電磁波対策」ページを新設しました。

このページでは、建築士としての経験とEMFA認定2級電磁波測定士としての知見を活かし、住環境を改善するための具体的な対策やサービスをご紹介しています。

千葉の電磁波測定士+建築士が提案する住まいの健康づくり】のページはこちら

そして今回のBLOG記事では、先日参加した電磁波測定士の勉強会でおこなったQAをもとに、電磁波対策に関する具体的な内容をお伝えします。


炭を使った製品の効果と課題

Q1. 電磁波対策として炭を練り込んだ製品が注目されていますが、効果はどのように評価されていますか?
A1.
炭素には電導性があり、アースを取り付けることで電位を下げることが可能です。しかし、以下の課題があります:

✅ アースの取り付け方法の適切さ
✅ 酸化による電導性能の維持期間
✅ 電流が流れる際のリスク

これらの課題については第三者機関による検証が必要 です。
また、炭を使った製品は主に調湿や消臭といった補助機能 に優れていますが、電磁波対策としては限定的 です。
快適な室内環境を実現するためには、適切な空調設計 が不可欠です。


電磁波を防ぐ建材の活用:オールアース工法

EMFAでは、電磁波シールド施工を推奨していません
電磁波対策として重要なのは、「アースを取ること」「距離を取ること(離隔距離の確保)」 の2点です。

そのため、「電磁波を防ぐ建材の活用」=「オールアース工法」 という考え方が重要になります。
オールアース工法では、アースを適切に取り、電磁波の影響を低減する施工が採用されます。


距離を取る(離隔距離の確保)

電磁波対策として、「距離を取る(離隔距離を確保する)」 ことが有効です。
特に、電線の取り込み口から分電盤までの経路設計 では、寝室などの長時間滞在する空間を横断しないようにすることが重要 です。

✅ 分電盤を寝室から離れた位置に設置する
✅ 電気配線経路を工夫し、寝室を横断しないルートを採用する

電磁波の影響を最小限に抑えるために、寝室の配置を考慮し、電気配線経路を適切に設計することがポイント となります。


アース付きコンセントと住宅設計の工夫

Q2. アース付きコンセントが普及すれば、電磁波対策は不要になるのでしょうか?
A2.
EMFAでは、電磁波対策として**「アーシング」と「離隔距離」を推奨** しています。
アース付きコンセントは電子機器からの電磁波対策として有効 ですが、壁内の配線から発生する電磁波には別途対策が必要 です。

2022年に改定された内線規程では、水回りだけでなく住宅全体でアース付きコンセントの設置が推奨 されています。
これにより、漏電や火災のリスクを軽減できるだけでなく、電磁波対策にも一定の効果が期待 できます。

加えて、設計段階で電気配線経路を工夫することで、壁内からの電磁波リスクをさらに低減 することが可能です。


アース付きコンセントがない場合の対応策

アース付きコンセントが設置されていない場合は、「プラグインアース」の使用を推奨 しています。
これは、簡単にアース機能を追加できる製品 で、電磁波測定士を通じて購入可能です。

📌 私はEMFA認定2級測定士として、この製品の対面販売や使い方のアドバイスを提供しています。
📌 詳細が気になる方は、お気軽にお問い合わせください

プラグインアースの詳しい情報はこちら


まとめ

電磁波は目に見えないため、軽視されがちですが、健康に大きな影響を与える可能性があります。
今回の記事では、炭を使った製品の課題・アース付きコンセントの活用法・壁内配線からの電磁波対策 など、具体的な対策をご紹介しました。

📌 電磁波測定・住宅の電磁波対策をご検討の方へ
私は EMFA認定2級電磁波測定士 として、住まいの電磁波測定やアドバイスを行っています。

  • 住まいの電磁波が気になる方
  • オールアース®工法の導入を検討している方
  • 電磁波対策について詳しく知りたい方

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丹波山村村営住宅見学会レポート:大型パネル工法と地域材の未来

大工仲間に誘われて、丹波山村村営住宅の見学会に行ってきました。今回見学したのは、大型パネル「ハーフ住宅」を活用し、スピード建設が行われたプロジェクトです。今年度4月に事業採択され、8月に上棟、そして年明け1月10日には完成見学会という驚くべきスピード感!公共事業では珍しいプロポーザル方式が採用され、この結果、効率的な予算化と短期間での建設が可能になったそうです。

