3階建 × 準防火 × パッシブハウス:都市型敷地に挑んだパッシブハウス設計

都市部の住宅地、北側道路に面した密集した敷地。
3階建て・準耐火建築物・準防火地域という厳しい条件下で、パッシブハウス認定を目指した高性能住宅の設計に挑みました。

限られた敷地と空、迫る隣家、断熱厚や法規制とのせめぎ合い。
このプロジェクトは、単なる数値クリアではなく「都市における“快適な住まい”とは何か」を考えた設計の記録です。

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日射と断熱のせめぎ合い:都市では「負荷で突破する」

冬季の日射取得が非常に難しい立地のため、暖房需要ではなく「暖房負荷」を抑える戦略を選択。
複数のシミュレーションを重ね、冷暖房のピーク負荷で基準値をクリアしています。

異なるサッシ仕様と配置による、暖房・冷房のエネルギー性能値(需要・負荷)の比較グラフ。PHJの基準値と照らして改善プロセスを可視化している。
サッシの種類・配置・取り付け位置の変更によって、冷暖房の「需要」「負荷」がどのように改善されたかを示した比較グラフです。

「意味のある窓」だけを残す設計

防火サッシ/非常用侵入口/スマートウィン/NORDなど、異なる性能・条件を持つサッシを使い分け。
意匠と性能のバランス、取り付け位置、設計の意図──窓1枚ごとの選択にはすべて“意味”があります。

designPHによる南面開口部の日射取得解析。遮蔽マスクダイアグラムとシミュレーション結果の数値表示。
冬季の日射取得量の可視化。都市型敷地における日射制限の実態を示す。

大型パネルで精度と現場力を両立

外皮性能・サッシ納まり・気密確保など、都市型住宅で要求される精度を担保するため、大型パネル工法を採用。
制限の多い敷地でも、計画通りの施工精度を実現しました。

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大型パネルの建て方

唯一の余白に植えたヤマボウシ

建物配置で残った北側のわずかな空間に、高木「ヤマボウシ」を提案。
上階から見下ろす白い花は、都市の空にそっと季節の彩りを添えます。

設計とは、いくつもの要件や矛盾を「折り重ねる」ように選びとり、暮らしにふさわしいかたちへと結晶化させることだと考えています。
性能の話だけでは終わらない、「都市でも、ここまでできる」住まいの実現を目指しました。

本プロジェクトは、2025 Phius Passive Projects Design CompetitionにおいてInternational Recognitionを受賞しました。
同プロジェクトは、当スタジオ(Architect:Kouki Ogawa / Sachi ARCHITECTS Studio)が実施設計およびパッシブ性能戦略等を担当した建築として設計が進められたものです。
現在、国際的な記録上のArchitectクレジットの表記に関して、設計者としての適切なクレジット反映についてPhiusへの確認を依頼しており、正式な表記が確定次第、改めてお知らせいたします。
今後も国際的な建築倫理に基づき、建築に携わるすべての専門家が正当に評価される環境を大切にしてまいります。

DATA

  • 所在地:東京都
  • 構造:木造3階建(大型パネル工法)
  • 竣工:年
  • 敷地面積:㎡
  • 延床面積:㎡
  • 基本設計・実施設計・監理(大型パネル上棟まで)パッシブハウスコンサルディング
    :幸設計スタジオ

関連リンク

Blog記事を読む(都市型パッシブハウスの設計プロセス)

高断熱と暮らしのあいだ#1 築40年の家に住む設計士が考えること

高断熱と暮らしのあいだ#2 都市型パッシブハウスのよりどころ

高断熱と暮らしのあいだ#3 どこに、なぜ、その窓があるのか

※本プロジェクトは現在も記録整理を進めており、設計の背景や詳細について今後さらに深掘りしていく予定です。
ご興味のある方は、続報を楽しみにしていただければ幸いです。


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