1. パッシブハウスとは
パッシブハウスは、持続可能で高標準な住宅を実現するためのコンセプトです。少ないエネルギーで快適な環境を保つために、断熱性・気密性・熱回収換気などを最適化した設計が必要です。
パッシブハウスの基準値
- 暖房・冷房需要: 15kWh/㎡年以下
- 暖房・冷房負荷: 10W/㎡以下
- 一次エネルギー消費量:
- 現行基準: 120kWh/㎡年 以下
- 将来目標: 再生可能エネルギー供給(PER) 60kWh/㎡年 以下
- 気密性 (n50値): 0.6/h 以下
- 夏期の温度上昇: 過度な暖帯化が10%以上発生しない
What is a Passive House?:Passive House Institute

2. パッシブハウスの5原則
- 高性能な断熱性
- 熱損失を抑え、均一な温度環境を維持するための適切な断熱設計が必要
- 気候条件やコストバランスを考慮した施工が求められる
- 高気密
- 小さなエネルギーで快適な住環境を実現するため、漏気を極力減らし、室内の温熱環境を安定させる
- n50=0.6/h 以下の気密性を確保することで、計画的な換気が機能し、効率的な空調運用が可能になる
- 一般住宅のC値(2.0~5.0 cm²/m²)と比較すると、パッシブハウスの気密性(n50=0.6/h)はC値換算で約0.2~0.3 cm²/m²となり、極めて高い気密性能を持つことがわかる
- 熱橋の回避
- 建物の熱損失を最小限に抑えるため、熱橋(構造の連続による断熱欠損)のない設計を採用
- 断熱性の高い材料を適切に配置し、壁・屋根・床の接合部において熱の逃げ道を防ぐ
- 熱回収換気設備 (高効率HRV)
- 高効率な熱回収換気設備を利用
- 気密性の高い住宅では、自然換気だけでは新鮮な空気を十分に確保できません。そのため、計画的な換気システムを導入し、室内の空気を適切に入れ替えることが必要です。
- 経済性の観点では、高効率の換気システムを導入することで、長期的にエネルギーコストを削減し、快適な室内環境を維持する
- 高性能窓
- トリプルガラスやLow-Eガラスなどの高性能ガラスと、断熱性能の高いフレームを組み合わせた窓を採用し、断熱性と遮熱性を確保
- 窓の配置やサイズ、庇の設計を最適化し、自然光を効果的に取り入れながら、夏場の過剰な熱負荷を抑えることで快適な室内環境を実現する
- 高性能窓は、住宅デザインの要素としても重要
3. 日射取得・日射遮蔽のバランス
パッシブデザインの基本原則の一つとして、適切な日射取得と日射遮蔽の調整が必要です。日本の気候では、冬には太陽光をしっかり取り込み、夏には強い日射を遮る工夫が求められます。
- 窓の配置、庇、外付けブラインドの活用に加え、ガラスの選定やフレームの断熱性も重要
- DesignPHを活用し、建物の形状や窓の設置位置を最適化することで、年間を通じた快適性と省エネ性能を両立
- PHPPを用いたエネルギーシミュレーションにより、建物全体の熱バランスを詳細に分析し、最適な日射コントロールを計画する
4. パッシブハウスのエネルギーバランス
- DesignPHで建物の3Dモデリングを行い、パッシブハウス・プランニング・パッケージ(PHPP)を用いて詳細なエネルギー計算を実施
- 設計段階でのエネルギーシミュレーションにより、年間の暖房・冷房負荷を予測し、適切な断熱・気密・窓配置のバランスを最適化
- PHPPにより、一次エネルギー消費量や室内温熱環境の評価を行い、快適性と省エネ性能を両立する設計を実現
5. 換気系統と熱回収
- 換気の重要性
- 高気密住宅では、自然換気や窓の開閉だけでは十分な換気ができず、室内の空気質が悪化する可能性があります。
- 換気設備の導入により、新鮮な空気を適切に供給し、CO2濃度の上昇や結露を防ぐことができます。
- 高効率な換気設備の選定
- 熱回収率80%以上のシステムを導入することで、冬は暖房エネルギーのロスを抑え、夏は冷房の負荷を軽減できます。
- 計画的な「給気空調」の活用
- 供給される新鮮な空気を適切に温度調整し、均一な室温を保つことで、快適な室内環境を実現します。
- 過剰な外気取り込みを防ぎつつ、適切な換気量を確保し、エネルギー効率を最適化します。