上野原I.Cから国道139号を経由して向かいました。山深い道中はヘアピンカーブの連続。途中には、金属製の屋根をかぶせた茅葺きの古民家や、松本~高山周辺で見られる切妻の軒が深い古民家など、地域の個性豊かな景観が広がっていました。一方で、ハウスメーカーのような住宅はほとんど見かけません。
山が深くなるにつれ、集落の間隔は広がり、山々の存在感が増していきます。道中では落石対策工事を多く見かけましたが、こうした地域では土木の仕事はあっても建築工務店の仕事は少ないのかもしれません。

小菅村庁舎近くの木造大断面集成材を使った建物

現場では、大型パネル工法による効率的な施工方法について学びました。一緒に参加した大工仲間たちと工事手順や納まりについて議論を重ねた結果、「熟練した工務店と大工だからこそ実現できる工期だ」という結論に至りました。それでも私たちも努力次第で挑戦できるはず。新年会を兼ねて勉強会を開こうという話になり、私は丹波山村モデルをモデリングしてさらに検討してみたいと思っています。


また、事業関係者の話を聞くと、工務店や大工が得意とする住宅分野でプロポーザル方式を採用したことが、今回の成功の鍵だったそうです。海外では、公営住宅こそ高性能住宅(パッシブハウス)が採用される例が多く、こうしたプロジェクトが地域にとっても建築業界にとっても大きな一歩になると感じました。

ここまで見学会で感じたことをお伝えしてきましたが、さらに考えを深める中で、地域と建築の関係について新たな視点が見えてきました。

丹波山村村営住宅を訪れる道中では、集落に点在する古民家や小さな住宅が印象的でした。それらは地域の風土や暮らしに根付いた、控えめで素朴な存在感を持っています。一方で、村営住宅や村庁舎のような施設は、大規模で立派な建物です。特に庁舎はその存在感が際立っていて、道中で見た集落とのスケール感の違いに少し驚かされました。


この違和感は、地域の建物の「役割」によるものかもしれません。庁舎や施設は、地域の中心機能を担う場であり、建物の規模やデザインにもその意図が反映されています。しかし、その大規模さが、時に周辺との調和を考えるきっかけにもなります。


また、今回の村営住宅では、当初は山梨県産材の利用が検討されていましたが、最終的には集成材工場の関係で長野県の齋藤木材工業が供給するカラマツが採用されました。地域材を使う意図があったものの、実際の供給体制の問題などもあり、すべてが地元産材ではないという現実があります。こうした背景も含め、建築が地域の風景や文化にどう関わるかを考えることが必要だと感じます。

丹波山村HPはこちら


丹波山村庁舎の詳細はこちら

丹波山村庁舎 内観

地域材を活用する上で直面する課題の一つが、効率的な供給網の構築やコストの管理です。こうした課題を解決する手段として、デジタル技術の活用が注目されています。


たとえば、私が以前参加したVUILDの「まれびとの家」プロジェクトでは、デジタルファブリケーション(デジタル設計と加工技術)を活用し、地域材を効率よく加工し建築に取り入れる取り組みが行われました。このプロジェクトでは、地域材を短期間で製品化する手法が確立され、建築の迅速な施工と材料の有効活用が実現しました。


一方、今回の丹波山村村営住宅では大型パネルが活用されています。大型パネルの主な特徴は、「山から建築までのデータ共有」を実現する点です。

現在、「新しい林業」事業として木材の伐採場所や加工情報をデジタルデータで一元管理することで、材料のトレーサビリティを確保し、地域材の利用率向上や持続可能な森林活用を可能にする試みが林野庁の実証事業が行われています。このデータ共有の仕組みが実現されると、材料の流通と施工プロセス全体が効率化され、大型パネルの活用が建築全体の合理化に貢献しすることになります。さらに、大型パネルは供給網全体の透明性を向上させ、建築プロセスをよりスムーズに進めるための重要な基盤を提供することになります。
また、大型パネルの利用は建築プロセスの効率化にも貢献しています。工場でプレファブリーケーションされたパネルを、大工が迅速に組み立てることで、上棟までの工期を大幅に短縮しました。この方法により、大工が不足している地域でも、短期間で効率的に建築を完成させることが可能になっています。この効率化は、地域の建築需要に応える上で、非常に重要な一歩となっています。


こうした取り組みを通じて、建築業界全体が持つ課題(コスト、材料供給、効率性)を解決する糸口が見えてきます。地域材を最大限活用し、デジタル技術を効果的に取り入れることで、地域と建築が新たな形で結びつく未来を作り出すことができるでしょう。

