1.型式認定工法でも可能なリフォームの工夫
築30年前後の木質パネル工法住宅のリフォーム事例を紹介します。調査段階で、この住宅が在来木造構法ではないと判明しましたが、2×4工法とも異なるため、少し頭を悩ませました。残された数枚の図面から、この住宅が三陽国策パルプ設計の「パル住宅」と呼ばれる型式認定住宅であることが分かりました。
認定工法住宅でもリフォームの自由度を追求しました。柱や構造材を活かしながら、壁や床を天然素材に置き換えることで、五感で楽しめる住空間を実現。
和室:柱を活かしたリノベーションが魅力。
特に床には山武杉を使用し、見た目にも触感にも温かみを感じられる仕上がりになっています。
認定工法では大幅な間取り変更が難しいものの、仕上げに工夫を加え、触感や五感で楽しめる空間づくりを目指しました。経年変化を楽しめる素材を積極的に取り入れることで、長く飽きのこない住まいを提案しています。
2.五感に響く天然素材の活用
床材に山武杉の無垢材を採用
床板には、地元の山武杉を使用しました。この杉材は柔らかく、触れたときの感触が優しいのが特徴です。裸足で歩くとほんのり暖かさを感じられます。
リビング床は明るい色合いを選び、空間全体に開放感をプラス。
夏場でも足の裏にベタつきを感じません。今回は無塗装品にワックス仕上げを施しましたが、無塗装品の感触をほぼそのまま保っています。
柔らかい材質ゆえに傷が付きやすいデメリットもありますが、それすらも「経年変化」として楽しむのはいかがでしょうか?この傷が家族の生活の記録となり、住まいに深みを加えてくれると考えています。
3.リフォームならではのディテールとこだわり
リフォームの中で特にこだわったポイントをご紹介します。どれも小さな選択ですが、それぞれが空間全体に大きな魅力をもたらしています。
GROHEの水洗を採用した洗面化粧台
洗面化粧台には、GROHEの水洗を採用し、木製カウンターと埋込式洗面ボウルを組み合わせました。この洗練されたデザインは、機能性と美しさを両立し、空間全体に温かみと特別感を与えています。洗面化粧台には、信頼性とデザイン性に優れたGROHEの水洗器具を採用しました。この水洗は、木製カウンターと埋込式の洗面ボウルにぴったりとマッチし、空間にモダンで洗練された印象を与えています。
手作りの木製カウンターとGROHEの組み合わせは、既製品にはない特別感を演出します。
アンティークの照明スイッチ
照明スイッチには、イギリスの当時物ヴィンテージ品を採用しました。アンティーク調ではなく、本物のヴィンテージだからこそ感じられる重みや趣があります。
畳の廻り縁に「水玉模様」
和室の畳の廻り縁には遊び心のある「水玉模様」を選びました。伝統的な畳との絶妙な組み合わせが、空間に軽やかさと温もりをもたらします。
和室の畳の廻り縁には、遊び心あふれる水玉模様を選びました。伝統的な畳とポップなデザインの組み合わせは、空間に軽やかな印象を与え、家族や訪れる人々の会話のきっかけにもなります。
4.ディテールが生み出す空間の魅力
職人技とリフォームの魅力
リフォームの中で大切にしたのは、職人技と住まい手の感性を融合させることでした。手作りの木製カウンターや和室の仕上げは、大工さんの技術が細部にまで行き届いており、既製品にはない温もりを感じられる空間に仕上がっています。
畳や照明スイッチといったディテールにも細かな配慮を施すことで、視覚的なデザインだけでなく、住む人が毎日触れる場所に特別感を与えることを心がけました。このような小さなこだわりが積み重なり、長く愛される住まいへと繋がります。
関連記事: たかがハコ、されどハコ:GROHEの外箱に学ぶデザインの力
洗面カウンターを木で作る
L851CU 復活を希望します!
このセクションでは、こだわりのディテールをご紹介します。以下の画像をクリックして、それぞれのストーリーをご覧ください。

杉の赤身材を使用した耐久性の高い床仕上げ。自然素材ならではの温もりが広がります。
耐久性に優れた杉の赤身材を厳選し、丁寧に施工しています。無垢材ならではの個性が1枚ごとに異なるため、自然素材が織りなす独特の表情を楽しめます。

杉の無垢板材の選別前の状態。自然素材ならではの個性が際立ちます。
白太、赤、源平(白太と赤みの両方が混ざった状態)の板材が現場に届きます。 包みをバラして材料を広げて一枚一枚材料を選別する作業は手間がかかりますが、理想の仕上がりを実現するためには欠かせない工程です。

玄関床材の詳細。自然素材で作られた温もりある空間。
床材には杉の無垢材、千葉の山から伐採された山武杉を使用しています。玄関の框には特殊材を使用せず、床材を加工して面チリ納めにしています。