VUILD:「まれびとの家」の詳細はこちら

大型パネルの詳細はこちら

参考図書:森林列島再生論


丹波山村村営住宅の見学会を通じて、大型パネル工法やプロポーザル方式の可能性を学ぶとともに、地域材活用の課題や地域と施設のギャップについて考えさせられました。デジタル技術の活用や効率的な仕組みづくりを通じて、地域と建築の新たなつながりを生み出していくことが求められます。
今後もこうしたプロジェクトに注目しながら、地域材を活用した建築の未来を探っていきたいと思います。

高断熱高気密住宅で快適な冬を過ごすための3つの設計ポイント

高断熱高気密住宅は、光熱費を抑えながら快適な室内環境を実現する住まいです。しかし、その性能を最大限に発揮するためには、設計段階での丁寧なシミュレーションが欠かせません。本記事では、シミュレーションを活用しながら理想の住まいを実現するための3つのポイントをご紹介します。

1.窓の選定は性能と景観のバランスが鍵

窓は住宅の中で最も熱が逃げやすい部分であり、その配置や性能が建物全体の快適性に大きな影響を与えます。加えて、窓は外の景色を取り込む役割もあるため、設計時に慎重な検討が求められます。

実例: シミュレーションで導く納得とは

提案した設計に対してクライアントからの追加希望も少なくありません。希望された追加窓についてシミュレーションを行ったところ、隣家の外壁しか見えず、明るさも期待できないだけではなく、全体性能も低下することが判明し、結果的に諦めるようなケースもあります。今までの住まいの経験から”この位置に窓が欲しい”と望まれるのは理解できますし、もし景観が良い窓でしたら性能よりも景観を優先する可能性もあります。ですが判断材料が無い説明よりも、シミュレーションでの比較により、納得した選択をすることが可能です。

2.千葉県特有の気候を考慮した設計

千葉県は比較的温暖な地域ですが、内陸部と沿岸部では気候条件に大きな差があります。この違いを考慮し、基本設計段階からシミュレーション時に適切な気象観測所データを用いることが、効率的で快適な住宅づくりの鍵となります。

千葉県の気候条件のポイント

  • 夏: 内陸部では年間で30℃を超える日が50日以上に及び、沿岸部では30日未満と大きな差があります。
  • 冬: 内陸部は最低気温0℃未満の日数が年間60日を超えるのに対し、沿岸部では6日程度と少ないです。
出典:銚子地方気象台HP 千葉県の気象特性

3.各部材のトレードオフを理解する

高断熱高気密住宅の設計では、サッシ性能と換気システムなど、それぞれの性能やコストのバランスを取ることが、全体性能を最適化するうえで重要です。

実例: サッシと換気システムの予算調整

事前の家づくりの勉強で色々と調べた結果、トリプルガラス+樹脂サッシを希望していたクライアントが来所されました。寒冷地ではトリプルガラス+樹脂サッシが絶対条件の可能性がありますが千葉県では状況が少し変わります。トリプルガラス+樹脂サッシ、3種換気の条件から、シミュレーションを繰り返し、ペアガラス+樹脂サッシへ変更、その差額で熱交換気への変更が可能になり、燃費が若干向上し、建物全体のコストパフォーマンスが向上する結果になったこともあります。

まとめ: 基本設計でもシミュレーションを活用する重要性

高断熱高気密住宅では、「たたき台」と呼ばれるような初期案は成り立ちません。性能を追求する住宅では、あらゆる選択肢がシミュレーションによって裏付けられたものでなければ、真の快適性や効率性を実現することは難しいからです。

基本設計の段階で、建物形状、方位、窓や断熱材、換気システムの選定など、一つひとつの要素をシミュレーションで検証しながら進めることで、住まい全体のバランスを最適化します。このプロセスを丁寧に行うことが、高断熱高気密住宅の成功を決定づけます。

設計者と十分に対話を重ね、生活スタイルや予算に応じた最適解を探るプロセスをぜひ大切にしてください。シミュレーション結果を共有しながら、一緒に理想の住まいを作り上げていきましょう。

「どのように選べば良いか」と迷う方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。設計段階での適切なサポートを通じて、快適で効率的な住まいづくりをお手伝いします。

補足: Q&A形式の記事の案内

「窓の配置や性能をどう選ぶべき?」「熱交換換気の導入コストは?」など、よくある疑問をまとめたQ&A記事も準備中です。

具体的なご質問があれば、お気軽にお問い合わせください。