廊下の床仕上げ。赤身材を中心に選定した耐久性の高い仕上げ
廊下には耐久性を重視し、赤身材を中心に選びました。赤身部分は耐朽性が高く、長く安心して使い続けられる素材です。

リビング床は明るい色合いを選び、空間全体に開放感をプラス。
リビングの床材には、明るい色合いの赤身(淡いピンク色)と白太を選びました。優しいトーンが空間を広く、柔らかい印象に仕上げています。

床は杉の赤身材、壁はシナ合板の上クリア仕上。適切なメンテナンスで、水回りでも安心して木材の魅力を安心して楽しめます。
杉の赤身材やシナ合板のクリア仕上げを活かし、ヴィンテージスイッチやGROHEの水洗など、素材とディテールへのこだわりが光る木質パネル工法住宅のリフォーム事例です。

洗面化粧台と壁面収納。大工さんによる造作が空間に温もりをプラス
洗面化粧台と壁面収納BOXは大工さんの手による造作家具です。カウンター材にはタモ集成材を使用し、シンプルながらも温かみのあるデザインに仕上げました。

洗面化粧台のディテール。シンプルで大容積のTOTO洗面器(L851CU)と、GROHEシンフォニアの水洗を採用しました。機能性と美しさが調和した空間です。
洗面化粧台には、シンプルながら大容量で使い勝手の良いTOTO洗面器(L851CU)と、GROHEシンフォニアの水洗を採用。廃版となったTOTOの洗面器は、復活を願うほどの完成度の高い一品です。

洗面器上の照明スイッチ。イギリス製ヴィンテージのアンティークスイッチが空間に趣を添えています。
洗面器上の照明スイッチはイギリス製ヴィンテージ。操作時に感じるバネの力と、パチンという音が特徴です。このアンティークスイッチは、現代のスイッチにはない独特の触感と存在感で、日常にささやかな喜びをもたらしてくれます。

シンプルなタオルハンガー。無駄のないデザインが空間に溶け込みます。
シンプルながら意外と見つけにくいデザインのタオルハンガー。粉体塗装仕上げで高い耐久性で、長く使い続けられる一品です。

和室は壁と床をリノベーション。新しい素材で現代的な和の空間に。
劣化した塗り壁がボロボロ落ちるため、壁はシナ合板仕上げにリノベーションしました。畳は新床を採用し、畳縁には遊び心のある水玉模様を選択。襖の張り替えではシンプルなデザインを採用し、伝統的な和室をモダンで使いやすい空間に仕上げました。

壁と畳の詳細。既存の柱や長押を活かしたリノベーション。
既存の柱や長押はそのまま残し、壁と畳をリノベーションしました。新しい素材を取り入れながらも、元の和室の趣を大切にしています。

壁の納まり詳細。シナ合板を使った目透し張りの仕上げ。
シナ合板は寸法調整を考慮し、目透し張りで仕上げています。シンプルながら繊細な納まりが空間全体に調和をもたらします。

和室:柱を活かしたリノベーションが魅力。
和室の特徴である柱をそのまま活かすことで、全面クロス張りにはない独特の趣を持つ空間に仕上げました。伝統的な要素を残しつつ、新しい素材との調和を図ったリノベーション事例です。

畳縁のディテール。ドット模様が空間に遊び心を添えます。
畳縁には高田織物の『ポルカ』を採用。フランス語で『水玉』を意味するこのデザインは、伝統とモダンが調和した遊び心あふれるアクセントとなっています。

在来工法からユニットバスへ交換。使いやすさとメンテナンス性を重視したリフォーム。
ユニットバスはTOTO製を採用。サッシにはYKKのマドリモを使用しています。マドリモは既存サッシを解体することなく断熱サッシへ交換できるため、経済的に断熱性能を向上させることができます。

建具枠の新旧の取り合い。新しい部材と古い部材の共存がポイント。
古い部材と新しい部材の取り合い部分です。新しい部材は色合わせをせず、あえてクリア仕上げとすることで、素材そのものの質感を活かしつつ、新旧が自然に調和するデザインに仕上げています。

リビングの絨毯撤去作業中。改修工事の準備段階。
リビングの改修工事中。古い絨毯を撤去し、新しい床材の施工に向けた準備を進めています。

既存の脱衣洗面室。改修工事前の状態。
改修工事前の脱衣洗面室。現状のレイアウトや設備の特徴を確認しながら、新しいデザインへの準備を進めます。
DATA
所在地: 千葉県
構造: 木質パネル工法(型式認定住宅・三陽国策パルプ設計「パル住宅」)
工種: リフォーム
完成: 2014年
施工: 三幸建設株式会社(施主一部施工)
撮影: 小川幸起
施主支給品:
フローリング、幅木:山武杉無垢材(丸西建材)
タオルハンガー:アイアンタオル掛け
★初回相談は無料です★
ご相談などお気軽にお問合せください